仙台スポーツ
COPY
URL
COMPLETE

Interview

FOOTBALL

杜の都で愛するサッカーを天職とする、蜂須賀孝治の幸福論【後編】

(提供:ベガルタ仙台)

 

厳しいリハビリを終えたDF蜂須賀孝治選手に、試合復帰の機会が訪れました。通常は練習試合を行い、実戦を行う上でのコンディションを慎重に見極めますが、連戦やコロナ禍の影響でその日は突然やってきました。勇気を持って自分らしくその日に挑んだ蜂須賀選手。J1復帰へ重要な終盤の戦いに向けても大きな力を発揮していきます。

 

―けがを乗り越えて試合復帰の日がやってきました。6月の天皇杯セレッソ大阪戦で、しかもいきなりスタメン出場です。この日はどんな気持ちで迎えましたか?

「正直な気持ち、ちょっと早いなとは感じていました。『試合に出るチャンスがあるならば出たい』という気持ちと『まだちょっと早いんじゃないか』っていう不安な気持ちが、本当に半々位でした。その時は連戦でしたし、しかも中2日だった。今、本当いくべきなのか。ここはステイして、もうちょっとコンディションを上げた方がいいんじゃないかっていう気持ちが本当に同じくらいありました」

―難しい判断でしたが、試合に出る方を選択しました。

「監督には、『もう行ける準備はできています』と伝えたので、もう出るからにはやるしかないという割り切りました。あとはピッチに立ったら、あまり考えすぎずに、もう自分のプレーを、思うまま素直にやるということを意識して試合に入りました」

―怖さはなかったですか?

「いや結構ありました。緊張もすごかったです。相手はJ1チームですし、天皇杯は負けたらそこで終わり。消化試合ではないですし。準備の段階で練習試合もできてない中での天皇杯、本当にぶっつけ本番の感じでした。でも、それまでしっかりできる限りの準備はしてきたつもりだったので、もう本当にやるしかないっていう感じですよね」

ベガルタ仙台 蜂須賀孝治選手

いつも通り、自分のプレーを。久しぶりの試合出場でもそれを貫くことができた(提供:ベガルタ仙台)

 

―久しぶりの公式戦でしたが蜂須賀選手がピッチに立っている姿があまりにも自然で、『あぁ、私たちの蜂須賀選手が戻ってきたなぁ』と感じたんですよね。

「自分でもやりづらさとか、動きにくさはありませんでした。体力的にもたない部分もあったんですけど、本当にそれ以外は本来の自分というか、いつも通りの自分のプレーをナチュラルに出せたかなって思います」

―早速その試合で、鎌田大夢選手のゴールをアシストしましたね。

「そうですね。あれはもう大夢が上手く決めてくれたなっていう感じです」

―今季はシーズンスタートからユアスタにずっと出ていた大きな(蜂須賀選手の背番号)『4番』の横断幕が、いつものピッチレベルの高さではなく、サポーターのいるスタンドの上方に掲げられていまいました。サポーターが粋なことをしてくれましたね。

「シーズン最初から、スタンドにはいつも『4』と『8』(松下佳貴選手の背番号)を貼ってもらっていました。あの日は『4』がないなと思って……。『復帰したから、なくなったのかな』と思いました。でもよく探したら、スタンドの上の方にかけてくれていたので、 本当に仙台サポーターは温かいなと感じました」

ベガルタ仙台 蜂須賀孝治選手

夏季限定ユニフォームを身にまとい、長崎戦で先発出場した蜂須賀選手(提供:ベガルタ仙台)

 

―天皇杯での復帰を皮切りに、そこからリーグ戦でもベンチ入りが続きました。第28節V・ファーレン長崎戦ではリーグ戦のスタメン復帰となりました。リーグ戦を戦う中での手応えはいかがですか?

「まだまだコンディションは上げられると思います。試合出場を重ねつつ、練習でも課題を見つけて、それに取り組んで克服してというサイクルを繰り返して、まだまだ伸びると思っています。もうシーズンは、残り試合も3分の1なので、目の前の試合に必ず勝つという気持ちをぶつけること。そして戦術をしっかり理解し、頭使って戦うことも大事なので、そういうバランスをしっかり保ちながらやっていきたいなと思ってます」

―まさにシーズンは残り3分の1。J1復帰に向けて毎節本当にヒリヒリするようなゲームが続いていくと思うのですが、この緊張感というのはどう感じていますか?

