仙台スポーツ
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Interview

FOOTBALL

おしゃれも、サッカーも常に全力を尽くす。ギャルでプロサッカー選手、國武愛美の進む我が道【前編】

開幕から7試合でわずか「1失点」と堅い守備を誇るマイナビ仙台レディースで、國武愛美選手はDFラインの一角で奮闘しています。屈強な相手FWにも屈せず、優れた予測で危険なシーンを未然に防ぐ姿が印象的。サッカーに向き合う姿勢は極めて「硬派」ですが、実は「ギャル」。ピッチの中でも外でもキラキラのオーラを放つ國武選手の素顔に迫ってみました。(前後編)

 

―9月にWEリーグが開幕しました。実際の公式戦を戦ってみていかがですか?

「目標としているのが高いところ(リーグ優勝)なので、一試合一試合落とせない試合です。厳しく練習し、試合に向けていい雰囲気で臨めていると思います。でもホームではなかなか結果が出せていなくて、そこは今後の課題ですね。絶対に一戦も落としてはいけないので、もっと得点を取るというところ、失点をしないというところを徹底して、どん欲にやっていかなければいけないと思います」

マイナビ仙台レディース 國武愛美選手

チームの堅い守備に貢献。全体練習の後も自分の課題に取り組む

 

―ここまでの試合は、マイナビ仙台レディースは負けなしの3勝3分けです。アウェーは全勝ですが、ホームで引き分けが続いているのはもどかしいですね。

「やっぱり一番はホームで勝ちたいですね。チーム全体でそういう強い気持ちを持って臨んでいますがいい結果が出せなくて、来てくださるサポーターの方や応援してくれる方に早くいい結果を届けたいです」

―ここまでの試合で印象的だったのはどの試合ですか。

「勝てた試合はどれも良かったと思いますが、個人的には開幕戦のノジマステラ神奈川相模原戦(0-0)が一番悔しくて印象に残っています。ホームでWEリーグの初めての開幕戦、そこで古巣と戦えたということは良かったですが勝ちきれなかったことが悔しかったです。あまりいいプレーもできなかったという点でも、悔しさが残っています」

―対戦相手には、サンディロペス選手という大型FWがいました。女子選手としてはかなりの長身182㎝ですが、無失点に抑えましたね。

「本当に大きくて日本人にはなかなかいないタイプでした。なでしこリーグでも、自分よりも大きい選手はそうそういませんでした。それでも(ロペス選手に対して)臆することなく対応できたのは良かったです。そういうところは自信になりました」

マイナビ仙台レディース 國武愛美選手

ノジマステラのロペス選手と競り合う國武選手。大きな相手に一歩も引かなかった(提供:マイナビ仙台レディース)

 

―今季のマイナビは、ここまで失点の少なさ(セットプレーでの1失点のみ)も際立っています。DFの一人として、去年との違いはどのように感じていますか。

「シンプルに全員の連携が良くなっているというのはありますね。一つ一つのプレーに対して、話し合うことも多くなりました。失点が少ない時は守備陣に注目が集まりがちですが、前線の選手たちの守備の仕方もあります。前からしっかり相手を追ってくれるし、そういう選手たちの頑張りも含め、ここまで1失点にとどまっているのではないかと思います」

―今年、松田岳夫監督就任後の変化ということになりますか。

「そうですね。松田さんのサッカーでは一つ一つの指示が明確になっています。守備に対しても、相手にアタッキングサード(ピッチ全長の3分の1で、最も相手ゴールに近いエリア)に入らせないこと、入られても慌てずに押し返すことなどを言われていて、試合に向けていいトレーニングができている。それが失点の少なさにつながっていると思います」

マイナビ仙台レディース 國武愛美選手

松田監督の下で、日々成長を実感している

 

―國武選手ご自身は、個人としてはどのようなことを言われていますか?

