仙台スポーツ
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Interview

VOLLEYBALL

リガーレ仙台 佐藤あり紗選手兼監督インタビュー(後編)多くの応援にパワーをもらった3年間。「恩返し」の戦いがいよいよ始まる

10月30日に開幕する2021-22シーズンのVリーグ。リガーレ仙台は今季よりディビジョン2に参戦し、新たなステージでの戦いに挑みます。2018年のクラブ創設から在籍し、リガーレ仙台の“顔”としてチームをけん引してきた佐藤あり紗選手兼監督。後編では、チームづくりで大事にしていることや、宮城のスポーツに対する思い、そしてこれからの抱負を熱く語ってもらいました。

 

―全日本代表として五輪にも出場された経歴があります。これまでご自身の経験をどのようにしてチームに還元していきましたか?

あからさまに声を大にして伝えるのではなく、要所要所で「あのときこういう考えでプレーしていた」「この選手はこんなプレーをしていた」といった伝え方をするようにしています。押し付けるのではなく、あくまでもスポットでアドバイスを送り、選択肢の一つにしてもらう。人によって、やり方や考え方の合う、合わないがありますし、本人が納得しないと良いプレーは生まれないと思うので。

リガーレ仙台 佐藤あり紗選手兼監督

―監督として上に立つというより、選手と一緒につくっていくというような感じですね。

そのとおりです。極端な話、メンバー全員が、監督やキャプテンといった気持ちでプレーしてほしいなと思っています。なので最近は、普段の練習中でも、私だけでなく他の選手が流れを止めて発言することも増えてきました。今、チームとして、とても良い雰囲気で活動ができていると思います。

―若い選手も多いですが、そうした人間性の成長もチームにとっては大きいのではないでしょうか。

特に大卒の選手たちは、初めの頃はまだ学生感が抜けていませんでしたが、最近はオンとオフの切り替えも上手にコントロールできるようになってきましたし、バレーボール教室などで参加者たちと交流するときも、常に相手の気持ちを考えた行動や発言ができるようになりました。バレーボールだけうまくても、決してファンは付いてきません。その人の中身、性格、頑張っている姿を見て、初めて応援したいと思ってくださると思うので、そうした成長が見られるのは本当にうれしいですね。

リガーレ仙台 佐藤あり紗選手兼監督

―現在、リガーレ仙台ではホーページやSNSなどでさまざまな選手紹介の企画を展開されています。「選手を知ってもらう」という意味では、そうした取り組みも大事になってくるんですね。

もちろんです。それらの企画って、選手たちが中心になって考えているんですよ! そこも成長した部分の一つかもしれません。練習の時間や、グループLINE、休みの日にも選手たちで集まって、いくつもの話し合いを重ねながら、まとまった企画を事務局に提案しています。クラブのために何ができるかを選手たちでも日々考えるようになったのは、最近の大きな変化ですね。実はこのユニフォームも、選手同士で出したアイディアを採り入れながら作っていただいたものなんです。「仙台らしいものをどこかに入れたいよね」という話になり、七夕をモチーフとしたデザインを一部に描いてもらいました。長年バレーボールをやってきましたが、こうした経験はなかなかできないので、とても楽しいです。

―ちなみに仙台はプロスポーツが盛んな都市ですが、他のスポーツを観に行かれる機会はありますか?

たくさん観に行かせてもらっていますし、どのチームも大好きで応援しています! 中でも、楽天イーグルスさんの試合はよく観に行かせていただいています。つい最近はマイナビ仙台レディースさんの開幕戦も観させていただきました。また、仙台89ERSさんは試合のイベントによく呼んでくださいますし、コロナ禍前にはベガルタ仙台のサポーターの皆さんの食事会に呼んでいただいたこともあります(笑)。まだVリーグにも参入してない中で応援していただけるのはありがたいことですし、仙台のプロスポーツを一緒に盛り上げていきたいという思いは常にあります。

―他のプロスポーツから刺激をもらうことも多いのではないでしょうか?

これまでは「どんな表情でプレーしているんだろう?」「どんなウォーミングアップをしているんだろう?」といった選手目線で試合を観ていましたが、最近ではどうしても「どんな運営をしているんだろう?」「このグッズはいくらの値段なんだろう?」といった経営目線で観てしまうんですよ(笑)。これは私だけでなく、他のチームメートも同じようなことを考えているみたいで、中には「こんなグッズあったんですけど、うちのチームで作れますか?」と写真を送ってくる選手もいます。いろいろな目線で勉強させてもらえるので、とてもありがたいです。

リガーレ仙台 佐藤あり紗選手兼監督

―さて、いよいよ10月末にはVリーグが開幕します。今後、県内においてリガーレ仙台というクラブをどのような存在にしていきたいですか?

宮城県は「バレーボール王国」と呼ばれるぐらい、バレーが盛んな地域でもあります。東北福祉大学や尚絅学院大学、古川学園高校など、全国の舞台で活躍しているチームがたくさんありますし、そうしたチームがあってこそのリガーレ仙台だと思っています。これまで3年間、それぞれのチームの監督さんも私たちのことを気に掛けてくださり、練習試合を多く組ませていただきました。若いチームの胸を借りながら強化をしてきた部分もあるので、私たちが先頭に立って引っ張っていくというより、彼女たちと一緒になって宮城のバレーボール熱をさらに高めていきたいです。

―最後に仙台、宮城の方々へのメッセージをお願いします。

いちばんは楽しみながらプレーする姿を見ていただきたいと思っています。まだまだ未熟で、発展途上のチームではありますが、みなさんに支えてもらってここまで来ることができました。これからも成長を見守っていただけたらありがたいですし、試合やイベントの日にはぜひ会場に足を運んでいただけたらうれしいです。私たちも皆さんに興味を持ってもらい、応援してもらえるような選手、チームを目指し、これからも頑張っていきます!

リガーレ仙台 佐藤あり紗選手兼監督

(了)
取材日=2021年9月29日

■プロフィール
佐藤あり紗(さとう・ありさ)◎1989年7月18日生まれ、仙台市出身。古川学園高校ではアタッカーとして活躍。その後進学した東北福祉大学で3年時にリベロへ転向。卒業後の2012年、Vリーグの日立リヴァーレに加入し、13年に全日本代表に初選出。16年のリオ五輪に出場を果たした。18年8月、リガーレ仙台に加入。19年より監督を兼任する。身長164cm。

 

Photo by 土田有里子

郷内 和軌
郷内 和軌

1992年10月14日生まれ、岩手県一関市出身。一関第一高校卒業後、仙台大学体育学部スポーツ情報マスメディア学科に進学。アルバイト等で執筆経験を積み、2015年4月より岩手県盛岡市の制作会社「(株)ライト・ア・ライト」に入社。地域限定スポーツ誌「Standard」の制作等に携わり、2019年4月よりフリーランスとして活動中。