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Interview
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千葉百音選手 インタビュー(前編)大事なのは「表現力」。本来の自分らしい滑りを見せる

2019年から2年連続でシニアに交じり全日本選手権に出場。現在、フィギュアスケート界の新星として大きな注目を集めるのが、東北高校1年の千葉百音選手です。前編では、競技を始めてからこれまでの歩みを振り返りながら、彼女のフィギュアスケートに対する思いに迫ります。
―まずはフィギュアスケートを始めたきっかけを教えてください。
競技を始めたのは4歳のときです。テレビでフィギュアスケートの試合が放送されていて、それを観て「楽しそうだなあ」と思ったのがきっかけでした。そのときは浅田真央選手をはじめ、たくさんの選手の演技を見ていました。くるくると回ったり、ジャンプをしたりする姿にも憧れましたが、華やかな衣装で演技しているのがうらやましくて。「ヒラヒラした衣装を自分も着てみたいな」という気持ちになりました。
―フィギュアスケートを習い始めた頃の記憶はありますか?
昔のことなので忘れてかけているところもありますが、選手のまねをしながらテレビの前でひたすら踊っていたのは覚えています。また、フィギュアスケートを始めてからも、簡単だった、あるいは難しかった、といった感情ではなく、とにかく「楽しかった」という記憶しかないんです。氷の上を滑るという感覚が、通常の生活ではまずないので、シュー、って滑るのが本当に楽しくて。あとは実際にジャンプして回ってみたりもしましたし、あの頃は全てが楽しかったですね(笑)。
―ちなみに実際にジャンプで回れるようになったのはいつ頃ですか?
小学校に上がる前には、初歩的な1回転ジャンプは練習の中で成功できていたと思います。フィギュアスケートを始めたのが4歳の終わり頃だったので、ちょうど1年ぐらいかけて習得したような感じです。でも、小さい頃の自分は、どちらかと言うと「スピード狂」でした(笑)。ジャンプして回るより、スピードを出して全力でリンクを駆け抜けるほうが楽しかったですね。
―本格的に競技を習うようになったのが小学校1年生からとのことですが、それまでとの違いはありましたか?
小学校に上がってからも、それまでの遊んでいた頃と同じような感覚で滑っていたので、そんなに苦労したことはなかったです。ただ、小学3、4年生になってから、「全日本ノービス選手権(12歳以下の大会)に出たい」という思いがだんだんと沸き始めて、さらに上を目指そうと思うようになりました。それから、ジャンプの癖を直したり、回転不足を調整したり、そういったところも気を付けるようになってきて、フィギュアスケートの大変な部分も感じるようになりました。
―小学6年生の頃には、野辺山合宿(全国有望新人発掘合宿)にも初めて参加されました。
その合宿には全国各地から50人ぐらいが集まりましたが、私にとって(ノービスの合宿は)最初で最後の機会でした。ただ、私より上手な子はたくさんいましたが、「周りに流されたらどうしよう」といったプレッシャーはほとんど感じることはなかったです。それよりも、自分は周りの子たちと張り合えるレベルではないと自覚して「たくさん吸収しまくろう!」といった思いで臨むことができました。そしたら、逆に楽しみながらスケートできたことで、良いところを存分にアピールすることができ、(全日本ノービス選手権の)シード選手に選ばれることができました。
―それからジュニアに上がり、2019年10月には東日本ジュニア選手権で優勝しました。
当時は中学2年生でしたが、とても調子が良かったシーズンでした。ただ、東日本選手権は、たまたま優勝しちゃったような感じで……。勝てるとは思っていない大会で勝てちゃって、それが逆にいけなかったのかなと(笑)。まだまだ世の中を知らず、考えが甘いところがあったので。
―その後、19年、20年と2年連続で全日本選手権に出場しています。シニアの選手たちと戦ってみて、どのようなレベルの差を感じましたか。
演技の「余裕」のところですね。シニアの選手の方々の演技を見ていると、たとえばジャンプをするとき、プレッシャーを全く表に出さずに、きれいな流れの中で成功させています。演技とジャンプが一体となることで、そこに初めて余裕が生まれるのかなと思っているのですが、私の演技はまだまだ「ちゃんと降りなきゃ」、「転ばないようにしなきゃ」といった緊張が、表情の中に出てしまうことが多い。もっと余裕を持って演技ができるようにならなければいけないと思っています。
―ちなみに千葉選手が演技中に心掛けていることはありますか?
特に日々の練習から気を付けているのは、「後ろ姿の背中がきれいになるように」スケーティングをすることです。そのために大事なのが「表現力」。手先から足先までの動きを優美にこなすことはもちろんですし、演技中の表情一つとっても、ただ明るく元気に笑うだけでなく、曲によっては慈愛のほほえみなども表現しなければなりません。また、最近になってようやく全国のトップレベルに少しは近付いてきたのかなと自信を持てるようにはなりましたが、今はそれが逆にプレッシャーになって、伸び伸びと演技ができてない部分があります。昨シーズンは捻挫を2回繰り返した影響もあり、調整が間に合わず焦ってばかりであまり良い成績は残せなかったので、本来の自分らしく、周りに流されないスケーティングを今年は披露していきたいです。
(後編に続く)
取材日:2021年6月5日
■プロフィール
千葉百音(ちば・もね)◎2005年5月1日生まれ、仙台市出身。4歳からフィギュアスケートを始める。小学6年時に香港で行われたアジアンオープントロフィー2017のアドバンストノービス日本女子代表に選出。中学1年時には東北・北海道ジュニア選手権で初出場、初優勝。2年時には東日本ジュニア選手権で優勝、全日本ジュニア選手権で6位入賞を果たし、全日本選手権に推薦出場。2020オランダチャレンジカップ日本代表・ジュニア女子優勝。3年時も2大会連続で全日本選手権出場を果たした。今年4月、東北高校に進学。仙台泉F.S.C.所属。
Photo by 土田有里子

1992年10月14日生まれ、岩手県一関市出身。一関第一高校卒業後、仙台大学体育学部スポーツ情報マスメディア学科に進学。アルバイト等で執筆経験を積み、2015年4月より岩手県盛岡市の制作会社「(株)ライト・ア・ライト」に入社。地域限定スポーツ誌「Standard」の制作等に携わり、2019年4月よりフリーランスとして活動中。