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Interview

FOOTBALL

もっと愛されるマイナビ仙台レディースへ。2年目への提言【後編】マイナビ仙台レディース ユースコーチ 有町紗央里×ジュニアユースコーチ 田原のぞみ

(提供:マイナビ仙台レディース)

 

現在は未来のWEリーガーの育成に力を注ぐ元マイナビベガルタ仙台レディースの選手の有町紗央里さん、田原のぞみさん。WEリーグでの1年目を戦ったマイナビ仙台レディースの様々な変化を近くで見つめてきました。彼女たちの目に映ったマイナビトップチーム、やWEリーグ、女子サッカーの現在地について伺いました。

 

プロ化したマイナビ仙台レディース。感じたチーム、クラブの変化

―プロということでのピッチ内外の変化はどう捉えましたか?

田原「練習時間以外のトレーニングやケアでの協力してくれるスタッフやパーソナルトレーナーがいる。身近に相談できる専門家がいるというのは強みですね。自主トレの質が良くなったのかな。食にこだわる選手も増えてきました」

有町「そうだね。私が練習の面で見ると、これは監督の松田(岳夫)さんのスタイルだと思いますが、ピッチ上にたくさんの種類のマーカーやコーンが並んでいます。練習の狙いによって、場所をポンポンと変えていく。いかに短時間で重要なところを落とし込めるかというのを感じます。練習の持っていき方はプロだなぁと思いましたね。監督の考えるサッカーを選手たちがどう表現するか。言われたことをやるだけではなくて、自分の良さを出していかなければいけない。監督の求めるものに達していなければ、様々な方法で補う、そのために協力してくれる人がいるというのが、サッカーに打ち込めるプロの環境なのかなと思います。年間を通して、けが人も少なくなったんじゃないかなと思います。けがをしたら選手としての商品価値が変わってしまう。練習前後に怪我予防のための取り組みをしている選手も多かったので、その意識は外から見ていてもすごいなと感じました」

マイナビ仙台レディース ユースコーチ 有町紗央里×ジュニアユースコーチ 田原のぞみ

ユースを指導する有町紗央里コーチは、U-16日本代表のコーチも兼任している

 

―お二人はラジオ中継の解説にも取り組みましたね。

田原「ラジオを聴いている方々にはピッチ上の様子や映像は見えない。そういう状況で『今のプレーはこういう状況でこうでした』と伝える場合に、どういう言葉で言えばうまく伝わるのか。且つ、聞いている方の頭に映像を思い描いてもらえるようになるのかということが難しかったですね。『これで大丈夫かな』っていつも言っていたよね(笑)」

有町「うん(笑)頭の中にあるイメージを言葉で伝える、アウトプットするということが下手過ぎました」

田原「だからこそ、実況の(ラジオ3)鈴木(美範)さんはすごいな、プロだなって毎回思いましたね」

―言語化して伝えるということは指導者の立場としても大きな仕事ですよね。

有町「そうです。そこが一番大事だと思います。だから解説は、指導をするという上でも良い勉強になりました」

―数多く解説し、見てきた中で印象的だった試合は?

有町「私は後期最初の(第12節)サンフレッチェ広島レジーナ戦。4-0で勝利しました。スタートからスイッチが入っていて、ビルドアップが苦手だという相手のウィークポイントをしっかり狙えていた。更に1点取って終わりではなく終盤まで手を緩めず、4点取った。しかもすべて異なるパターンの得点だった。相手の良さを出させず圧倒した試合でした。シーズン終盤はなかなかそういうサッカーができなかったですね。迷いもあったのかなと思うのですが、この試合は狙いがハマった試合だったと思います」

田原「私は最終戦、アウェーのノジマステラ神奈川相模原戦ですね。マイナビはそれまでなかなか逆転できないチームでした。先制点を取られると、引き分けか負けていました。この試合は最後まで踏ん張って逆転しました。内容的には苦しいところもあったと思うのですが、最後に踏ん張って逆転したという力を見せてもらいました。初めての逆転勝利でした。一番嬉しかったのは、同い年の北原選手が出場したということですね」

有町「クラブハウスで、DAZNで見ながらハイタッチして喜んでいました。佳奈―! って」

田原「選手交代で北原がピッチサイドに立った瞬間に拍手ですよ」

―北原選手はチーム最年長。なかなか出場機会に恵まれず、これがWEリーグ初出場でした。そして北原選手と有町コーチ、田原コーチは1988年生まれの同い年。選手とコーチで立場は変わりましたが、現役を続ける北原選手をどう見つめていましたか?

田原「大変だったと思います」

有町「どこか自信なさげにプレーしている感じは受けていたんですが、それでもどーんと落ちて行ってしまうということはなくて、何とか頑張りたいということを常に言っていました。私たちからしたら、この年齢で、しかもプロでプレーして、あれだけ若い子たちと一緒に走れる佳奈がすごいという気持ちがあります。どんな状況でも『頑張れ!889の星』って応援していました」
(※「889」は、88年~89年早生まれの選手たち)

田原「うん。889の星、希望」

有町「試合に出られればもっと良かったかもしれませんけど、頑張っていることは十分伝わっていましたから」

マイナビ仙台レディース ユースコーチ 有町紗央里×ジュニアユースコーチ 田原のぞみ

田原のぞみコーチはジュニアユースを担当。ベガルタ仙台レディースの初代メンバーでもある

 

もっと、マイナビ仙台レディースのファンを増やすために。

―もっと地域の中で愛される存在になるために、どんな取り組みができると思いますか?

