
その左足に磨きをかけて。自信と覚悟を持ち、高平美憂はWEリーグで輝く【前編】
Interview
FOOTBALL
9月12日、日本初の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」が開幕します。WEリーグは、「Women Empowerment League」の略で、日本に「女子プロサッカー選手」という職業が確立され、関わる「わたしたちみんな(WE)が主人公」として活躍する社会を目指す、という思いが込められています。仙台を本拠地として、このWEリーグに参戦するマイナビ仙台レディース。チームの前身である「マイナビベガルタ仙台レディース」時代から在籍し、今年キャプテンを務めるストライカーの浜田遥選手にここまでの歩みと現在の心境を聞きました。(全2回)
―2月にチームが誕生して早くも6ヶ月が経ちました。WEリーグ開幕がいよいよ近づいてきた今の気持ちはいかがですか?
「WEリーグは、今までのなでしこリーグの時とは違って、(チーム立ち上げから)開幕までにすごく時間がありました。その頃は『開幕まで遠いなぁ』という気持ちがあったのですが、もうこのタイミングになって『いよいよ開幕するんだ』というワクワク感とドキドキと……いろんな気持ちでいます」
新しいリーグの幕開けに、浜田選手も胸を高鳴らせている
―開幕に向けたこの半年間は、個人としてはどんなことを大切にして過ごしてきましたか?
「この間には、日本代表(なでしこジャパン)の合宿や試合もありましたし、チームでは初めてキャプテンを務めることになりました。松田(岳夫)監督のサッカーも自分がこれまでやってきたこととは全然違う、ボールをつなぐサッカー。本当に全てが自分にとってはチャレンジでしたね」
―昨年までは、ほとんどの選手がサッカーと仕事を両立させながら「なでしこリーグ」を戦いました。今年からはプロとして「WEリーグ」を戦う新しいチーム。環境の変化はどう感じていますか?
「昨年までは練習時間が午後(主に夕方から)だったので、なかなか自分のトレーニングはできなかったですけど、今は全体練習が午前中に行われるので、午後に自分の時間がある。それぞれが自分の課題と向き合ってトレーニングをしている姿がよく見られます」
―浜田選手の午後の時間の過ごし方はどのような感じですか?
「私は、個人でトレーニングを見てもらっている人がいるので、作ってもらったメニューに取り組み、体のケアをしています。次の日の練習にいい状態で臨めるようにと思いながら過ごしています」
―プロ選手の時間の使い方、という感じがします。
「いえ、まだまだですね(笑)」
プロとしてしのぎを削る。練習場から激しい競争は始まっている
―マイナビ仙台レディースは全選手26人がプロ契約。(※WEリーグでは「プロ契約選手15名以上」が参入条件と規定されている)結果が求められる立場となって、これまでとは違う競争意識は芽生えていますか?
「みんながどう感じているかはわからないですけど、今年は新加入選手も多く入ってきて、みんな足元の技術が高い選手です。自分自身も相当頑張らないと試合に出られないなという危機感で毎日練習をしています。強い気持ちを持ってやっていますね」
―新しいチャレンジの中で、松田監督のサッカーには、ボールをつなぐことや味方を追い越して前に出ていくことなど、これまでとは違う要素がたくさんあります。その中でどう自分を高めて、適応させていますか?
「本当に、それが今の自分自身の課題なんです。なかなかボールをつなぎながら自分の特徴を出すということが上手くできていなくて……。それで半年間、難しいし厳しい時間を過ごしてきて、まだ答えは見つけられていません。でも今取り組んでいるサッカーの中で、自分を出していけたら、更に成長できると思います。今は足元のつなぎなど苦手な部分も少しでもできるように。チャレンジする中で、自分の特長を出していけるようにしたいですね」
―昨年浜田選手は、なでしこリーグで15ゴール、得点ランキング2位とチームの中心選手として大活躍しました。今年、サッカーのスタイルが変わった中での役割はどう考えますか?
「ゴールにこだわる部分は誰にも負けたくない、譲りたくないです。自分が絶対に点を決めるという強い気持ちを持ってプレーしないと、自分が自分でなくなってしまう。その気持ちを忘れず、今やっているサッカーの中で、チームが勝つために一番いい選択をしていきたいです」
誰にも譲れないゴールへのこだわり。そのための努力は人一倍重ねてきた
―7月、8月と石巻市や北海道の網走市でキャンプを行いました。この期間はどう過ごしましたか?
「走り込みも相当したんですが、練習が本当にきつくて……(笑)自分たちが『今日の練習はこういう感じかな』と想像するものを上回る厳しいトレーニングをしていました。本当にみんなで乗り越えましたね。網走では温泉があったんですが、ほぼ貸し切り状態で入らせてもらいました。毎日みんなでいろんな話をしながら『明日も頑張ろうね』と励まし合って過ごせたので、キャンプでみんなと心が近くなったのかなと感じています」
―本当にきつかったんですね。このタイミングで走り込みをするということは、間近に迫った開幕へ、練習のギアを一段階上げるという感じですか?
「そうですね。自分たちのしたいサッカーは、アグレッシブに動きながら攻守に渡って戦うのがベースなので、それを実現するには自分たちがもっと走れるようにならないといけないです。まさか、このタイミングで(走りこみが)来るとは思わなかったですけど(笑)」(続く)
Photo by 土田有里子
フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。