仙台スポーツ
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Interview

FOOTBALL

仙台のバンディエラ・富田晋伍選手。背番号と同じだけ積み上げた『17』年の日々【前編】

提供:ベガルタ仙台

 

 「バンディエラ」とは、イタリア語で「旗手」、「旗頭」という意味があり、サッカーにおいては長く一つのクラブに所属している選手を表す言葉だ。サッカーJ1ベガルタ仙台の27年の歴史の中で、選手として所属する史上最長「17年目」を迎えた選手がいる。背番号17番、MF富田晋伍選手だ。

 栃木県出身の富田選手は東京ヴェルディユースを経て、2005年にベガルタ仙台に入団。高卒ルーキーながら開幕戦スタメンに抜擢され、Jリーグデビューを果たした。2009年にはボランチとしてレギュラーに定着し、J1昇格に大きく貢献。2015年からは3年連続でキャプテンに抜擢され、ピッチの中心でチームをまとめ続けた。持ち味は鋭い読みから相手のパスコースを消す巧みな守備。169cmの小柄な体格ながら、屈強な相手に一歩も引かず、強気でボールを奪いきる姿に、手倉森誠監督はかつて「小さな巨人」と称賛を送った。

 チームの歴史を誰より見てきた富田選手に、今の思いを聞いた。(全二回)

 

―4月21日のルヴァンカップ第3節サンフレッチェ広島戦で、今季の公式戦初勝利をあげました。どんな勝利でしたか?

「開幕からリーグもルヴァンカップも勝てていませんでした。ルヴァンに出ているメンバーにはそれぞれの状況や感じていることもある中で、何とか一つ勝てたというのは、チームにとっても、選手一人一人にとっても大きいものでしたね」

―この試合で富田選手は今季初めてフル出場。前線とDFラインをつなぎ、勝利に貢献しました。

「勝てていない状況で、勝たないといけないプレッシャーはありました。僕たちはサブ組というか、リーグ戦に出られていない状況。そこで自分たちがリーグに出ている選手たちに、そしてチーム全体に、良い勢いをもたらして良い競争ができるようなゲームになればいいかなと個人的には思っていました。内容としてはまだまだ厳しいけれど、勝ちきるところや無失点で終えるということは必要なことだったので、それができたのは良かったです」

―これから結果を出していくために、突き詰めていかなければいけない点はどういうところですか。

「(J1第9節)横浜F・マリノス戦辺りから、試合の入り方に関してみんなで合わせるところ、そこは強く意識できるようになりました。それで相手を無失点に抑えることができた。横浜FC戦では失点をしましたけど、『チームとしての共通理解』が序盤に比べたらはっきりしてきました。そういうところを、もっと細かく、一人一人、チームとしてもまとまってやっていかなければいけないですね」

―選手として味わう「勝利の喜び」はどういうものですか。

「ここまで長く(勝てずに)苦しい期間というのもそうそうあるものではないし、一つ勝ったということをチームとして意味のあるものにしなければいけません。こういう連戦の中で、それぞれ置かれている状況は違いますが、チームのためにやっていかなければいけない。みんなで一試合一試合乗り越えていかなければ、と思いますね」

富田晋伍選手

提供:ベガルタ仙台

キャリアで初めての大けが。「自分を変える良い時間」とポジティブに。

―コロナ禍の去年も難しい年でした。7月に負った左膝の前十じん帯損傷の大けがで富田選手はキャリアで初めて試合出場ができなかった一年。どんなことを考えていましたか?

「そうですね……。コロナの影響もあったし、そういう中で初めてのことがたくさんありました。自分自身もあれだけ長い期間、戦線離脱するのも初めてでした。もちろん悔しさはありましたけど、外からチームを見られるというのは、一つ良かったことかなと思います。けがをしましたけど、そんなに焦りはなかったです。もう一度自分自身を変える良い時間だと思いました。ポジティブに捉えて、けしてネガティブにはならなかったです」

―外から見た中で感じたことはどんなことでしたか?

「去年もそうだったし、今年もまだそうなんですけど、『みんなで合わせる』ということができていないということですね。もっとはっきり、詰めていかなければいけないところがあるな、と。今、自分もやっていて、そういうところをまとめるというか、合わせていかなければいけないのかなと思っています」

―難しい一年を「自分自身を変える良い時間」にできましたか?

「いや……。まだ、そうは思えていないですね」

スタジアムの横断幕

スタンドには富田選手の復帰を願うサポーターからのメッセージが掲げられた

―去年けがで離脱した後、夏のルヴァンカップ・セレッソ大阪戦でサポーターがスタジアムに横断幕を出してくれました。「黄金の心臓 17 再び此処で鼓動せよ」あの横断幕はご覧になりましたか?

「その試合はスタジアムの上から見ているんですよ。ちょうど、僕と同じ目線の高さに横断幕を出してもらいました。サポーターの皆さんには感謝しかないですし、それをグラウンドで表現して恩返しができればと強く思いました。本当に嬉しかったですし、自分を『黄金の心臓』と表現してくれて、プレーで返さなきゃいけないなと思いました。それが、今年まだできていないので、そこは早くチームの力になれるようにと思っています」

富田晋伍選手 練習の様子(手倉森監督)

若手時代に指導を受けた手倉森監督と共に戦う

―今年は8年ぶりに手倉森誠監督が仙台に帰ってきました。一緒に戦うのは2013年以来ですが、率直にどんな思いですか。

「僕としては素直に嬉しかったですね、やっぱり。自分も誠さんの下で本当に成長させてもらったと思っていました。この年齢になってまた一緒にできるというのは、本当に嬉しかったです。誠さんのためにも、結果を出したいと強く思いました」

―8年は長い歳月ですね。

「でも、そんなに空いている感じはしないですね。なんでなんですかね……。(手倉森監督が長崎時代も)試合やキャンプで会ったり、誠さんがたまに仙台に来たときは食事に行かせてもらったりもしたので、久しぶりだけど久しぶりな感じはなかったです」

練習写真。関口選手と2ショット

関口選手(左)と力を合わせ、ベテランとしてチームを引っ張る存在に

―手倉森監督からは、8年という期間を経て、今どんなことを期待されていると感じますか?

「こういう状況だからこそ、僕や関さん(関口訓充選手)が、やっぱり何かを変えなきゃいけない。そういう存在でないといけないなと今思っているので、この状況を抜け出すためにも、自分たちがピッチでしっかりやっていかないといけないと思います」(続く)

村林いづみ
村林いづみ

フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。