仙台スポーツ
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Interview

FOOTBALL

仙台での活躍は、必然。子どもの頃に『シュートで生きていく』と決めた中島元彦【後編】

(提供:ベガルタ仙台)

 

威力のあるキックでスタジアムを沸かせる中島元彦選手。ベガルタ仙台でもフリーキックのキッカーも務め、ダイナミックな技ありゴールを決めています。自信を持って足を振る、その自信の裏には少年のころからのたゆまぬ努力と大きな決意がありました。仙台でサポーターからもマスコットからも愛される中島選手に、仙台で過ごす今の思いを聞きました。(後編)

 

―フリーキックの時は、遠藤康選手と中島選手がボールの前に立つとワクワクします。遠藤選手とは、蹴る前にどんな話をしていますか?

「試合の流れを見て、相手がこうなっているから、『そっちが蹴る?』みたいな話です。自分が決めたい時は『やっさん、蹴らして!』『なら良いよ』みたいな会話です。やっさんの方がキックの精度は高いので『これは俺がいくよ』という話をしています」

―試合では先輩たちと堂々と渡り合っている感じがします。ピッチに立ったら年齢は関係ありませんが、大先輩に対してでも自分の意見はちゃんと主張できますね。

「サッカー選手として、それができなかったらだめでしょ」

―それはそうですね。ちなみに仙台に来て、遠藤選手と一緒にプレーできているということはどのような経験ですか?

「実は最初、仙台に来る時は誰がいるのか、まったく知らなかったんですよ。来てみたら、『(遠藤選手)おるー!』って思いました。仙台には梁(勇基)さんがいるということしか知らなかったです」

―梁選手は大ベテランですが、子供の頃にその活躍をスタンドで見ていたりするのではないですか?

「はい、見ていました。J2からJ1へ昇格した2009年ですかね。ベガルタがセレッソと優勝争いをしていた時。あの頃の試合もスタジアムで見ていたんですよ。で、『ベガルタ、強っ!』って思っていたので、まさか、そのクラブに自分が行くことになるとは思いもしなかったです(笑)その時も梁さんは試合に出て活躍していましたね」

―子どもの頃にスタジアムで見ていた選手と、一緒にプレーしているって不思議ですよね。

「そうですね。小学生の自分に教えてあげたいです」

ベガルタ仙台 中島元彦選手

迷わず振りぬく右足。このプレーをサポーターは楽しみにしている(提供:ベガルタ仙台)

 

―中島選手と言えば、フリーキックもそうですが、シュートの力強さも光ります。そのキックにはどのような秘密がありますか?

「そうですね。体格もこんな感じなので、何で勝負するかと、自分自身にベクトルを向けました。小さい頃、小学生の時からキックの距離やパンチ力はあったんです。飛ばせる感じですね。足もそれほど速くはなかったし、技術も粗削り。その頃は、上手さで勝負という感じではなかった。何で勝負するか考えて、『シュートで生きていこう』と。そこからはシュート練習ばかりしていました。シュート練習をずーっと続けていたら、こんなプレーヤーになっちゃいました(笑)」

―直接フリーキックで決めるゴールもサポーターの心を熱くしますね。第33節のジェフユナイテッド千葉戦では、惜しくもバーに弾かれましたが、あのフリーキックは縦にも横にもブレる、ものすごいシュートでした。

「縦にも横にも……、それはすごいですね(笑)」

ベガルタ仙台 中島元彦選手

どんな局面でも思い切り足を振りぬく。そこから何かが必ず起こると信じている

 

―もしサッカー少年たちに「シュートのコツを教えて」と言われたらどう答えますか?

「『気持ちを込める』って言いますね、少年たちには。外れてもいいと思いながら蹴っているんですよ。何本か打って、そのうち一本は入るだろうっていう気持ちです。シュートを打たずにチャンスを逃すくらいだったら、ゴールが見えたら打てよと考えています。弱気なシュートを打ってしまうとGKに止められたり、変なコースに行ってしまう。打つと決めた時は『何とかなれ!』という気持ちです。そういうシュートはDFに当たってゴールに入ることもあるので、まずは気持ちを込めます」

―中島選手のシュートやフリーキックには自信を感じるんですよ。自分を信じている感じですね。

「そうですね。昔から蹴っている数が違うと思っています。自分に自信がなかったら、あの場には立てないと思います。そういう意味では、失いかけていた自信を仙台に来て取り戻せているかなと思います」

明治安田生命J2リーグ 第25節 仙台対甲府 前半25分 中島元彦選手のフリーキック

 

―「蹴っている数が違う」、こういうことを言えるくらい練習してきた。きっと子供の頃からスパイクを何足も履きつぶし、靴下に穴もあけて練習してきたんですね。

「そうですね。そう考えると、小さい頃は(スパイクも)いっぱい買ってもらいましたね。けして裕福な家庭ではなかったので、大変だったと思います。でもその分早く活躍して、親に楽をさせてあげないと、とは思います。今振り返れば、自分が親になったらと考えると、ちょっと怖いですね。あんな量のスパイクを買わないといけないのかと……」

―そうやって親御さんが息子を信じて、惜しみなく与えてくれたんですね。

「はい。やっぱり、すごいですよね。親って」

ベガルタ仙台 中島元彦選手

仙台で輝き、取り戻した自信。まだまだスケールの大きな選手になっていく(提供:べガルダ仙台)

 

―仙台の地で、様々な人と出会ったと思うのですが、マスコットキャラクターのベガッ太さんとの関わりが興味深いですね。SNSでやり取りをしたり、ベガッ太さんから中島選手にカレーをご馳走したいという話もしていましたね。

「もう、『家においで』って言われたんですよ。コロナの感染予防もあって、まだ行けていないんですけど、『早くカレーパーティーしよう』って、いつも誘われています(笑)」

―スタジアムでもちょっとした時間にベガッ太さんの方から接近していますが、そんな話をしているんですね。

「あとは、『(仙台に)いつ家を買うの?』とか、(完全移籍の)交渉をしにきていたりします(笑)市長さんかというくらいのアピールで『仙台、いいところでしょう』という感じで。そう考えると、いろいろな話をしていますね(笑)」

―ベガッ太さんのようなマスコットキャラクターとの関わりは以前もあったんですか?

「いや、ないですね……。初めてです。(ベガッ太さんは)いろいろ、すごいと思います(笑)」

「マスコットキャラクターのハートも鷲づかみ」中島元彦選手のTwitterより

 

―仙台のサポーターも、ベガッ太さん同様「もう離したくない!」という勢いで応援しくれています。

「仙台のサポーターは熱いですね。自分は応援されたら頑張れるタイプです。メッセージでも多くの方が頑張れと応援してくれるので、そういう方々の言葉を見て『今日も頑張ろう』と思います。応援してくれる方々を笑顔にできるように。お金を払って見に来てくれる人たちのためにも、勝ち負けだけではなく、『自分のひとつひとつのプレーで見せ場を作れたら』と思いながらプレーをしています」

―簡単ではないJ1昇格への道です。熾烈な戦いが続きますが、ここからどう戦い、どう魅せていきますか?

「厳しい状況ですが、プレーオフもある。みんなが考え過ぎて良くない方向に行きがちですが、一人一人が練習から、その日に成長すると思いながら行動していけば、個人の成長がチームの成長につながると思います。勝ち負けよりも自分の成長にベクトルを向けている方が、今はチームとしてもいい方向に向かっていけると思います。目の前のプレーを全力でやろうと思っています」(完)

 

村林いづみ
村林いづみ

フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。