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Interview
FOOTBALL
WEリーグで日本の女子サッカーが変わる瞬間。宮澤ひなたは誰よりもゴール前で強い光を放つ【後編】

―WEリーグ全体を見ると、今年は女子サッカーの世界にどのような変化がありそうですか?
「今まではベレーザ、INAC(神戸レオネッサ)、(浦和)レッズとか、そういうチームがトップに立って(優勝して)という感じでしたよね。自分はベレーザにいた立場だったので他のチームには『負けてはいけない』というプライドが常にありました。でも他のクラブから見たら『相手は格上だから失うものはない。思い切り挑もう』みたいなところもあったと思う。何年間も勢力図的に変わらないような状態が続いていました。そういうところに、各チーム感じるところはあったんじゃないかと思います」
―そうかもしれません。その勢力図やファンの見方、楽しみ方が変わっていくのがWEリーグだということですね?
「様々な選手がいろんなチームに移籍しているし、新しいチームも生まれている。プロとして自覚が変わって、女子サッカーが変わる瞬間だと思います。どのチームもチャレンジャーとして戦うんじゃないかと。そう考えると、やっていて楽しいですよね。今、どのチームがどんなサッカーをするかわからないんですよ」
―確かに。監督も変わり、選手も変わっていますね。
「昨年までだと、分析の映像を見て『このチームはこういうサッカーをする』という固定されたイメージがありましたけど、選手によってサッカーは変わってくる。やっている側も、見ている方にとっても楽しい、応援したいチームが増えるのはいいことです。『こことここの試合を見たいな』とか。広島などもそうですが、新しい地域に女子チームができるというのは、女子サッカーが広まる第一歩。より女子サッカーが広がっていけばいいなと思いますね」

WEリーガーは子供たちに憧れの存在になって欲しい。女子サッカーが広まるきっかけを作りたい
―女子サッカーの普及や発展についてもWEリーグは大きな役割を持ちますね。
「自分は田舎にいたので、あんまり女子サッカーを知っている人が周りにもいなかったんです。女子サッカーというと2011年の(ワールドカップ優勝)の記憶が強いと思うんですよ。でもそれを変えたい。今はこんなに、『プロとして女子サッカーで生活できる人がいるんだよ』と伝えたい。女子サッカーの選手は、どうしても中学や高校で競技を続けることを諦めてしまう人がいるという現状がある。自分がサッカーをやってきたからこそ、『サッカーを続けてきてよかった』ということをWEリーグができて感じています。これからが女子サッカーにとって大事な時期だと思います」

全てのタイトルをどん欲に狙っていき、WEリーグに『マイナビ旋風』を起こす
―WEリーグの舞台で、宮澤選手はどう魅せていきますか?
「年間を通して、WEリーグのどのチームの、どの選手よりも、多くゴール前でのプレーに関わること。ストライカーという存在ではないですけど、どん欲に、どこからでもゴールを狙う。いるだけで怖い選手になりたいです。数字で言えば毎試合1ゴール決めるくらい、そういう気持ちでいます。それは結果として出ればいいことで、見てくれる人を笑顔にしたい、感動してもらいたいということが一番です。『この選手がボールを持ったらワクワクするんだよね』とか『今から何をするんだろう』という期待感を持たせられるようなプレーを心掛けていきたいです」
―宮澤選手が毎試合ゴールを取れたら、間違いなく優勝しますね。
「得点女王も狙いたいです。アシスト女王も。(あらゆるタイトルを)狙っていきたいです」
―たくさんのお話を伺いましたが、宮澤選手の言葉には力がありますね。伝えたい、表現したいというところはプレーにも通じていますか?
「日頃サッカーをしていて、言葉で引っ張るということはあまり得意ではないです。人前に立つのも好きじゃなくて……。取材などで聞かれたら話すことはできますけど、自分から話すということが得意なわけではないです。サッカーは人と人の間にボールが一個あるので(笑)それで伝えられるんじゃないかと。結構、人見知りなところもあるんですよ(笑)」

全ての『1番』に。宮澤選手は頂上を目指してひた走る
―残念ながら、なでしこJAPANのメンバーには入れませんでしたが、この夏の東京オリンピックはどんな気持ちで見ていましたか?
「やっぱり悔しかったですね。でも悔しいと言って、そこで止まっている自分もいちゃいけないと思っています。逆にこういう機会があったから、チームに専念しよう、WEリーグに向かって頑張ろうと思えました。代表も、本当にあと一歩のところでした。そこに出ていたら自分の何かが変わっていたかもしれません。でも、だからこそ、この悔しさをバネにする。代表に入るにはチームで活躍しないといけないです。オリンピックをテレビで見ていて、次こそはという気持ちが強くなりました」
―2024年パリオリンピックの前には、2023年の女子ワールドカップ(オーストラリア・ニュージーランド共催)も待っていますね。
「そこには本当に(メンバーに)食い込んでいきたい。代表に時々選ばれるのではなく、毎回選ばれたい。代表にとっても必要とされる存在になりたい。日本代表と言ったら『宮澤ひなたがいるよね』というような、そんな選手になりたいです」(完)
Photo by 土田有里子

フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。