
仙台のバンディエラ・富田晋伍選手。背番号と同じだけ積み上げた『17』年の日々【前編】
Interview
FOOTBALL
提供:ベガルタ仙台
17歳でプロデビューし、ベガルタ仙台一筋で今年35歳を迎えるMF富田晋伍選手。移籍が盛んに行われるサッカー界において、17年に渡りゴールドのユニフォームを着続ける彼は、サポーターの心に暖かな光を灯す『特別な存在』だ。2019年には、J1で300試合出場を達成。J2時代の試合も含めると出場試合は400を超える。
過去にベガルタ仙台に長く在籍した選手は「16年」の記録を持つ「ワンクラブマン」菅井直樹さん(2003~2018年引退。現・ベガルタ仙台地域連携課スタッフ)と梁勇基選手(2004~2019年在籍。現サガン鳥栖。仙台で彼のつけた「背番号10」は現在空き番号)の二人。彼らと共に長い時間を過ごし、チームの歴史を刻んできた富田選手の「結果へのこだわり」と家族と過ごすかけがえのない時間について聞いた。
―ベガルタ仙台でプロデビューし、在籍し続けて17年。歴代ナンバーワンの長さになりましたね。
「はい。長さだけは(笑)」
―菅井さんや梁勇基選手を超えた17年目ということになります。
「17年目というのは数字上だけのことで、このチームへの貢献度は二人には及ばないと思っています。だから数字だけではなくて、自分も中身のところでチームの結果に関われればと思います」
多くの仲間に信頼され、2019年にはJ1で300試合出場を達成した(提供:ベガルタ仙台)
―富田選手はこれまでも、そして現在も「結果」という言葉をとても重視していますね。
「個人としての結果というところで考えると、自分は特別何かができるプレーヤーでもないので、個人の結果=チームの結果だと思っています。その結果を出すために、何をしなければいけないのか考えてプレーしているつもりではあります。思っているだけではなく、本当にチームの結果として出さないと意味がない。それはずっと変わらず持ち続けています」
―今、富田選手はクラブの歴史を誰より長く知っている選手。ベガルタ仙台がどういうクラブであって欲しいですか。
「個人的には、僕はここで長くお世話になっているので、これからもそういう選手が出てきて、続いていって欲しいですね。もちろん、その選手が結果を出さなければいけないと思います」
―コロナ禍で応援スタイルに制限がある中で、スタジアムに集まるサポーターの皆さんの力や存在はどう感じますか?
「僕自身、ルヴァンカップの(第3節)アウェイ広島戦で初めて仙台のサポーターがいない状況を経験しました。改めて(サポーターの)声援や存在だけで試合の流れや勢いは変わってくるので、本当に大きいと思います」
―サポーターの加勢も大きく、かつてホームでは無敗の強さを誇ったベガルタ仙台。ホームでの勝利が遠いのは苦しいですね。
「去年からホームで勝てていないので(インタビューは4月26日に実施。その後、ベガルタ仙台は5月1日のJ1第12節柏レイソル戦で今季リーグ戦初勝利。ホームで518日ぶりの勝利を上げた)そこで自分たちが勝てないことには上の順位にも行けない。ずっと言い続けていますが、ホームでは勝たないといけない。ホームで勝ち続けられるようなチームになっていくのがベストだと思います」
―4月からの13連戦、5月もまだまだ試合が続いていきます。
「連戦が続いていく中で勝ち点を積み上げていかないと、より厳しくなってくると思います。ホームでは『勝ち点3』を取るということは成し遂げないといけない。連戦で、けが人などが出てしまった時に、なかなか出番がない選手のコンディションやモチベーションは大事です。みんなで一つになって戦えればと思います」
―コロナの影響で家の中での時間も長いと思いますが、ご家族、特に3人のお子さんたち(長女3年生、長男5歳、次男3歳)との関わりに変化はありましたか?
「男の子たちは、サッカーが好きなので、練習後にグラウンドに連れていったりしていますね。どこに出かけても人がいるし、家に閉じこもっていても退屈なので、グラウンドに行きます。みんなで楽しんでボールを蹴っていますね。(長男は)サッカースクールにも入れているのでサッカーが好きです」
―「将来はパパみたいになりたい」と言ったりしていませんか?
「言っていないですね(笑)『ゴールした?』と、試合の後に毎回聞かれます。『パパ、ゴールしない人だから』って教えているんですけどね(笑)」
―そうして家族と過ごす時間も大切ですね。
「そうですね。逆にこういう状況だから、外で遊ぶ機会が増えました。それが、子どもがサッカーに興味を持つ良い時間になりました。子供の相手も全然苦ではないですね」
―しっかりとお父さんしていますね。
「はい(笑)」
我慢の2020年を乗り越えて、富田選手からはサッカーができる喜びが溢れている
―改めて、これから進んでいくべき道。富田選手が『選手として示すべき姿』はどう考えていますか?
「やっぱり自分が試合に出てチームを勝たせるというのは、変わらない思いです。それをこの年齢でもまだまだできると思っているので、言葉だけではなく結果として出していきたいです」
ベガルタ仙台のピッチ中央では、いつも「黄金の心臓」が鼓動する。声を出し、手を叩き、自らのプレーでたくましく仲間を引っ張るバンディエラは、強い決意で結果を追い求める。様々な苦境を乗り越えてきた彼と共に、チームは浮上を目指す。その先にある、希望の光を信じて。
フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。