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Interview
BASKETBALL
3×3のプロ選手として、バスケットボールの指導者として。阿部翔太選手 インタビュー

大学を卒業し仙台の銀行に就職。しかしプロへの夢を諦めきれず、仙台89ERSの練習生を経てプロ契約を掴んだ阿部翔太選手。チームを退団後は2021年に開催される東京オリンピックにて正式種目となった3×3のプロ選手としてSENDAI AIRJOKER.EXEで活躍すると同時に、地元石巻で子どもたちにバスケの楽しさを教えるスクールを立ち上げました。
怪我や環境にも負けず、前を見据えて進み続ける阿部翔太選手。今までのバスケット生活で培った思いと、今後の目標についてお話を伺いました。
ー2020年はどんな年でしたか。
「2019年の12月に仙台89ERSのスターティングメンバ―として選ばれたのですが、1月末の福島戦で剥離骨折をしました。3月のリーグ戦に間に合うようにリハビリをしていたんですが、復帰するかしないかのところで、新型コロナウイルスの影響によりB.LEAGUE 2019-20シーズンが中止になってしまって。スタメンに選ばれたのは個人的にもいい感触ではあったので、こういう形になって悔しい部分もありましたね」
仙台89ERSの経験を経て、2020年1月から東北初の3×3プロチーム『SENDAI AIRJOKER.EXE』を運営する株式会社日本エコライフで働くことになった阿部さん。現在は会社勤めをしながら3×3のプロ選手として活躍しています。
ー5人制のバスケットと3×3の違いについて、阿部さんの印象を教えてください。
「3×3は身体のぶつかり合いが激しいので、最初は『格闘技』のイメージに近いなと思いました。
5人制のバスケに比べてシステムチックというか、ディフェンスひとつにしても『こう動いたらこう動く』っていう決まりがあるんです。専門的なバスケット用語を今までしっかり教わってこなかったので、本当に一から、って感じでしたね。
小さい選手でもある程度インサイドは守れないと厳しいし、大きい選手もドリブルをつけたり走れたりできた方がいい。3×3はより個人のプレーの幅が広ければ広いほど有利だと思います。
あとは試合中は常に走っているので、体力的に5人制より3×3の方が疲れるかもしれませんね。100mダッシュを何本もやってるような……。1日に4試合する日もあります。
いい意味でカジュアルに始められるという魅力もありますし、5人制とはまた別の面白さがあります。切替が早いので3×3の方が見ていて面白いって言う方もいますね」
ーSENDAI AIRJOKER.EXEさんと出会ったきっかけはなんですか。
「2018年、もともとSENDAI AIRJOKER.EXEに所属していた宮坂 侑選手の紹介で、仙台89ERSの練習生になったのと同時期に加入しました。この宮坂がすごくて。身長はあまり大きくはないんですが、スピードがある。日本でもトップクラスだと思っています。そんな宮坂が基点となって、スピーディな試合運びができるのがチームの特長かなと思います」
ー普段の練習はどんな感じですか?
「チームメンバーは全員宮城に住んでいるわけではないので、基本的に個人練習が中心ですね。大会の前には集まって練習することもあるんですが、メンバーと一緒に練習できるのは2ヶ月に1回程度。
やっぱりまだマイナーなスポーツなので、3×3だけを練習するっていう選手は宮城にはまずいなくて。自分は5人制のクラブチームにも所属しているので、そこでコンディションを上げています」
2020年10月に行われた『3×3 JAPAN TOUR 2020 EXTREME Limited』にて準決勝に進出するも、結果は惜しくもベスト4。チーム目標は「もちろん優勝」というSENDAI AIRJOKER.EXEの活躍に、今後も目が離せません。
2020年9月には地元である石巻でバスケットスクールを立ち上げた阿部さん。ご自身の今までの経験や感じたことを生かしながら、子どもたちと日々真摯に向き合い続けています。
ー新たに立ち上げたバスケットスクールについて教えてください。
「現在は週に1回、石巻中学校の体育館を借りて教えています。1回のスクールは2時間。小学6年生から中学3年生までを対象としていますが、小学5年生から高校2年生までは参加可能です。今もいろんな年齢の子が参加しています」
―プロ選手から指導してもらえるって、学生にとってもすごくいい機会ですよね。スクールではどんなことを教えているんでしょうか。
「主にバスケットの基礎的なことですね。ミートやステップ、ピボット、ドリブルをつく姿勢や1on1の流れなど。
子供たちの中にはミニバスをやっている子やバスケ部の子もいるんですが、そういった基礎的なことができていない子が多いんです。スクールで教えても次の週には戻っていて、その場で聞いただけで終わっちゃっているというか……。僕がもっと意識的に持っていってあげられたらと思うんですが、日々勉強ですね。
あとは子どもたちの状況を見て、何が足りないかを判断しています」
―バスケットが上手くなるためにできることはありますか?
「上手い人のプレイを真似てみるといいと思います。プロのプレイヤーじゃなくても、同じチームで自分よりちょっと上手い人とか。できなくてもやろうとする姿勢が大事ですよね。僕自身もそれが一番伸びたかなと思うので」
―バスケットを続けている中で、ご自身が大きく成長したと思ったのはどんなタイミングですか。
「学生時代の経験が大きかったですね。1つめは東北学院高校に入学したこと。兄が学院高校に通っていました。1つ上の学年の先輩達が強いという話を聞いて、ぜひ入りたいと思ったんです。中学でのバスケットとは全然レベルが違くて、衝撃的でしたね。
2つめは2年生でウィンターカップに出場したこと。3回戦目で強豪校と試合をした時、僕ひとりで30点くらい取れたんです。それがとても自信に繋がりました。
あとは、大学4年生の時にポジションが変わったことです。最終学年で後悔したくないって思いもありました。ひとつ下に身長が小さい選手がいて、その子と練習することが多くて。負けず嫌いなんで、小さい選手にスピードで負けたくない! と思って必死で練習しましたね」
ーバスケット選手として、いつまで前線で続けたいですか?
「あまり考えたことはないんですが、やれるだけはやりたいなと。コロナの時期に身体を動かせなくて、もういいかなと思ったこともあったんですが……。いざ動いてみると楽しくて、やっぱりバスケを続けたいなと思いました。あと太りたくないっていうのもありますね(笑)」
ーご自身の今後の目標を教えてください。
「まずは3×3で名前を残すこと。オリンピックの代表選手も目指しています。今は結果を出すことしか考えていません。
石巻のスクールも続けていきます。始めたばかりなので僕自身も勉強しながら、今まで教わってきたこと、感じてきたことを伝えていきたいです」
Photo by 土田有里子