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リガーレ仙台 佐藤あり紗選手兼監督インタビュー(前編)多くの応援にパワーをもらった3年間。「恩返し」の戦いがいよいよ始まる

10月30日に開幕する2021-22シーズンのVリーグ。リガーレ仙台は今季よりディビジョン2に参戦し、新たなステージでの戦いに挑みます。2018年のクラブ創設から在籍し、リガーレ仙台の“顔”としてチームをけん引してきた佐藤あり紗選手兼監督。前編では、クラブのこれまでの歩みを振り返ってもらうととともに、この3年間での成長、変化についてお聞きしました。
―仙台に戻ってきて3年が経ちましたが、今の生活をどのように感じていますか?
それまでのプロ生活とは大きく違い、いろいろなことにチャレンジさせてもらった3年間でした。監督という立場に就かせていただいて、競技に対する見方、考え方、チームメートとの関わり方などが大きく変わりました。また、バレーボール以外の部分でも、地元のコマーシャルなどに出演させていただきました。なかなか試合ができない中でも、皆さんがリガーレ仙台を盛り上げようと力を貸してくれて、それが私の頑張る源になっています。
―クラブの3年間の歩みを振り返っていただきたいのですが、まず1年目はメンバー3人でのスタートでした。
1年目はなかなか活動もままならなかったのですが、メディアの皆さんがたくさん報道してくださったおかげで、リガーレ仙台の存在を知ってもらうことができました。「応援してるよ!」という声をたくさんいただけて、温かいメッセージが本当に励みになりました。
―その後、トライアウトを実施し、2019年からはメンバーも増えました。とはいえ、ゼロからのチームづくりは、苦労もあったのではないでしょうか?
そうですね。チームづくりの部分では、いちばん大変な時期でした。連係面でもそうですが、後から入ってきたメンバーに「こういう雰囲気なんだよ」というのを理解してもらうためにも、立ち上げからいるメンバーがしっかりとお手本を示さなければなりませんでした。これまで以上に高い意識でプレーすることが求められたので、そうした意味ではとても苦労したのを覚えています。
―また、同年からは監督も兼任することになりました。初めは何をいちばん意識されましたか?
まずはチーム全体で話しやすい環境をつくることを心掛けました。私が一方的に指示を送るのではなく、全員がお互いのことを見ながら、気付いたことを教えてあげる、そうしたコミュニケーションの部分をいちばん大事にしてきたかなと思います。また、チームを引っ張る立場として、「しっかりしなきゃ」という自覚は常に持ちつつ、かといって頭が固くなり過ぎてもいけない。ちょうどいい立ち位置を自分の中で探りながら、ときにチームメートにも助けてもらいながら、少しずつではありますが私もチームもレベルアップできているのかなと感じています。
―昨年の春からはコロナ禍となり、活動もだいぶ制限されたかと思います。
ようやくメンバーがそろい、「これから頑張るぞ!」と意気込んでいた矢先に、こういった状況になってしまいました。3カ月もの間、そろって練習することができませんでしたし、これまで県内を回って、大学生や高校生と練習試合をさせてもらっていたのですが、それもなかなかできなくなってしまった。計画どおりに進まず、思うようにいかない日々が続きましたが、久しぶりの公式戦となった昨年12月の皇后杯では、長い間満足いく活動ができなかった分、今まで以上に楽しみながらプレーすることができました。チームとしても1勝することができ、そこからチームワークもさらに深まったと思います。
―Vリーグの前哨戦となる今年6月のサマーリーグでは5位と躍進しました。クラブとしてこの3年間でどの部分がいちばん成長しましたか?
いちばんは、一人一人が自立できるようになったことかなと思います。それまでは、どうしても誰かに頼ったり、任せたりするようなシーンが多く見受けられました。それが最近では、点を取るためにはどうすればいいか、試合で勝つためには何をすればいいか、一人一人が考えながら、日々の練習から努力している姿がうかがえます。そうした光景を見ると、私も同じ選手ではありますが「成長したなあ」と思わず感心してしまいますし、監督としても、もっと上のステージでプレーさせてあげたいと思います。
―ご自身にとってこの3年間は、思い描いたとおりの3年間でしたか?
本音で言えば、もう1年早くVリーグに参戦できれば、もっとうれしかったなというのはあります。最初は選手としてスタートして、途中から監督という立場に就かせてもらったことで、冒頭にお話ししたとおりバレーボールについての考え方、捉え方も変わったので、初めの頃に思い描いていた景色と3年後の今の景色とではだいぶ違いはあります。
―ちなみにリガーレ仙台では、設立当時からバレーボール教室や大会を開き、地域貢献活動にも力を入れてきました。それらの活動については、どのようなお考えをお持ちですか?
やっていて、本当に楽しいんですよ。バレーボール選手として自分にできることはまだまだたくさんありますし、これまで応援してもらった分、宮城に恩返しをしたいという思いでいろいろなイベントに参加させてもらっています。でも、恩返しをするというよりも、逆にパワーをもらうことのほうが多い気がしますね。
―昨年からはU-12、U-14の下部組織も立ち上がりました。そうした若い世代の育成も、これからの楽しみになってくるかと思います。
そうですね。下部組織を運営している「TEAMi」というクラブは、私が小学校から中学校まで所属したクラブでもあります。かつてお世話になったクラブと今いるクラブがつながっているというのは、自分にとってうれしいことですし、U-12、U-14で頑張っている子どもたちが、「将来はリガーレ仙台でバレーがしたい」という目標を持てるように、まずは私たちがしっかりプロとしての姿を表現していかなければいけないなと思っています。
(後編に続く)
取材日=2021年9月29日
■プロフィール
佐藤あり紗(さとう・ありさ)◎1989年7月18日生まれ、仙台市出身。古川学園高校ではアタッカーとして活躍。その後進学した東北福祉大学で3年時にリベロへ転向。卒業後の2012年、Vリーグの日立リヴァーレに加入し、13年に全日本代表に初選出。16年のリオ五輪に出場を果たした。18年8月、リガーレ仙台に加入。19年より監督を兼任する。身長164cm。
Photo by 土田有里子

1992年10月14日生まれ、岩手県一関市出身。一関第一高校卒業後、仙台大学体育学部スポーツ情報マスメディア学科に進学。アルバイト等で執筆経験を積み、2015年4月より岩手県盛岡市の制作会社「(株)ライト・ア・ライト」に入社。地域限定スポーツ誌「Standard」の制作等に携わり、2019年4月よりフリーランスとして活動中。