仙台スポーツ
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Interview

FOOTBALL

2年目のWEリーグで『台風の目』に。本能のストライカー矢形海優は、ゴールも勝利も渇望する【前編】

開幕3連勝を飾るマイナビ仙台レディース。その歓喜の輪の中心には、FW矢形海優選手がいます。積極的な仕掛けで相手ゴールに迫り、チャンスを演出。自らも豪快にゴールネットを揺らします。ピッチで誰よりも目立つ緑や金色の髪、その姿にサポーターも熱い視線を送ります。仙台で2季目を迎え、好調の波に乗る矢形選手に今シーズンに懸ける思いを伺いました。(11月25日現在)(前後編)

 

―2年目のWEリーグが開幕しています。3試合を終えて3連勝。ご自身も開幕から2試合連続ゴールです。絶好調と言えるのではないですか?

「いや、まだまだ絶好調とは言えないです。もっと得点を挙げていかなければいけないかなと思います」

―今季はWEリーグカップでも、チームのファーストゴールは矢形選手が決めましたね。今年は点が取れているという実感があるのでは?

「足りないですね。自分の中では、『毎試合ゴールを取る』というのが目標です。今、チームは3連勝していますが、結構ギリギリじゃないですか。ギリギリで勝っているし、ゴール前まで行くことができていても、相手のシュート数で下回る試合もあります。もっとシュートを打っていかないといけないかなと思います」

―昨年と比べて、ゴールへの意識はどう変化していますか?

「チーム全体としてゴールという意識は、去年より強く持っています。あとは前線からのプレスで前からボールを奪い、シュートで終わるということは意識しています。でも、まだまだ足りないし、シュートを打ったとしても精度が足りず枠外になってしまうことも多いので、チャンスを逃さず、決め切ることが大事だと思います」

マイナビ仙台レディース 矢形海優選手

今季の目標は二桁ゴール。開幕から積み重ねて、必ずそこに到達したい

 

―リーグ戦は開幕から2試合連続ゴール。開幕のちふれASエルフェン埼玉(EL埼玉)戦では、高平美憂選手からのクロスに、相手DFを引き連れながらヘディングシュートを決めました。

「クロスはずっと狙っていました。(高平)美憂がフリーでボールを持ったら、絶対クロスを上げてくれるだろうと思って走りこみました。そうしたら、ちょうど目の前にボールが来て、取りあえず『頭で触ったろ』と思って飛びこみました。実は飛び込んだ後にボールを見ていなくて……。ゴールが入ったかは、自分ではわからなかったんです。ヘディングして、転んで起き上がった瞬間に、目の前でみんなが喜んでいたので、ゴールが入ったと実感しました」

―実はヘディングだとボールの行方は追いにくいんですよね。

「そうなんです。でも、とりあえず(頭に)当てようと思っていました。上手く当たってコースに行ってくれたと思います」

―WEリーグカップ、EL埼玉戦でのゴールもヘディングでしたね。矢形選手のヘディングの強さ、上手さを感じます。

「タイミングが良いんですかね。クロスを上げる人のタイミングを見計らって、ゴール前に走りこんでいます。そこにちょうど良いボールが来るので、自分は当てるだけ、という感じです。あまり自分では意識していないのですが、ゴール前に飛び込もうといつも考えています」

マイナビ仙台レディース 矢形海優選手

ゴールへの嗅覚は鋭い。優れた感覚の持ち主は更にテクニックも磨いている

 

―第2節AC長野パルセイロ・レディース戦ではゴール前に走りこんで右足でシュート。飛び出しのタイミングが鋭かったです。

「ボランチの選手や逆サイドの選手、誰かがフリーでボールを持ったら、自分のサイドはフリーになるのでそのタイミングで走り出しています。ボールが来ない時もあるんですけど、あの時は『来るぞ』と思って走っていたら(中島)依美さんが良いボールを出してくれました。最初は、ボールと自分の距離が遠くて、どうしようと思いながら走っていました。でもゴール前で思い切り足を振ったら、シュートが良いところに行ってくれました。あのシュートは自分でもびっくりのゴールでした」

―角度のないところからのシュートでしたね。

「目の前に全然コースはなかったです」

―シュート技術も昨季から各段に上がっているのではないですか?

