
女子サッカー選手が子どもたちの憧れの存在になるために。WEリーグ元年を駆け抜けた隅田凜の抱く希望【前編】
Interview
FOOTBALL
今年2月、マイナビ仙台レディースのアカデミーから初めてトップチームに昇格した猪瀨結子選手。3月に高校を卒業し、ユースの1期生として多くの期待を背に、プロサッカー選手としての日々を歩んでいます。WEリーグの新しいシーズンに挑む19歳の今の思いを聞きました。(前後編)
―高校卒業から約半年、マイナビ仙台レディースユースからトップ昇格して、新しい生活には慣れましたか?
「はい。一人暮らしも始まって、料理もできるようになりました」
―高校時代は寮生活を送っていましたよね。料理はどういうメニューを作っていますか?
「ハンバーグが得意です。煮込みハンバーグをよく作るんですが、時間をかけて作ります(笑)」
―じっくり煮込んでいるんですね。オフの日はどんなことをしていますか?
「和菓子屋さんを探して出かけたりします。和菓子が好きなんです。水ようかんとか、最中も好きです。花の形をした桔梗とか、生菓子も可愛いなって思います。茶道はやっていないですが、お茶は好きです」
―好きなものに触れる時間は大切ですよね。学生とプロで生活パターンは大きく変わったのではないですか?
「そうですね。今はサッカーにかけられる時間が増えたので、よりサッカーを学ぶということを意識しています。一緒のプレーする選手のレベルも上がって、できるようにならなければいけないことも増えました。でもその分、レベルアップできていると実感しています」
寮生活から一人暮らしに。生活パターンも大きく変わった
―トップの一員としてサッカーをする中で、周りの選手から受ける影響はいかがですか?
「テレビで、よく中島(依美)選手を見ていたんですけど、実際にその選手と一緒にサッカーをやっているということが不思議なんです。そういうトップの選手たちに憧れてきて、今一緒にやれているので、本当にいい経験をしているなと思います」
―マイナビ仙台レディースユースは、猪瀨選手が高校生になるタイミングで創設されたので、アカデミーでは「1期生」という立場でしたね。そこではずっと一番上の学年でしたが、マイナビトップチームに入ると一番年下。周りがみんな年上という環境はなかなか難しくはないですか?
「今までは後輩たちを引っ張っていく側だったんですが、今は頼れる先輩方ばかりなので、頼りきっているんです(笑)なので、気楽にやらせてもらっています!上の選手がたくさんいて嬉しかったです」
―そのあたりの切り替えはさすがですね。一緒にプレーする上で「この人すごい!」という選手はいましたか?
「私は良くサイドバック(SB)でプレーするんですが、(市瀬)菜々さんがセンターバックで横にいる時は、私にも細かく的確な指示を出してくれます。自分のプレーをしながら、他の人の動きも見れているのがすごいと思います。衝撃を受けました」
トレーニングからたくさんのことを吸収する。一瞬たりとも無駄にはできない
―松田監督からはどのようなことを求められていますか?
「SBでプレーすることが多いんですが、攻撃的なSBとして、ボールを簡単に出して、高い位置を取って前でプレーする。どんどん仕掛けていくということを求められています。積極的に仕掛けていくところはストロングポイントなので、もっとそういうところを出していけたらと思います」
―マイナビのSBは攻撃的なプレーを求められると考えると、やり甲斐も多いのではないですか?
「そうですね。SBは守備も大事ですが、SBで攻撃にどれだけ関わっていけるかというところも、チームの攻撃を支えていく上では大事だと思います。攻撃参加した後にやれることも、もっと増やしていかないといけないですね」
―猪瀨選手が持っているドリブルのスピードや対人の強さも、このポジションでは存分に生かされますね。実戦の中でも、通用すると思ったのではないですか?
「実際に、デビュー戦ともう一試合を含めて、1対1のところは、思ったより通用したと感じたところでもありました。守備の1対1もそうですが、もっとドリブルで仕掛けて、クロスやシュートで終わるような形を増やして行けるとも思いましたし、今やっている以上のことを、自分に求めていかなければいけないと思いました」
―松田監督に以前お話を伺った時に、猪瀨選手の特徴として、人と対した時に体の強さや使い方の上手さに加え、心の強さというところにも言及していました。
「おぉ(笑)特に、守備の時はボールに対して、恐れずにガツンと行けるところが、そういわれているところなのかな(笑)」
ルーキー、堂々のWEリーグデビュー。家族や友人、恩人たちがその瞬間を見守った(提供:マイナビ仙台レディース)
―デビュー戦の話が出ましたが、2021-22シーズンの第16節アルビレックス新潟レディース戦で初先発フル出場。この日のことは、どう記憶していますか?
「メンバー入りすること自体も初めてでした。移動のバスやロッカールームの雰囲気も初めて経験しました。前日のメンバーに入るかもというタイミングでは、めちゃめちゃ緊張していたんですが、実際にピッチに立ったら、『もうやるしかない』と思いました。試合ではそんなに緊張しなかったですね。自分のプレーを出せるように頑張ろうという気持ちで臨むことができました」
―この試合は、マイナビのホームゲームとしては初めての東京開催の試合でした。ご家族も見に来てくれましたか?
「そうですね。家族も関東に住んでいますし、友達も結構来てくれて嬉しかったです」
多くの方に自分のプレーを見てもらいたい。2シーズン目も挑戦は続く
―次の試合となったユアスタでのちふれASエルフェン埼玉戦も先発出場します。残念ながらけがで途中交代となってしまいましたが……。
「高校在籍の3年間、ずっとこのピッチに立ちたいなと思って見てきたスタジアムでした。この日も、後輩のジュニアユース、ユースの選手たちも試合運営で携わってくれていました。トップチームに昇格すると決まって会見をした時に、『ユアスタのサポーターの皆さんに速くプレーを見て頂けるように』ということを話していたので、それがやっと実現できると思うとすごく嬉しかったです。緊張感もありましたが、楽しめたかなと思います」
―試合に出たことで感じられたことはどういったことでしたか?
「今までのカテゴリーとは違った、勝つ、負けるの重さです。それはプロだなって思いました。その重さは結構違うものがありました」(後編へ)
Photo by 土田有里子
フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。