
アカデミーの一番星に。強く自分を持つ猪瀨結子は“クラブの顔”を目指す【前編】
Interview
FOOTBALL
モンテネグロ代表のFWスラジャナ・ブラトヴィッチ選手は、仙台の仲間たちから「スラッキー」という愛称で呼ばれ、親しまれています。少しシャイで控えめな性格。しかし胸の奥には「チームのため、母国のサッカーのため」という熱い思いを秘めています。女子サッカーが絶大な人気を誇るスペインリーグでの経験やWEリーグへの挑戦について伺いました。
―ハンガリーリーグでの“2年連続得点王”という成果を手に、スペインリーグでも活躍しましたね。
「スペインには4年間いました。最初の1年がアルバセテ財団というチーム。そしてラ―ジョ・バジェカーノに3年です」
―スペインでプレーした4年間はどのような期間でしたか?
「私のキャリアにとって重要な4年間でした。モンテネグロという国は、どんなに頑張っても国の大きさも女子サッカーの歴史においても、スペインの方が上です。そのサッカーにおいて優れたスペインという国でプレーできました。スペインリーグは本当にプロフェッショナルの世界だったので、自分のキャリアの中でも大きな期間です」
スペインで深めた自信。サッカー選手として必要なものを伸ばすことができた
―スペインはサッカーのレベルの高さもそうですし、近年、女子の試合の観客数もかなり大きく伸びているんですよね。
「そうです。ここ2年くらいはFCバルセロナ(・フェメニ、女子チーム)の入場者数が伸びていて、今年は9万人を超える記録(UEFA女子チャンピオンズリーグ、レアル・マドリード戦。公式発表された入場者数は9万1533人)を出しました」
―ものすごい記録ですよね。スペインリーグでプレーする中で特に伸ばすことができたところは?
「個人としてはテクニックの部分も伸びたと思います。戦術というところについても、スペインでプレーをしたことで、サッカーの見方が大きく成長したと思います。スペインのサッカーはパスをつないで相手を崩し、優れたサッカーを常に目指しています。そういうところでプレーできたのは良い経験でした」
日本でのプレーはキャリアの中で大きな一歩。自分らしく歩む
―ヨーロッパで活躍してきた中で、今年は来日を決意。創設2年目のWEリーグでプレーするという選択をしました。日本に来ることを決めたきっかけはどういうことでしたか?
「日本からのオファーもありましたが、実はイタリア、ノルウェー、スペインのチームからもオファーが届きました。簡単な決断ではなかったです。でも最初に、友人や母に相談したのですが、彼女たちはみんな、日本が大好きだったんです。日本という国に良い印象を持っていたこともあって、『日本がいいんじゃない?』と勧められました。その日は少し考え、次の日に『日本に行く』と母に告げました。日本のリーグでプレーすることは私のキャリアにとって、大きな一歩になると感じたので決断しました。日本のリーグのことももっと知りたかったし、新しいことにチャレンジをしたいと思ったんです。(ヨーロッパとは)全く異なるカルチャーもありますし、そういうことを経験したかったんです」
―WEリーグや日本での生活はスラッキーにとって、大きな冒険ですね。
「そうですね!」
―実際に日本に来て、既にリーグ戦の前哨戦となるWEリーグカップでは4試合出場しています。WEリーグの印象はいかがですか?
「日本代表の試合は見たことがあったのですが、WEリーグは見たことがありませんでした。実際にいくつかのチームと対戦してみて、すごくいいサッカーをするなという印象を持ちました」
―一概には言えないかもしれないですが、世界の中でのWEリーグのレベルというところではいかがでしょう?
「日本に来る前は特にWEリーグのレベルはわからなかったので、イメージをあまり持っていなかったのですが、実際に来てみていい印象ですね。リーグ全体が成長の過程にあると思います。成長を見込めるサッカーをしているんじゃないかと思います。パスや技術的な部分で、日本の選手は本当に上手ですね」
WEリーグカップではヘディングで得点を決めた。リーグ戦でもユアスタでのゴール量産に期待がかかる(提供:マイナビ仙台レディース)
―カップ戦を終えて、リーグに向けてはどういうところを高めたいですか?
「私が日本に来た理由は、大きなことを成し遂げるためです。チームを助けることが第一優先だと思っています。個人としては得点を取りたい。絶対に取りたいし、勝ちたい。でも、それは“チームのために”という思いです」
―国を背負う代表のキャプテンでもありますし、「チームのために」という献身的な姿勢からブラトヴィッチ選手の人間性が見えますね。
「そうなんですかね。マイナビは昨年5位だったので、今季はそれより絶対上に行きたいです。3位なのか、1位なのか……。常に満足することはないので、もっともっと上に行きたいですね。そのために私はチームメートを助けたいと思っています」
日本での新しい挑戦。毎日いろいろなワクワクを経験している
―ブラトヴィッチ選手がたくさんゴールを決めて、活躍すれば優勝できるんじゃないですか?
「そうだといいですね(笑)」
―ブラトヴィッチ選手のような存在がいるということは、WEリーグ自体の成長にもつながっていくのではないでしょうか?
「そうだといいなと思います」
―真面目だし、謙虚ですね。
「真面目なんですけど、ユーモアもありますよ(笑)私はどんなことも逃したくないんです。だからやるべきことに集中するようにしています。そういうところが、真面目に見えるのかもしれないですね」
―たくさんのお話、素敵なエピソードもありがとうございました。
「こちらこそ。私の人生やキャリアに興味を持ってくれてありがとうございます!」
最後まで謙虚な姿勢でインタビューに答えてくれたブラトヴィッチ選手。インタビューは通訳を介し、流暢なスペイン語で行われました。2年目を迎えたマイナビ仙台レディースの一員として、WEリーグに大きな「スラッキー旋風」を巻き起こして欲しいですね。彼女の日本での挑戦が実り多いものとなりますように。
Photo by 土田有里子
フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。