「シュート技術が上がっているのかはわからないです。練習の時の紅白戦では点を決められないんですよ。自主練のシュート練習でも外してばかりで、あまり決めることができていないです。でも試合になったらゴールを決められるんです。それから、試合前のウォーミングアップでシュート練習の時に、一本も入らない日は、試合で決めているんです。それも何か意味があるのかなと、自分では思っていて……(笑)」

―興味深いジンクスですね。では、試合前のシュート練習ではわざと外す……、と言う訳にもいかないですよね(笑)

「いや、本当は決めたいんです。いつも練習からゴールは狙っているんですけど、入らないんですよ。きっとシュート練習で入らない時は、肩に力が入っているんです。本番では力が程よく抜けているのかなって思います」

―本番に強いタイプなんですね。

「そうなのかもしれないですね。わからないですけど」

―ご自身としては「今、上手くいっているな」というような好調さのバローメーターはどこにありますか?

「1対1の勝負で負けない時とか、パスを多くつないでシュートまでしっかり行けた時は、自分はいいプレーができているなと思います」

マイナビ仙台レディース 矢形海優選手

チャンスが来るまで諦めない。どんな時もポジティブに自分らしくゴールを狙う

 

―サイドから駆け上がり、どんなに走っても走っても、ボールが出てこないこともありますよね。それでも信じて入っていくということは、勇気がいることなのではないかと思います。

「どんな時も、チャンスがあったら自分から走る。来なかったら来なかったで、仕方がない『ボールが来なかったからもう走らない』ということで終わってしまったら、次のチャンスの時に、『行っておけば良かった』と後悔する時があるかもしれません。自分は常に、ゴール前には走っていこうかなと意識しています」

―仙台に加入した時の会見で、「お手本は横浜F・マリノスの仲川輝人選手」と話していましたね。

「はい、今もずっと仲川選手は憧れです。試合前には仲川選手のプレー集を見てイメージしています」

―大きく影響を受けている部分はどういったところですか?

「動き出しやボールを持った時に、自分から仕掛けて最後はシュートで終わるか、おしゃれなスルーパスをしているので、そこは真似したいといつも思っています」

―では、矢形選手から「おしゃれなスルーパス」が出たら、それは仲川選手を参考にしたということですね。

「はい。リーグ開幕戦の(中島)依美さんのゴールへのアシストは、仲川選手のプレーのイメージなんです。相手選手をたくさん引きつけて、最後は味方にパスをする。仲川選手はそういうプレーが上手いんです。その時はそういうプレーができたのかなって思いました」

―2022シーズン、J1で横浜F・マリノスは優勝しました。嬉しかったのでは?

「はい。めっちゃ嬉しかったです!」

マイナビ仙台レディース 矢形海優選手

ひたむきに日々の練習に向かう。厳しさの中にも楽しさを見出しながら

 

―今季のチームの雰囲気はいかがですか?

「去年と雰囲気は変わりました。みんな練習からめちゃめちゃ真剣です。でも、たまには笑い合ったりして、いい雰囲気です。コミュニケーションも一人一人としっかり取れているのかなと思います。エーム形式になったら松田さん(岳夫監督)はいつも『勝負にこだわれ』と言っているので、ピリッとする時もあるんです。でも、『サッカーは楽しめ』とも言われます。自分はそんなにピリッとするタイプではないので、楽しくできているのかなって思います」

―楽しくサッカーができている時。どういうことに、その楽しさを感じていますか?

「パスがつながった時ですね。そして味方がミスをしても『次、次!』とプラスになるような声がけをしている時は楽しくできています。そういう時は、チームの雰囲気も本当に良いと思います」(後編へ)

 

Photo by 土田有里子

村林いづみ
村林いづみ

フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。