
長野風花は、大きくはばたく時を待つ。 いつか、もう一度世界の舞台へ。日本を代表する選手になるために【前編】
Interview
FOOTBALL
―韓国から帰国し、当時なでしこリーグ2部のちふれASエルフェン埼玉に入団しました。その経緯は?
「韓国のリーグが終わるのが日本のシーズンよりずっと早かったので、2~3ヶ月くらいオフがあったんです。その間に通っていたジムの紹介で、ちふれの練習に参加していました。入団するとか、そういうことでなく一緒に練習させてもらっていたんです。そこでちふれの菅澤大我監督と出会いました。自分に足りないもの、求めていたものがそこにあったんです。(当時)2部リーグだったけど、迷いはなかったですね。個人の成長を求めて行きました」
―その時の「自分に足りなかったもの、求めていたもの」とはどういうことでしたか?
「韓国では、相手のプレッシャーが速い中で周りのサポートがなかった時に、ボールを失ってしまう場面もあったんです。個人のテクニックやボールを失わないためどこに置くかなど、本当に細かいことをちふれでは練習でやっていました。そういう個人戦術やテクニックを学ぶために行きました」
―常に何が必要か、自分と向き合いながらやってきたんですね。
「そうですね」
―この秋、WEリーグがスタートします。新リーグの開幕へ向かっていくのはどんな心境ですか?
「とにかく早く試合がしたいという思いが強いですね。今やっているサッカーがすごく楽しいですし、やっぱり勝っていくことでチームとしての自信もついてくると思うので、とにかく優勝目指して、今は積み上げていくだけだなと思います」
―「選手の個性を生かしながら、ゲームを支配する」という松田監督が浸透させようとしているサッカーに取り組んでみて感じることはどんなことですか?
「楽しいですし、『サッカーってこうなんだよ』っていうことを教えてもらっています。本当に今は楽しみながら成長できているな、と。いろいろなことを吸収できているなと思います」
―長野選手個人に求められていることはどういうことですか?
「去年はちふれでアンカーをやっていたんです。結構ポジションを後ろにとっていたので、低い位置でプレーに関わることが多かったんです。でも仙台では、ボランチがどんどん前に出て行くことも求められますし、クロスにボランチどちらかが入って行くということを言われています。前に、攻撃に関わるというところを言われていますね」
―前に出て行くということについては楽しさもあるのではないですか?
「はい。攻撃も、やっぱりスルーパスが得意で、高い位置だとより出しやすいですね。攻撃に関わるのが好きなので、楽しみながらやれているところです」
―ボールにどんどん触り、関われば関わるほど長野選手の良さが出てきますね。
「中盤の選手がボールを触らないと、攻撃は始まらないと自分では思っています。私がどんどんボールに絡むことでチャンスをいっぱい作りたいなと思います」
―マイナビ仙台レディースでタイトルを目指していくことの意味はどう感じていますか?
「今年新しいチームになって、私たちがWEリーグという新しいリーグで結果を残すことで、今いるマイナビのユース、ジュニアユースの子たちには結果を出して、憧れの存在でありたい。関わってくれている方に対しては感謝の気持ちを結果で表したいと思います」
―長野選手自身にとっての憧れの存在は?
「私の小さい頃の女子サッカー選手と言えば、澤(穂希)さんか、がんさんこと、荒川恵理子さん(ちふれASエルフェン埼玉)。女子の選手と言えば、その二人でしたね」
―そんな憧れの存在のなでしこジャパンがワールドカップで優勝した2011年。当時の長野選手はどんなことを感じたのでしょうか?
「中学1年生だったと思います。私は浦和レッズのジュニアユースでした。日本の女子サッカー、なでしこの選手がワールドカップの優勝トロフィーを掲げていて、本当に興奮していました。ニュースでも大きく取り上げられて、そういう様子を見ていて『私もいつかワールドカップで優勝したい』という思いが当時からあったと思います」
―年代別代表でも活躍してきた長野選手。今、日本代表への思いはどのように抱いていますか?
「とにかくチームでしっかり結果を残して活躍する。そうすることによって必ず代表は見えてくると思うので今は、焦らずに。もちろん代表に入りたいし、入って活躍したいという気持ちもあるんですけど、今は自分の成長をはかって、活躍するための準備をしっかりする。そして必ず代表に入って世界大会で結果を残したい、日本を代表する選手になりたいと思っています。自分がなりたい姿やそのためにすべきことはしっかり整理できていると思います」
自分を冷静に見つめ、一年一年を大切に積み重ねてきた長野選手。WEリーグで初代女王を目指し輝いた先に、日本代表や海外でその力を発揮する未来を描く。いつか、日本女子サッカーを背負う存在に。世界の舞台で大きな風を巻き起こす、その日は必ずやってくる。
Photo by 土田有里子
フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。