「守備というよりは攻撃面ですね。ビルドアップ(攻撃の組み立て)で指示を出されることが多いです。私にとってはそこが本当に一番の課題で……。ビルドアップで狙い過ぎないということや少ないタッチ数でボールを動かすことですね。今、私たちがボールを握れているからこそ、狙いすぎてしまって相手に引っかかってしまうことが多いです。そういう時にこそ、自分から見えている選手を簡単に使って、ボールを動かすということをできるようにしたいです」

―そこがクリア出来たらチームとして目指すサッカーもよりパワーアップできそうですね。

「そうだと思います。うまくいかない試合の時は、DFラインのビルドアップ時に狙いすぎたパスで相手に引っかかって奪われるというところがあるので、監督によく言われています」

―昨年とはサッカーのスタイルががらりと変わりました。シンプルな前線へのロングボールというのはほとんど見られなくなりました。

「そうですね。去年は、周りから見ても相手のDFライン裏に蹴るというイメージが強かったと思います。今は細かくボールをつないで、相手を動かしボールを動かすというサッカーなので、学ぶことが多いし楽しくサッカーできています」

マイナビ仙台レディース 國武愛美選手

まだまだレベルアップしたい。謙虚に奢らず、サッカーに取り組んでいる

 

―ここで少し、國武選手のサッカーのルーツについても聞かせてください。ご出身は熊本で、お兄さんやお姉さんの影響でサッカーを始めたそうですね。

「小学校1年生でクラブに入りました。兄と姉がクラブで練習をしていたので、私は入団前からついて行ってボールを蹴っていました。小学校前からずっとボールに触っていたと思います」

―その頃には、女性のプロサッカー選手という選択肢があって、自分がそうなるとは想像できていましたか。

「小さいころの夢が『なでしこの選手になる』と何かに書いていました。書いていたけど、自分が今の年齢までサッカーを続けていて、このレベル(WEリーグ)でやっているとは思っていなかったですね」

―今も日本のトップリーグで、更にプロで続けていられることについて、ターニングポイントとなった時はありましたか。

「一番の思いは、家族に恩返しをしたいということですね。自分がプレーすることで家族のみんなが応援して喜んでくれる。高校から家族と離れて暮らすことになったんですけど、それでもずっと近くで応援してくれた人たちなので喜ぶ顔が見たい。だから頑張ろうと思えるんです。3人兄妹の一番下、可愛がられて育ちました(笑)」

―その可愛い末っ子が親元を離れ、サッカーの名門・日ノ本学園高等学校(兵庫県)に進学しました。寂しかったのでは?

「高校に入る時もサッカーを続けるかどうか、すごく悩みました。近くの高校に進学して、中学校まで一緒にやっていたクラブでそのまま続けるか……とか。でも『日ノ本に体験に行ってみる?』と勧めてくれたのが親だったんです。実際に進学すると決めた時には『本当に行くの?家を出るの?』と(笑)驚いていましたね。でも快く送り出してくれました。そういう親の気持ちを考えても頑張らないとなって、ずっと思いながらサッカーをしています」

マイナビ仙台レディース 國武愛美選手

どんな時も逃げずにサッカーと向き合うのは、支えてくれる家族への感謝があるから

 

―高校生活は、日ノ本学園の黄金世代。在学中は優勝に次ぐ優勝を経験しました。高校総体は3連覇、選手権大会も2連覇ですね。

「1年生の時は試合に出られなかったですが、2、3年生ではメンバーに入れてもらって、試合にも出させてもらいました。そこで経験を積めたことが、大人になってもサッカーができていることにつながっているのかなと思います」

―寮生活も含めてどんな3年間だったのですか。

「『きっとやれるだろう!』というちょっと軽い気持ちで日ノ本に行ったんですけど、高校サッカーは厳しかった。最初はホームシックになり、練習が辛かったです。親に電話をして『もう嫌だ』と言ったりしました。そういう時に母は『いいよ。帰っておいでよ』と言うんです。そうなると私も負けず嫌いで『いや、頑張る』となるので(笑)親は私のことを本当によくわかっているんだなと、そんな時に感じました。見透かされていますね。もう頑張るしかないって思いました」

マイナビ仙台レディース 國武愛美選手

仙台では青春時代の仲間とともに、もう一度夢の続きを見ている

 

―その時を乗り越えた仲間と、今プロの舞台で一緒にサッカーをしています。当時の選手権の決勝メンバー表を見ると、万屋美穂選手や池尻茉由選手、対戦相手の常盤木学園高校には白木星選手の名前がありますね。

「こんなにも集まるかというくらい、同じチームに集まって今一緒にサッカーができているので、本当に楽しいですね」

―青春時代の思い出を共有できる仲間とサッカーできている喜びはどのようなものですか?

「自分と同い年の選手、白木や茉由がゴールを決めた時にはすごく嬉しいです。4人で一緒に試合に出ることも多いので、心強い。切磋琢磨できる存在です。自分もレベルアップして、みんなで上手くなってずっと一緒にサッカーができるようにと思っています」(続く)

 

Photo by 土田有里子

村林いづみ
村林いづみ

フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。