
高さと速さに、タフさも身に着けたアピアタウィア久選手。失敗を恐れない勇敢なルーキーの成長は、まだまだ止まらない【前編】
Interview
FOOTBALL
(提供:ベガルタ仙台)
DFラインの最後方からスルスルとゴール前に駆け上がるスピード。その神出鬼没ぶりに多くのサポーターやチームを長く支えてきたレジェンドを「なんでそんなところにいるんだ!」と驚かせているのが、ルーキーのDF真瀬拓海選手です。フィールドプレーヤーでは最多の出場試合数を誇る真瀬選手に大健闘のルーキーイヤーを振り返ってもらいました。(全2回)
―プロ1年目の2021年も残り試合はわずかです。活躍の分だけメディアに登場する機会も多かったですね。取材対応は慣れましたか?
「インタビューは全然慣れないですね。実は毎回めちゃめちゃ緊張しています(笑)」
―そんな風には見えないですけどね。ここまで(第36節湘南戦前まで)堂々の34試合出場です。フィールドプレーヤーでは最も試合数も多く、時間も長く出場していますね。
「1年目でここまで試合に出られるとは、正直思っていなかったです。自分自身びっくりしています。試合に出ていることで感じる課題や、できたこともわかってきました。でもたくさん試合に出させてもらっている中で、チームとして結果が出ていないし、勝利に貢献できているなと感じた試合はほぼなかったので、やっぱり課題ばかりだなと感じたシーズンでした」
―試合に出ることで感じた課題とはどういったことですか。
「やっぱりJ1の選手たちは技術レベルが高くミスが少ない。自分自身は技術面に課題を感じました。あとは、サイドバック(SB)として攻撃参加した時のクロスやシュートの精度が低い。他のチームの映像を見ていると、SBが正確なクロスを上げて点を取るチームが多いのですが、自分はそうできていないのでもっと上達していかないといけないと感じました」
―一方で、J1の舞台でできたこと、通用したことも多かったのではないですか?
「そうですね。守備面ではある程度1対1など、相手選手と対峙しても恐れずに止めることができる自信が持てました。そういうところは良かったですね」
フィールドプレーヤーでトップの34試合に出場。堂々たるルーキーイヤーだ(提供:ベガルタ仙台)
―これだけ試合に出ることができた、求められた要因というのはどういうところにあったと思いますか?
「自分はスピードを武器にしている選手です。チームの中でも同じ特徴の選手は少ないので、チームの攻撃で自分のスピードを生かすことができた。サイドでちょっとラフなボールでもマイボールにして押し込むということが強みとして発揮できました。それから対人の守備は安定してできるので、そういうところを評価されて出ているのかな? と思っていました」
―真瀬選手が「自分のスピードはJ1でも通用する」と感じた瞬間はいつでしたか?
「去年特別指定で、先発デビューしたヴィッセル神戸戦(第9節)で、ウイングバックとして出場したのですが、『よーい、ドン!』で走っても相手に勝てていました。その時にこのスピードでも通用するなと感じました。今シーズンが始まる前から自信をもって臨むことができました」
―昨年はJFA・Jリーグ特別指定選手として、11試合に出場と活躍していました。昨年と今年、大学生とプロサッカー選手の違いは?
「去年はまだ大学生、特別指定という立場で、チームのことというよりも自分自身のことを最優先に考えて、自由に、好きなように、自分のできることをしていいという状況でした。しかし今年はベガルタ仙台にプロ選手として入り、サッカーはチームスポーツなので、チームの勝利のためにもっとやらなきゃいけないことがたくさんあると思いました。全体のことを考えながら過ごすシーズンとなりましたね。ルーキーですが、実質2年目。チームの一員だと思ってシーズンに入れたのはとても良かったです」
仙台-札幌 前半、同点ゴールを決め、雄たけびを上げる仙台・真瀬=ユアスタ(提供:KYODO NEWS)
―ここまで真瀬選手は2ゴールを挙げています。もっと取れたという感覚のほうが大きいですか?
「そうですね。チャンスはあったと思います。そういったところで自分が決め切れていれば、勝てたという試合も少なからずあったので、そういうところで責任は感じています」
―しかし、決めることができた2得点はどちらも素晴らしいものでした。プロ初ゴールとなった第22節、北海道コンサドーレ札幌戦での得点は同点ゴール。勝ち点1をつかみました。
「あの時は(赤崎)秀平君がサイドにうまい形で流れてくれました。秀平君が顔を上げた時に、フリーだったので『自分にボールが来るかな』と予測して勢いよく走ったらいいボールが来ました。あの時は無心で、何も考えずに(右足を)当てに行ったら入りました」
―無心だったんですか?
「はい(笑)特に何も考えていなかったです。自分は考えすぎると、何もできなくなってしまうタイプなんです。考えていない時の方がうまくいったりします」
―記憶にも新しい、第34節ヴィッセル神戸戦のゴールです。SBからSBへという攻撃でしたね。
「札幌戦の初ゴールの時と同じような形だったと思うんですが、イシ君(石原崇兆選手)が持ち上がった時に、『なんかボールが来そうだな』と思って、ゴール前に入って行きました。そしたらいいボールをくれたので……。あの時も、ボールが来たから飛び込んだだけですね。あんまり考えたりはしていなかったです(笑)」
―割と「直感型」なのでしょうか?
「そんなことはないですけど、運がいいんですかね(笑)」
豊富な運動量と攻撃力も魅力のSB。1対1の場面は練習から譲らない
―いつの間にかゴール前に侵入して決める。そういう攻撃を見てしまうと、どうしても菅井直樹さん(ベガルタ仙台一筋で2018年引退。右SBながら、FW顔負けのゴール前への侵入を持ち味とした。現在は、ベガルタ仙台地域連携化スタッフとして活躍)の香りが漂ってきます。
「なんでそこにいるんだと、よく言われます(笑)」
―チームのレジェンドともいえる菅井さんがかつて付けた「背番号25」を背負いました。気負うことなく、のびのびと真瀬選手らしい「25番」として活躍できたのではないですか?
「25番をつけさせてもらって、最初は『この25番をつけたからには絶対に活躍しないと!』という気持ちも大きかったです。でも、自分のプレーは自分にしかできない。自分をしっかり表現できればいいかなと思ってプレーしていました」
―そうした活躍を菅井さんも喜んでくれていますね。
「はい。本当に嬉しかったです」(後編へ)
フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。