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チャンネル登録者数88万人 気仙沼出身のストレッチ系YouTuberオガトレ【前編】理学療法士として培った経験と優しさ

理学療法士としての知識を活かし、「体が硬くて困っている人をゼロに」という信念のもと活動を続けるストレッチ系YouTuberオガトレさん。

2019年に開始したチャンネルは、今や登録者数88万人超え(2021年8月現在)。効果的なストレッチ方法とわかりやすい動画編成、穏やかな語り口で人気を博しています。

インタビュー前編では、ストレッチに役立つ商品を展開するブランドの立ち上げや本の出版、ストレッチ業界初のARアプリ開発など、様々な分野で活躍するオガトレさんがストレッチを広めたいと思ったきっかけ等を伺いました。

 

「体が硬くて困っている人をゼロに」を掲げるきっかけとなった出会い

ーまずは、理学療法士になった経緯を教えてください。

「部活での怪我が多かったことで自分の体に興味を持ち、体のことをもっと知りたいなと思いなんとなく専門学校に進学しました。そこでの勉強がすごくおもしろくて、どんどんのめり込んでいきました。学校に行くまでは理学療法士についてもそんなに知らなかったんですが、働き始めてからはとても楽しかったですね」

「オガトレ」こと尾形竜之介さんの出身は宮城県気仙沼市。中学校ではサッカー部、高校では柔道部に所属していました。

部活での怪我が多かったことから自分の体に関心を抱き、仙台市泉区にある仙台リハビリテーション専門学校に進学。理学療法士の資格を取得し、卒業後は地元に戻り気仙沼市立病院に就職します。

脳外科や整形外科で患者さんのリハビリテーションに従事。理学療法士としての一歩を踏み出した1年目の冬、スポーツ障害を持つ学生の診察を行う「スポーツ外来」へ本格的に配属になったオガトレさん。

そこで初めて担当したのは、母校である気仙沼高校のバスケ部でキャプテンを務める女の子。体が硬かったことも怪我の原因のひとつとなり、その後のリハビリも苦労したといいます。

「冬の練習中にアキレス腱を切ってしまって、6月にある最後の高総体に向けてリハビリをする、という状況でした。

スポーツの復帰は、骨折した後に歩けるようになる、というのとはまた話が違くて。歩けたらオッケーではなく、歩くよりも何倍も難しいことを、予測不可能な中でやらなければいけない。120%の力を出さなければいけないのがスポーツじゃないですか、体をそこに耐え得るまで持っていかなければいけないんです。

間に合うか間に合わないか、ぎりぎりのスケジュール。その子も、なんとか3年生全員でコートに立ちたいという想いで焦っていました。

僕は勉強はしていたけれど(スポーツリハビリの)経験が全くなくて、アキレス腱の怪我をよくしようとすることばかり考えてしまいました。その子の焦る気持ちや、キャプテンだからこそ周りに弱いところを見せられないという思いをわかってあげられなくて。

結果的にやっぱりその子は無理をしてしまって、またアキレス腱を切ってしまった。最後の大会はバスケができず、コートに立つことしかできなかったんです。

そこから、僕はスポーツをやってる子どもたちに対して何かをしていきたいなと思ったんです。その子みたいに、体が硬くて怪我をしてしまう子が減るように。それを目標に、今もずっとやってきている感じですね」

患者との心のギャップを埋めたい。スポーツトレーナーのボランティアへ

ストレッチ系YouTuberオガトレ

「トレーニングはコーチが目の前で動きを見せてくれますけど、リハビリの場合、理学療法士はその怪我を経験していないじゃないですか。僕らはアキレス腱を切ったことがないのに、わかったようなことを言わないといけない。『先生は切ったことないんでしょ』と思われてしまう。経験をしていないので、説得力に欠けちゃうんですよね。そこで患者さんの気持ちとのギャップが生まれてしまって、それが理学療法士に対する不信感の原因になったりもするんです」

スポーツで怪我をした子どもたちの気持ちが知りたい、そのためには自分が現場に赴くしかない。そう思い、病院のスポーツ外来で診療をする傍ら、仙台でスポーツトレーナーのボランティアに参加します。

