
高さと速さに、タフさも身に着けたアピアタウィア久選手。失敗を恐れない勇敢なルーキーの成長は、まだまだ止まらない【後編】
Interview
FOOTBALL
(提供:KYODO NEWS)
熾烈なJ1残留争いも、ベガルタ仙台のDF真瀬拓海選手は前向きに戦い続けています。そこには頼れるベテランや心強い同期の仲間の存在がありました。たくましく駆け抜けてきたプロサッカー選手1年目、真瀬選手の今の気持ちに迫ります。
―このチームの一員として戦う中で、苦しい時にはたくましい先輩の姿がありましたね。
「関口(訓充)さんは最年長で、どんな状況でもいろんな人に声をかけて、チームを鼓舞して、『みんなでより良い方向を向いていこう』という強い気持ちが伝わってきました。自分はまだそれについて行っている立場なんですが、関口さんのような人がいるからチームとして苦しい時でも前を向いていけるのかなと思いました。そういう姿勢を見習っていきたいと感じました」
―そして、チームには同期入団の心強い仲間もいます。特にアピアタウィア久選手、加藤千尋選手とは互いに磨きあえる仲間ですね。
「同期で一緒のタイミングでベガルタ仙台に入って、自分自身も試合に出られない時にもアピや千尋が活躍しているところを見ていると、『俺も負けていられない』と思います。一緒に試合に出場してプレーしている時は、頼もしいし、一緒にチームを勝たせようという気持ちになっているので、大きな刺激です。サッカーの話もプライベートの話もできる仲間ですね」
試合でも練習でも、すぐそばには切磋琢磨しあえる同期のDFアピアタウィア選手がいる
―真瀬選手にとってのライバル的存在は?
「市立船橋高校の同期たちにはプロが結構いるんです。みんな自分よりも先に、高卒でプロの舞台に行って活躍していました。その姿を自分は大学で見ていた立場でしたね。プロデビューする仲間の姿に憧れ、自分も同じ舞台に立ちたいと思って頑張れたところはあるので、彼らには追いついて追い越したいという気持ちがあります」
―Jリーグのいろんなチームにライバルがいるということですね。
「そうですね。湘南ベルマーレ(に期限付き移籍中の)杉岡大暉、清水エスパルスの原輝綺、浦和レッズの金子大毅、新潟の高宇洋。あ、あと、ベガルタでチームメートの井岡海都も高校でも同期でしたね」
―真瀬選手は市立船橋高校を卒業して、多くのサッカー選手を輩出する阪南大学経由でプロになりました。改めて大学に進学してよかったと感じることはどんなことですか?
「大学では高校と違って、自分で考えて行動するというところが多かったです。そういう環境に飛び込んで、自分に足りないものを自分で考え、自分で行動して得ていくということが身につきました。また、阪南大学のサッカーのスタイルが、足元でボールをつないでいくという、技術を重視していました。自分はそういうところを苦手としているので、少しは良くすることができたのかなと思います」
―阪南大学卒というと、ベガルタでも松下佳貴選手など技術の高い選手の名前が挙がりますよね。
「そうですね。佳貴君は自分が1年生の時の4年生でした。上手かったです」
充実のプロ1年目。練習場でも笑顔で過ごしている
―サッカー選手としての目標や思い描く未来はどのようなものですか?
「プロの舞台に来たからには、サッカー日本代表になりたい。小さいころから、『いつか日の丸を背負って戦いたい』という気持ちがありました。その目標は常に持ち続けています」
―同期のアピアタウィア選手も日本代表を目標としています。もしかしたら、日本代表でも二人がDFラインに並ぶという日が来るかもしれません。
「そうなったら最高に嬉しいですよね」
―子供の頃、憧れの日本代表選手は誰でしたか?
「小さい頃は中田英寿さんが大好きでした。中学生、高校生くらいになると、内田篤人さん。ポジションがSBと一緒だったので、プレースタイルは違いますけどすごいなと憧れてよく見ていましたね」
試合ではプロの世界の厳しさと向き合う。チームを勝たせたいという強い使命感がある(提供:ベガルタ仙台)
―今年は試合に出られる喜びや結果に対する責任感など、いろいろなことを感じ考えたのではないでしょうか?
「試合には出ていましたが、チームとして勝つということができていなかったです。勝てていない時は試合に出ていても、気持ち的になかなか上がっていかないです。自分自身がゴールなどで結果を出してもチームが勝たないと、満足はできないです。そういったところでは苦しいシーズンになりましたね」
―勝てない試合というのは、ほんの少しの差なのか、それとも相手と大きな力の差を感じたのか……。ご自身としてはどのように感じていましたか?
「シーズンの最初は大差で負けた試合も多かったです。しかし、5月頃から徐々に自分たちのサッカーを確立することができてきて、どんな相手にも対等に戦えるようになってきました。接戦をものにできなかったなぁという試合がとても多かったですね。シーズンを通して、自分がゴールやアシストでチームに貢献できればもっと多くの勝利をつかむことができたのではないかなと思っていました」
今季は残り3試合。最後まで貫くのは、諦めない姿勢(提供:ベガルタ仙台)
―しびれるようなJ1残留争い。ルーキーにとってはかなり過酷だったかもしれません。その戦いの中で鍛えられたものは?
「精神的にきついことはありました。こういう経験はなかなかできないと思っています。いかにしてメンタル面を落とさず、常に戦う気持ちを持つということを学べました。諦めてしまったら、何も起こらない。必ず最後まで何が何でも残留するという気持ちで、奇跡を起こすことを目指していきたいです」
―厳しい状況をプラスに変える。そういう精神面の立て直しはどうやってきたのですか?
「もともとメンタルは弱いです(笑)家で一人落ち込んで、夜に眠れないということもあるんです。でも、そういう時にはYouTubeで本田圭佑選手のインタビューやモチベーション動画を見て、『あぁ、こういう考え方をするんだ!』と学んで、このままじゃだめだ! と立ち上がることが多いです」
―悲願のJ1残留へ。大一番の湘南ベルマーレ戦が週末に控えています。どういう戦いを見せますか。
「自分たちは失うものも何もなく、ただ勝ち点3を取ることしか残された道はないと思っています。この試合が最後というくらいの気持ち。ラスト3試合は強い思いで戦って、最初からアグレッシブに、どんどんゴールを目指していくサッカーをしていきたいです」(完)
フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。