仙台スポーツ
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Interview

FOOTBALL

憧れの舞台で掴み取った大きな自信。若きGK小畑裕馬選手が、仙台を熱く盛り上げる【前編】

提供:ベガルタ仙台

 2020シーズン、ルーキーイヤーに弱冠18歳でJリーグデビューを果たしたJ1ベガルタ仙台のゴールキーパー小畑裕馬選手。宮城県登米市で生まれ、仙台のアカデミーで成長してきた彼が挑むプロ2年目の覚悟とは?(全2回)

 

―新チームがスタートし、開幕を目指す宮崎県でのキャンプ。ここまでの手ごたえはいかがですか?

「あぁ、始まったなぁという感じはありますね。例年だと、一次キャンプは沖縄だったので気候が少し違いますけど、(一次キャンプの)西都市ではハードに練習できたので、かなり筋肉痛がありました。チームが新体制で始まって監督も変わりました。最初の印象が大事だと思ったので、声を出すことや当たり前のことを当たり前にするということを大事にしました。シュートを受ける感覚を徐々に戻していくというところも意識しました」

―ゴールキーパー(以下GK)のグループも選手が入れ替わり、がらりと雰囲気が変わったのでは?

「去年は(川浪)吾郎君(現・J1サンフレッチェ広島)という強烈な(キャラクターの)選手がいました。今年はそういう(チームを盛り上げる)役割の人がいないですよね。あの人にしかできない役割があった。でも、これから吾郎君がいない中でやっていかないといけない。そういうところでは、一人一人がみんなをサポートするということ。そして、いい競争ができたらなと思います」

―ストイシッチ選手は合流していませんが(※ポルトガル1部のポルティモネンセU-18から加入。日本政府による新型コロナウイルス感染症に関する新規入国制限措置を受け、入国可能になり次第来日)、今の段階では3人のGKでどんな風にコミュニケーションをとってトレーニングを進めていますか?

「メンバーが変わって年齢層が若くなりました。いい雰囲気でコミュニケーションが取れています。井岡(海都、仙台大学より加入)君も新しく入ってきて、なじみやすい雰囲気を作っています。石野(智顕)GKコーチも合わせて、みんないい関係性で練習できています」

 

同世代の活躍が大きな刺激に

―小畑選手ご自身は、昨年はJ1で7試合に出場しました。2020年はどんな一年でしたか?

「プロ1年目、いいスタートは切れましたが、そこから継続して試合に出るという力は自分にはなかった。そういうことを考えれば、自分はまだまだなんです。2年目の今年は、まずスタメンを勝ち取ること。クバ(ヤクブ スウォビイク選手の愛称)や井岡君、ストイシッチ選手と良い競争ができたらと思います」

小畑裕馬

提供:ベガルタ仙台

―去年のJ1第2節湘南戦は、18歳の衝撃のデビューでした。(チームは1-0で勝利)デビュー戦でしたがとても落ち着いていましたね。

「何といっても、(Jリーグは)憧れの舞台だったんです。自分の中でもかなり興奮していたんですけど。デビューというのは自分の人生で一度しかないので、緊張して何もできないよりは楽しんだ方がいいかなというイメージがありました。そういう気持ちで試合に入りました」

―試合後のヒーローインタビューも良い笑顔でした。そういう笑顔をホームでも見たかったですね。

「去年はホームで勝てなかったので……、悔しかったという思いはありましたね。ホームで何試合も出ることができたのに。そこで勝ちたかったというのが正直なところです」

―去年第5節札幌戦では、他の経験豊かなGKを抑えて、その節の「ベストセーブ」に選ばれるパフォーマンスもありました。

「試合を重ねるごとに、自信はついていきました。試合でいいパフォーマンスが発揮できたということは大きな自信です。これからにもつながっていくのかなと思います」

―Jリーグ全体を考えても、2020年は同世代の若いGKが多く活躍した年でした。

「若い選手が出てくるというのはJリーグにとってもサッカー界全体にとっても大きいことです。下からの突き上げがないと、上の世代のスタメンが当たり前になっているという環境は良くないと思いますから。自分たちがどんどん突き上げていかないといけないです。他のチームで若い選手が試合に出るということは、自分にとっても大きな刺激になっています。知っている選手や友達が試合に出ていたりすると、余計に刺激をもらいます。若い選手が出ることはいいことですね」

―特に刺激を受けた同世代の選手は誰ですか?

「去年だけでなく、一昨年からずっと試合に出ているサガン鳥栖の松岡大起には常に刺激をもらっています。フォーメーションやポジションが変わることがあっても、いろんなところでプレーしていたので。(世代別)代表で一緒になって、そこから仲良くなりました」

―同世代のGKではいかがですか?

「同じ学年では試合に出ている人がまだそんなにいないんですよ。近い年齢で言うと鹿島アントラーズの沖(悠哉)君や、湘南ベルマーレの谷晃生君。彼らは若いながらシュートもどんどん止めています。止めることによって、試合に勝ち、チームに勝ち点3をもたらす選手。刺激を受けますね」

 

憧れの関憲太郎選手に追いつき、追い越したい

―石野GKコーチから求められていることはどんなことですか?

「今年は始まったばかりでシュートやクロスなど感覚を取り戻している段階(取材は2月5日)。そういうところを取り戻すことと、当たり前のキャッチやダイビングした時のキャッチというのはまだ、ポロポロこぼしているところがあります。技術をもっと磨いていかないといけないという話は常にしています」

小畑裕馬

―GKとして目指している理想の姿は?

「やっぱり、去年まで一緒にやっていた(関)憲太郎さん(現・J2レノファ山口)です。身長も僕とそんなに変わらず(関選手は178cm、小畑選手は183cm)、GKとしても大きい方ではない。でも、キャッチ一つ見ても、細かいところの質が全然違うと練習する度に毎回思っていました。憲太郎さんを目指し、超えたいなと思います」

―去年のGKのグループは特別でしたか?

「途中で(イ)ユノ君(現・韓国1部大邱FC)がガンバ大阪に移籍しました。いろんなことがありましたけど、みんなで力を合わせて最後までやってきたという感覚がありました。良いGKチームだったと思います」

小畑裕馬

オンラインインタビューに答える小畑裕馬選手(提供:ベガルタ仙台)

―GKというポジションで試合に出られるのは一人。ライバルでありながら、力を合わせてトレーニングし「その一人」を送り出す。簡単ではないと思うのですが、選手としてはどのように感じていますか?

「それぞれ立ち位置があると思います。GKとして試合に出る人はゴールを守ってチームを勝たせるという役割がある。サブに入った時にはその選手を支える、チームを鼓舞するという役割もあると思います。ベンチから外れたとしてもチームの一員としてできることはあると思うので、『試合に出られないから今日はいいや……』というわけでもないですから。同じチームで、勝ちたいという気持ちを一人一人が強く持っている。その中で役割を果たすことが重要だと思います。去年は、僕は上手く果たせなかった部分があったと思うので、今年はもっとその役割を果たせればと思います」

―これまでの練習でも小畑選手やクバ選手の良いプレーを一番に喜ぶのが、やはり川浪選手、関選手などGKの仲間だったりします。そんな様子を見ていると、お互いに分かり合えているなぁと感じました。

「そうですね。同じポジションだから、自分がプレーしてうまく行ったかのように喜んでくれるんですよね。今、クバのプレーを見ていても勉強になりますし……。そういう気持ちはありますね」(続く)

村林いづみ
村林いづみ

フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。