「まずは、あのバスケ部の女の子の気持ちが知りたかったんです。なぜ無理をしてしまったのか。また、試合に出られない子どもたちがどういうフラストレーションや、葛藤を抱えているのか。それを知らないまま病院に来る子たちだけを診ているのはおかしいな、と。『僕が行かないと』と思いました」

スポーツの現場で実際に子どもたちと触れ合い、彼らの気持ちに寄り添いながらリハビリに従事したオガトレさん。そんな中、医学的な知識や自身の経験から、怪我をしないために一番大切なのはストレッチだということを実感したといいます。しかし、子どもたちに言葉や文章で説明するものの、うまく伝わりません。

試行錯誤の末、たどり着いたのが「動画で伝える」という手法でした。

「子どもたちにとって文字や写真は難しい。なるべくイメージしやすいものが良いなと思った時に、”動画”が一番良かったんですよね。1回の説明でわからなかったことも、『このストレッチはこういう風に大事だよ』というのを動画内で何度も言うことで、自然と染み込ませていく、というのを目指していました」

子どもたちが理解しやすいように、続けやすいようにと始めた動画制作。最初は少数の限られた人向けに公開していましたが、体が硬くて困っている子を一人でも多く救いたいという想いから、2019年に本格的にYouTubeチャンネルを開設。ストレッチを全国に広げる活動をスタートしました。

その後、登録者数は異例のスピードで伸び続け、開設して2年間で60万人を突破。現在は88万人以上がフォローする国内最大級のストレッチチャンネルとなりました。

 

YouTubeでの成功と、動画制作のこだわり

「開脚できるようになるストレッチ!【2週間で開脚ベターっになる方法】」という動画が脅威の1300万回再生(2021年8月現在)ですが、バズった要因はなんだと思いますか?

「ひとつめは、2週間で開脚できるという『動画を続けることで得られる明確なメリット』がタイトルに書いてあることです。やってみようと思いやすくて、『このストレッチをやれば自分にいいことがある』というのがわかりやすい動画だったんだと思います。

なんとなくみんな潜在的に『やわらかい方がいいだろう』とはわかっているんですよね」

ー確かに……漠然と『体をやわらかくしよう』っていう動画より、ピンポイントな目標がタイトルにあった方がクリックしたくなっちゃいます。

「ふたつめは、タイミングが良かったことです。コロナ禍で自宅にいる時間が長い時にああいう動画が上がったのがそうですね。

ただ、あれが『開脚ができるようになる』という動画じゃなかったらバズらなかったと思っています。1ヶ月で終わると思われていた自粛期間中に、前向きに体を変えようと思った人が多かった。なので他の方のチャンネルも、わりとポジティブな動画がぐっと伸びていましたね。

最近のYouTube界では逆に『ここを治さないと痩せない!』みたいなネガティブなものが伸びやすくて、不安な気持ちを煽るような動画が増えてきています。今だと『開脚ができるようになります』みたいな動画はバズりにくいと思います」

ーサムネイルもどんどん過激化している印象ですよね。

「Photoshopで加工した画像に『1日でマイナス6センチ!』みたいなサムネイルの動画が、普通に1000万再生とかされていると……もうなんでもいいのかな!?って思っちゃいますよね(笑)」

ーそういう動画がバズっているのを見ると、なげやりな気持ちになってしまいそうですね……。

「今は、YouTubeはそういう場所だと思うようにしています。

本気でストレッチを学びたい人に、僕が本気で作った動画を見てもらえる場所を作りたくて、オガトレ塾というサービスを作ったんです」

ストレッチ系YouTuberオガトレ

「オガトレ塾」は有料の会員制サービス。YouTubeよりもさらに詳しく解説した限定動画やライブ配信で、より深くストレッチを学べる(塾生は不定期募集中)

 

ー動画編集において、現在はどんな工夫をされていますか?

「家族全員で見て『ああ、なるほど』と思ってもらえるチャンネルを目指しているので、カメラを10歳くらいの子どもだと思って喋っています。言葉遣いや内容、テロップの感じとかも、まずは子どもたちが理解できるようにしていきたくて」

ストレッチ系YouTuberオガトレ

ーオガトレさんの動画は、解説なしで急にストレッチが始まる動画が多いですよね。それも工夫のひとつでしょうか?

