
リガーレ仙台 小澤史苑選手インタビュー(前編)思い出の地で始まる、新たなバレーボール人生。「楽しんでプレーする姿を見てほしい」
Interview
VOLLEYBALL
2シーズン目のVリーグを戦うリガーレ仙台。チームの攻撃のタクトをふるうのが、在籍4年目セッター・加藤優奈選手です。159cmの小柄なサイズながら、類いまれなトスワークでチャンスを演出する司令塔。前編では、リーグ参戦1年目となった昨季を振り返るとともに、自身のバレーボール人生をたどっていきます。
―まずは7月のサマーリーグ、お疲れさまでした。リガーレ仙台は13チーム中7位という結果に終わりましたが、大会を振り返ってどのような印象を受けましたか?
「(昨季からは)メンバーはそんなに入れ替わってないんですけど、1人違うだけで攻撃のパターンも変わるし、チームの色も変わってくるんだな、というのをすごく感じました。それに、前回のサマーリーグで勝利した相手と再び対戦することもあったのですが、以前に私たちに負けたことを相手が強く意識していて、気合いを入れて臨んできてくれました。そのおかげで、自分たちの強みを知れたし、一方で弱さも知ることができた、そんなサマーリーグだったと思います。ただ、チームとしても、個人としても、どちらかというと課題のほうが多く残ったかな、という印象があります」
―Vリーグを1シーズン戦うのは昨季が初めての経験だったかと思います。最終成績はディビジョン2の10チーム中6位でしたが、振り返ってみてどのようなシーズンでしたか?
「去年の開幕前は、『自分たちがどこまでできるのかな』っていう、挑戦者の気持ちしかなかったので、とてもワクワクしていました。ただ、今までも有観客での試合は何回か経験していましたが、ホームアンドアウェーで戦うのは初めてだったので、アウェーの雰囲気というのはいい意味でとても勉強になりましたし、自分たちのホーム戦でいえば、応援が力にはなったけど、その分プレッシャーを感じてしまい、少しプレーが硬くなってしまっていたかなと振り返ってみて思います」
―その中で加藤選手は1年間、正セッターとして攻撃のタクトをふるいました。
「自分は他の選手たちと比べて、セッターとしての経歴が浅い分、いろんなことに挑戦させてもらいました。これまで自分がレシーバーをやったり、スパイカーをやったりした経験があったので、上げてくれたボールは絶対つなぐぞという気持ちを持ったり、どういうトスが欲しいのかスパイカーとコミュニケーションを常に取ったり、チームメートの良さを引き出せるようなセッターになりたいなって思いながら、昨シーズンは頑張りました」
―そんな加藤選手ですが、バレーボールを始められたのは、いつ頃になりますでしょうか?
「小学3年生ぐらいのときですかね。姉がバレーボールをやっていて、そのボール拾いとかについて行ったりしていました。その流れで、自分もやりたいって言ったみたいです(笑)」
―セッターとしてプレーするようになったのはいつ頃ですか?
「セッターを本格的にやりだしたのは、高校2年生です。高校は栃木県の宇都宮文星高校に通っていましたが、当時は県でもベスト4止まりで、春高バレーなどには出られませんでした。その悔しさもあって、大学でもバレーを続けたいと思うようになりました」
―高校卒業後は、宮城の尚絅学院大学に進学します。なぜ栃木の高校から、尚絅学院大を選んだのですか?
「大学側からオファーをいただいたのもありますが、尚絅学院大のコーチをされている古川靖志さんという方が、元々全日本男子代表でセッターを経験されていた方で、私の母が古川さんのファンだったんです。自分もセッターとしてバレーを続けていこうという思いがあった中で、大学側からもセッターとしてプレーしてほしいという話をいただいて、母からも『ぜひ古川さんに教わって、そこで成長してほしい』と言われたので、尚絅学院大学に行くことを決めました」
―同じ仙台には、東北福祉大学というライバルチームが存在します。尚絅学院大で過ごした4年間は、どのような思い出がありますか?
「当時から『打倒・福祉』というのを掲げていて、常に東北の中でトップ争いをしてきました。ありがたいことに1年生の頃から試合には出させていただきましたが、勝たなきゃいけないというプレッシャーをかけながら、とにかく先輩たちに食らい付いていく、みたいな感じの辛い日々でした。バレーボールが楽しいなと思えるようになったのは、3年生の後半ぐらいから。4年生のときには、国体予選と秋季リーグで、2度、東北福祉大に勝つことができました。勉強よりも練習していた時間のほうが長かったし、それぐらいバレーボールと向き合った大学4年間でした」
―大学卒業後、リガーレ仙台に加入することになりますが、それまでとはどのような違いがありましたか?
「一番は、仕事をしながらバレーボールをするようになったことです。会社での振る舞いだったり、言葉遣いだったり、そうした社会人としての勉強をさせていただきました。それにもう一つは、『地域の方と一緒に戦う』という思いが大きくなったことですね。宮城のために頑張りたい、という気持ちがこれまでよりもとても強くなりました」
―プレーヤーとしては、どのようなスキルが高まったと思いますか?
「大学は平均身長が低いチームだったので、スピードがある攻撃を主にやっていました。なので、大きい人に対するトスをあまり上げたことがなくて、このチームに来てから、ゆっくりと時間を与えた、スパイカーが打ち切れるようなトスを上げることを意識し始めました。最初はすごく戸惑ったり、リズムがつかめなかったりしたんですけど、今はスパイカーに合わせるトスはちょっとは上手くなったかなと思います(笑)」
―現在、共にプレーする佐藤あり紗選手兼監督は、全日本代表でも活躍されていました。そうした選手と一緒にプレーできるのも、刺激が多いのではないでしょうか?
「最初は、すごくビビってました(笑)。あり紗さん、怖い方なのかなあって。でも、会ってみたらすごく優しくて、選手兼監督という立場になられてからは、なおさら選手との距離が近くなったので、『こういった考えもあるんだ~』って、たくさん勉強させていただいています」
■プロフィール
加藤優奈(かとう・ゆうな)◎1996年5月9日生まれ、栃木県出身。宇都宮文星高校2年時にセッターに転向し、卒業後は尚絅学院大学に進学。1年時から主力としてプレーし、インカレ出場、秋季東北リーグ優勝などに貢献。2019年、リガーレ仙台に加入。Vリーグ参戦1年目の昨季は正セッターとしてチームをけん引した。身長159cm。
Photo by 渡邊優
1992年10月14日生まれ、岩手県一関市出身。一関第一高校卒業後、仙台大学体育学部スポーツ情報マスメディア学科に進学。アルバイト等で執筆経験を積み、2015年4月より岩手県盛岡市の制作会社「(株)ライト・ア・ライト」に入社。地域限定スポーツ誌「Standard」の制作等に携わり、2019年4月よりフリーランスとして活動中。