
外国籍選手と通訳はワンチーム。異国で戦う選手を支えるJリーグ通訳・武腰飛鳥【前編】
Interview
FOOTBALL
(提供:ベガルタ仙台)
今、ベガルタ仙台の「ど真ん中」から目が離せません。いろいろな意味で。
今年4月に来日したブラジル人MFフォギーニョ選手が、ピッチ内外で存在感を示しています。ほとんど表情を変えずに、対峙する相手からボールを奪うと、味方へ効果的につなげるフォギーニョ選手。強く賢いプレーぶりと合わせて目を引くのが、ゴールドに輝くその豊かな「あごひげ」。多くのサポーターがフォギーニョ選手に強い関心を寄せている旨を伝えると、「日本の人って、本当に変わっているなぁって思うんですけどね(笑)僕も、自分のことをぜひ知ってもらいたいので、いろいろ話したいと思います」とにこやかに答えてくれました。日本での生活や家族のこと、そしてひげの秘密にも迫りました。(前後編)
―来日して4ヶ月が経ちました。初めての日本、仙台での生活はいかがですか?
「とても居心地が良いですね。ブラジルとは環境は違うのですが、最初の7週間位は時差を感じて、コンディション調整が難しいこともありました。日本はブラジルと異なる習慣を持つ国なので、文化に溶け込むということも難しかったですが、今は適応できたかなと思います。仙台で心地よく過ごしています」
―仙台で文化の違いなどで驚いたことはありましたか?
「食事の面で、変わった食べ物に出会ったり……(笑)最初はいろいろと驚きましたけど、もう慣れましたね。日本の生活水準は本当に高くて、生活する上で最高の国だと思います。今は『仙台が自分の家』だと思いますし、早く妻に日本に来てもらって、100%の幸せを感じたいです」
―加入会見の時には、奥様がフォギーニョ選手のひげをとても気に入っているという話をしてくれましたね。日本とブラジル、ご家族と離れて暮らす生活は寂しいですね。
「そう、妻は僕のひげをとても気に入ってくれているんです(笑)彼女がそばにいないと『何かが欠けているな』と思います。絶対に日本のことを好きになってくれると思うので、早く来て、日本のことを知ってもらいたいですね。僕も彼女と一緒だと、もっと幸せでいられると思います」
ピッチの中での存在感は抜群。強く、丁寧なプレーが信条だ
―Jリーグでも外国籍選手の家族について、入国規制緩和を目指して、様々な調整を行っているところですね。
「Jリーグの方々が尽力してくれて感謝を感じています。家族が近くにいないという状況は、選手にとって本当に複雑な思いがあることなんです。ピッチ外で助けてくれるのは、妻や家族という存在。近くにいてくれれば、メンタル的にもより強くなれると思うんです。ピッチ内で強く戦うためには、家族の存在が必要だと思いますね。家族の助けがあればこそ、ピッチの中でより生産性の高い仕事ができると思うんです。本当に妻が恋しくて、恋しくて……ここに来て欲しいです(笑)」
―コロナ禍で特別なシーズン。その中で遠くブラジルを離れて日本でプレーするというのは大きな決断でしたか?
「時期的には、本当に難しかったと思います。コロナウイルスが世界中に拡散していますし、不幸にも亡くなられた方も大勢います。だからこそ早く終結して欲しいですね。家族が日本に来られない状況も理解しています。でも今は、ワクチン接種も進んでいるので、そういうことも(外国籍選手の)家族の来日(規制の緩和)への助けになっているのかなと思います。一日も早く、私たちが生活していた、ちょっと前の(コロナウイルス感染拡大前の)生活に戻れたらなと思います」
低い姿勢で構えて相手を待つ。繊細に駆け引きしながら、狙ったボールは逃さない(提供:ベガルタ仙台)
―ここからはサッカーの話を。フォギーニョ選手はここまでの試合出場で、ボランチとして存在感を見せています。実際にJリーグでプレーしてどのようなことを感じていますか?
「少しブラジルのサッカーとは違うので最初は日本のサッカーに適応するというのは難しいところもありました。日本のサッカーは強度が高いし、Jリーグは競争力があるリーグ。ベガルタを助けるために、そういうことを理解してプレーに臨む必要がありました。何試合か出場することができて、残念ながらけがをしてしまったのですが、今は回復し、以前の状態に戻ってプレーできているので問題ないですね。監督のために、常に自分が準備できている状態でありたいと思います。チームメートを助け、ベガルタというチームを助けて行きたいです」
言葉やジェスチャーを駆使して、フォギーニョ選手は盛んにコミュニケーションをとっている
―来日後の隔離期間を経て、あっという間にチームに溶け込んだように見えました。仲間とのコミュニケーションはどのように意識していますか?
「やっぱりチームメートの中に溶け込むということは、ピッチ内もそうなんですが、ピッチ外で早く適応していくということが大事だと思いますね。チームメートだけではなくコーチ陣たちを信じて、コミュニケーションをとっていくことも必要です。サッカーになじむことと、コミュニケーションを積極的に取ること。この二つは毎日意識してやっています」
―仙台には優秀な通訳スタッフがいるので安心感もあると思いますが、一方で日本語を学んで使おうという努力もされていますね。
「そうですね。日本語に関して、ピッチ内で使う言葉、特に『右・左・後ろ・前』など方向を示す言葉は、最初の練習で覚えるようにしました。ピッチ外でも、自分がわからないことについては、すぐにチームメートに『何ていうの?』と聞いていますし、通訳スタッフも助けてくれるので感謝しています」
フォギーニョ選手は仲間に愛され、支えられて日本でのプレーに喜びを感じている
―仙台のチームメートは優しいですか?
「はい! 最初から本当に温かく歓迎してくれました。そのおかげで、新しい環境にすぐに適応できました。最高の仲間だと思います」(続く)
フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。