「子どもたちに先に理論を説明してしまうと弾かれちゃうんですよね。なので体を動かしている中で、ストレッチをしている間暇だからオガトレの話を聴いてみよう、と思ってもらえるようにしようと。10分やってみてから『あ、そういうことか』と理解して、自分の体も変わっている、というのがいいなと思って。

あとは、ストレッチって毎日やるものなので、生活に染みわたっていくような動画を目指しています。動画の色もできるだけ3~4色くらいに収めようと思っていて、余計なものがなく、皆さんが心地よく続けやすい動画作りにこだわっています」

 

視聴者を「信者」にしてはいけない

ー動画の方向性などについて「皆さんの意見を聴かせてください」と度々発信されているのが印象的でした。偏見かもしれませんが、YouTuberってファンの意見を取り入れる方ばかりではないのかなと思うので……。

「もちろん、自分のことはクリエイターだと思っているので『こういう風な動画構成がいいよ』みたいな、同業者の意見についてはまったく聴かないです。自分の動画が一番いい、わかりやすいと思っているので、同じジャンルの人の動画も見たくないくらいプライドが高いんですよ(笑)」

ストレッチ系YouTuberオガトレ

「でも、見てくれる人がいないとやっぱり成り立たないと思っていて。僕の動画って自分が満足する動画じゃなくて、視聴した人たちが実際に行動するようにしないといけない。だから僕本位ではなく、皆さんが求めている動画、やりやすくて続けられる動画じゃないと意味がないんです。

行動するのは皆さんなので、そのためには見てくれる人の意見を取り入れないと良い動画にはならないと思ったんです」

ー視聴者の方々と一緒に作り上げたチャンネルなんですね。

「そうですね。88万人で作ったチャンネルです。気仙沼の人口は超えることができたので、はやく仙台に追いつきたい……(笑)」

ストレッチ系YouTuberオガトレ

『自分本位の発信をしない』という言葉には、理学療法士として働いてきたからこその経験と想いがあると言います。

「ストレッチを人に教える以上、相手を絶対に”信者”にしてはいけなくて。

例えば、『フォロワーがこの動画を見て○kg痩せたよ』という紹介をするのも信者を作る行為じゃないですか。信者っていうのは『自分で考えられない人』だと思っています。その人が良いって言ったから良い、と盲目的に信じてしまう。良い悪いの判断が他者に依存しているんです。

そういう人たちが視聴者になると僕はお金が増えて得をするかもしれないですけど、多分一瞬でいなくなるか、何も考えずに続けている状況なので、それはその人たちにとってもよくない。

ストレッチは自分で自分の体を変えていくことなので、基本的に誰にも依存しないもの。ストレッチを続けられる人は、他者に依存しない人なんです。

僕本位になったら意味がないというか、僕個人にもファンはいらないと思っています。名前だけでお金を稼ぎたくないので自身のグッズは作っていません。立ち上げたブランドも商品自体に価値があるもので、『by OGATORE』もいずれは消したいと思っています。僕がいなくても成立するくらい、ストレッチが皆に広まればいいなと思います」

ストレッチ系YouTuberオガトレ

「ご自愛を広める」ブランド”Gi(ジーアイ)”のTシャツ

 

ー動画を発信する上で、ご自身で大切にされていることはなんでしょうか。

「理学療法士として、根拠のないことは言わない。『絶対痩せる』とも言わないです。実際に痩せなかった場合、絶望しちゃうし、損した気持ちになっちゃうじゃないですか。

見て嫌な気持ちになる人がいない動画を目指しています。視聴者の皆に、優しくしたいんです」

 

信者は作らない、自身のファンはいらない―――。

理学療法士として培った経験を活かし、ストレッチに取り組む視聴者に向けてより良い動画作りを追及し続ける姿勢が、88万人ものフォロワーから支持される理由なのかもしれません。

後編では、そんなオガトレさんが地元である気仙沼市で活動を続ける想いについて伺います。

 

オガトレ 公式YouTubeチャンネル

Gi オンラインショップ

 

Photo by 菅原大路

菅原智萌
菅原智萌

岩手県生まれ、宮城県育ち。運動センスがなくスポーツの経験はほぼありませんが、スポーツ漫画はめちゃめちゃ読みます! 地元の方に向けて、宮城・仙台のスポーツに関する情報をたくさん発信していきます!