「僕自身は、緊張はそんなにしていないですね。原(崎)さんのサッカーは、しっかり整理されていて、『やるべきことをやれば絶対勝てる』という確信があるんです。相手にやられてしまう時は、事故的なものというか、何かのアクシデント。そういう可能性を少しでも下げて、自分たちがやりたいサッカーをどれだけ落ち着いて実行できるかが鍵になってきます。相手どうこうよりも、自分たち次第ということは感じています」

―監督・原崎さんという存在は、選手たちにとってもついて行きたいと思わせるリーダーのようですね。

「締めるところをしっかり締めて、喜ぶ時はみんなで喜んでいます。昨シーズン、原さんがコーチの時は、選手との距離は近かったので、相談をし、たわいもない話をしてコミュニケーションを取っていました。コミュニケーションは引き続き取っていますが、今は緊張感をみんなに与えて、少しでも質の高い練習をさせるという空気感を感じます。そういう部分で、コーチの原さんと、監督である今の原さんとは少し違いますね。キャラクターチェンジじゃないですけど」

ベガルタ仙台 蜂須賀孝治選手

勝利をつかみ取るため、原崎監督の考えをピッチで体現する。練習中もその言葉は聞き洩らさない

 

―今年は選手の顔ぶれも変わり、より「原崎監督のチーム」になってスタートしました。そういう中で一つになって目標に向かっていく雰囲気がありますね。

「そうですね。監督もチームをJ1に上げなければいけないという使命を持ってます。監督が考えているサッカーを表現できない選手は使われない。使うことができないと思うんです。監督という存在はいつも自分の首を懸けて戦っていますから。原さんもギリギリのところで戦っていて、その要望や要求にしっかり応えられる選手がピッチに立つ権利を得るし、実際に立っているという現状があるので、いい競争ができてるんじゃないかなとは思います」

―そのように監督の考えも理解しながら、チーム全体も見渡せる蜂須賀選手はもうプロ10年目なんですね。

「はい。でも前を見れば、(富田)晋伍さんという存在があって、チーム一筋18年目ですからね。ちょっと次元が違うなということは感じます。梁(勇基)さんもそうです。仙台には、まだまだ追いかけるべき背中がありますね」

ベガルタ仙台 蜂須賀孝治選手

今、蜂須賀選手はサッカーができる喜びを全身で表現している

 

―けがをして、そこから復帰して活躍できていることは、本当にいろんな人にとっての希望になると思うのですが、これからどんな姿を見せていきたいですか?

「今32歳になって、ベテランの域に入ってきました。体力的な部分では、今、生き生きしている真瀬(拓海選手)を見ていると『運動量がすごいな』と思うんです。そういう部分で、ちょっと自分では太刀打ちできない。でも他の選手にはないクロスやロングパス、攻撃の作りの部分でのパスがある。プロの世界を10年経験してきて、俺しか持っていないプレースタイルを自分らしく出して、『まだまだ自分も戦えるんだぞ』っていうことを、応援してくれる人たちに見せていきたいと思っています」

―本当に、まだまだこれからですよ。

「そうですね。でも、どれだけできるかなあということは考えます。選手人生はスタートから引退までを考えたら、もう半分を超えるところまでは来ていると思っています。残りは完全燃焼して、どれだけ楽しめるかということも今後のテーマなのかなと。まずは自分自身がサッカーを楽しむ気持ちを忘れずやっていきたいなと思っています」

―チームが目指す昇格に向けても、個人にとっても大事な熱い8月の戦い。ハチくんの月にしたいですね。

「そうしたいですね。夏が好きなので。J1昇格にはチームに関わる全員の力が必要です。今からどれだけ残りのシーズンに向かって一丸となれるかも重要なので、チームの士気を高めること。そして良い集団となって、残りのシーズン駆け抜けられれば、おのずとJ1復帰できるんじゃないかなと思います。楽しく向かっていきたいなと思います」(完)

 

 

村林いづみ
村林いづみ

フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。