
アカデミーの一番星に。強く自分を持つ猪瀨結子は“クラブの顔”を目指す【前編】
Interview
FOOTBALL
WEリーグ2シーズン目の開幕を前にして、マイナビ仙台レディースに強力な仲間が加わりました。モンテネグロ代表のFWスラジャナ・ブラトヴィッチ選手です。両足で強力なシュートを放つ174cmの長身ストライカーは、前線でチームの攻撃をけん引していきます。ヨーロッパを飛び出し、アジアでの新しい挑戦。今の思いや彼女のルーツについて教えてもらいました。
―仙台での生活には慣れましたか?
「もう慣れました。日本に来てから2ヶ月くらい経っているので、生活も落ち着きましたね」
―お気に入りの場所は見つかりましたか?
「はい。お気に入りの場所は、スタジアム近くの七北田公園(仙台市泉区)です。私は歩くのが好きなので、時間がある時は七北田公園を散歩しています。自然が多いですよね。川も近くにあるし、音楽を聴きながらよく歩いています。天気がいい時は本当に気持ちがいいですね」
―何をしている時が一番楽しいですか?
「時差があって、なかなか時間が合わないのですが、家族や友達と気兼ねなく話をしている時が今は一番楽しいです」
新しい環境で、日本の文化にも積極的に挑戦する
―ブラトヴィッチ選手はモンテネグロのご出身ですね。モンテネグロはどんな国かご紹介いただけますか?
「私はモンテネグロの首都、ポルグリッツァの出身です。とっても小さな街で、国自体も大きくはないんですが、海辺がとてもきれいで、自然が美しいところです。旅行をするなら、特に夏がお勧めです。とても美しい景色が見られると思います。海だけではなく、山もあるので、いろいろなことができると思います」
―いつか案内して欲しいです! その自然豊かな環境で生まれて、サッカーを始めたのは何歳の時でしたか?
「ボールを蹴り始めたのは5~6歳の時なんですが、その時はただ自分で、街角でボールを蹴っていました。サッカースクールに入ることができるのは8歳からだったので、8歳になるのが本当に待ち遠しかったです」
2歳の時。何よりもサッカーボールが好きな女の子だった(ご本人提供)
―ボールを蹴って遊んでいたということですが、サッカーが身近にある環境でしたか?
「子どもの頃はバービー人形よりも、近くにサッカーボールがありました。母が若い頃に地元でサッカーをやっていたことがあるんです。サッカーが好きなのはその影響もあるかもしれないんですが、私以外の兄弟は誰もサッカーをやっていません。周りの影響というより、生まれた時から“私の血はサッカーをやるためにデザインされていたんだ”と思いますね」
―ご兄弟は、他のスポーツをされていたのですか?
「兄はバレーボールをしていて、弟はバスケットボールです。二人とも身長は2mあります」
―大きいですね。モンテネグロでは身長が高い方が多いんですね。
「はい。モンテネグロは、ヨーロッパでは2番目に平均身長が高い国です」
―現在FWでプレーしていますが、子供の頃のポジションは?
「ずっとFWですね。私はモンテネグロで初めてサッカー協会に登録された女子選手でした。小さい時は男の子たちと一緒にサッカーをしていました。パスが来なかったりしたら怒るし、負けた時は家に帰って泣く子どもでした。男の子たちとはよく戦っていました。押し合い、言葉だけではなく体でもバトルしていました。自分だけが女の子だったので、みんなの上に立ちたいという気持ちがありました」
男の子に混じってサッカーをしていた。やられたらやり返す強さを持っていた。(ブラトヴィッチ選手は左)(ご本人提供)
―男子の中で、1人だけ女子という環境は大変なことも多かったのではないですか?
「唯一の女子選手だったということもあって、メディアの注目もありました。最初、私だけ特別扱いされる時期があって、それには違和感がありました。日本でもそうだったかもしれませんが、『モンテネグロでもサッカーは男の子のスポーツ』というイメージがあったので、特別に見られることは感じていました」
―女子だけのチームでプレーできるようになったのは何歳からでしたか?
「12歳の時に素晴らしい指導者に巡り合えました。そのコーチが、私がもう男の子たちとプレーしなくていいように、女子のチームを作ってくれたんです。それが女の子のチームでプレーするスタートでした。そこで大きく環境が変わりましたね。私個人としても、女の子たちとサッカーがしたいという思いがありました」
モンテネグロを代表するキャプテン。母国を背負う立場は“誇り”
―これまで、ヨーロッパで長くプレーして来られました。母国のモンテネグロやセルビア、ハンガリーのチームに所属していますが、プロサッカー選手として契約したのはいつからですか?
「ハンガリーのフェレンツヴァ―ロスでプレーした時からですね」
―そのハンガリーリーグでは2015年、2016年と得点王に輝いています。
「ハンガリーも、男子チームが女子チームを保有していて、男子が使っているのと同じグラウンドで練習をしていました。環境は整っていましたね。その中で得点王という結果を残すことができました」
―ブラトヴィッチ選手は、モンテネグロ代表選手としても活躍していますね。
「そうですね。キャプテンをしています。代表でプレーをするということは私にとって“誇り”です。今はキャプテンとしてプレーしている中で、若い選手たちの見本になることも意識しています。いろいろな国でプレーした経験を、モンテネグロのサッカーに還元したいという思いもあるので、代表選手であることは私にとっては誇りなんです」(後編へ)
Photo by 土田有里子
フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。