有町「(コロナ禍による)制限などがなければ、小学校に行ってサッカー教室したりもできる。選手たちを見てもらう機会を増やしていったら、興味も広がると思います。でもまずは練習第一で、ピッチの上でやることが選手の基本なのでそういう時間をどうとっていくかですね。サッカーって結果だけではないと思うんです。結果だけでファンがついてくるものでもないと思うので、応援したいと思われる魅力が他にもないといけない」

田原「ちょっとずつやっていくしかないです。アカデミーの選手は泉区の清掃活動に参加しています。そんな風に選手も地域の活動に参加できるといいですよね。マイナビを全く知らない方もいるので、試合会場や練習場だけではなくて、地域に出ていくということも大事です。そうすることで選手を見てもらえる場は一つ増えます。アカデミーでこうした活動に参加する時はジャージを着ていくんですが、エンブレムやロゴでマイナビと認識してもらえるようになるんです。そこでしっかり挨拶するとか。そうしていると『頑張ってね』と言ってもらえるんです。そういう時間が大事だと思います」

―下部組織の選手を指導する立場から、トップチームとユース・ジュニアユース選手の関わりはどのように見えていますか?

有町「ユースやジュニアユース、アカデミーの子たちからしたら、トップの選手ってなかなか話しかけられないんですよ。シャイだというところもあるのかもしれませんが。でも、同じポジションのトップの選手が悩みを聞いてくれたり、アドバイスをくれたりしたら話しやすいかもしれません。でも振り返ると、私たちが選手だった頃、アカデミーの選手と話すことはほとんどなかったです。でも、先日(GK齋藤)彩佳がアカデミーの練習に来てくれました。緊張するんですよね。憧れというか、プロという立ち位置の選手たちから声をかけてもらえるとすごく嬉しいはずです。アカデミーの選手がトップと関われるフレンドリーでオープンな交流を持ってもらえるとありがたいですね。アカデミーにはトップを目指す子も多いので、トップの選手たちの振る舞いも見ています。そういうところでも憧れられる存在であって欲しいですね」

田原「せっかく同じクラブにトップチームとアカデミーがあるので、憧れだけど距離的に離れすぎないで欲しいと思います。話してみたいけど怖い、恐れ多いとならないといいな。良い距離で交流をできるといいですね」

―振り返ると有町コーチはオンラインでアカデミーの選手との交流体験もありましたね。

有町「そうでしたね。質問に答えたりしました」

田原「アカデミーの子は、同じ紫山でも白百合学園のピッチで練習をしている土日以外はなかなかパークタウン練習場に来る機会がない。けがをしてる子は、クラブハウスにケアをしに来たりはしていたかな。そういう時に、リハビリをしているトップの選手と話ができたりするんです。より身近に感じられて『こういう選手になりたい』『やっぱりトップの選手はすごい』って思って欲しい」

有町「そういう経験があるだけで、『この選手好き!』となるんですよ」

田原「ジュニアユースの選手で、矢形海優選手のファンがいるんです。ホーム戦のお手伝いの時に、サインをしてもらえたようで、そういうふれあいがあると、本当に選手のことを好きになりますね」

マイナビ仙台レディース ユースコーチ 有町紗央里×ジュニアユースコーチ 田原のぞみ

豊かな経験を未来のなでしこ育成に注ぐ

 

―2年目のマイナビトップチームに期待することはどのようなことですか?

有町「このチームが好きという選手が増えたら、もっとこだわりが増えると思うんです。もっと勝ちたいと思うようになる。自分が試合に出ることが一番と考えるようになるとチームはバラバラになってしまう。チームが掲げる優勝という目標に向けて、自分ができることを積み上げていく選手が増えれば強くなる。個人の技術や戦術を磨くことも大事ですが、チームとして信頼し合える仲間となれるよう、今より更に思ったことを言い合える関係を築いて欲しいですね」

田原「2年目はメンバーも大幅に変わる中で、松田監督は2年目なのでやり方は変わらない。監督のもと、選手たちがいかに一つになれるか。紗央里の言った、一体感もそうですし、プロなので結果を残さないと次はないというのは感じていることだと思います。でも応援したくなるチームは勝つだけではなく、同じ方向を向いて戦えるか」

有町「ベガルタに来た1年目、私は自分を出し切ることができませんでした。どこかでみんなに合わせてしまった。でも、徐々に自分の殻を破るというか、自分はこういう人間だということを主張しました。ぶつかることもありましたけど、それを繰り返して、チームがまとまっていったという経験がありました。結構、喧嘩もしていました。アクションを起こすということが大事なのかな。指導者としても、それは強く思いますね。良いことばかり言っていても伝わらない」

田原「みんな上手なので上手くやるし、やろうするのかもしれない。でももっと、がむしゃらに必死な姿を見せてもいいのにって思います」

有町「うん」

田原「そういう姿を見てファン、サポーターは心を打たれると思うんです。上手くやろうとしなくていい。マイナビに限らず、最近の選手たちはそうですね」

有町「ユースもそうだよ」

田原「対戦していて、がむしゃらに来られるのが一番嫌だからね。頑張れーと後押しされるのはそういう姿です。それだけじゃダメなんですけど、勝負の分かれ目はそういうところが大事になってくるんじゃないかな。そういう選手が増えてくると、そのムードはチーム全体に広がっていくはずです」

有町コーチ、田原コーチもそれぞれの場所から「未来のWEリーガー」を育て、チームを支えていきます。WEリーグ2年目の開幕は10月22日。松田監督の下、新たなメンバーを迎えて、マイナビ仙台レディースはどのように進化していくのでしょうか。多くのサポーターの心に響く試合で、2代目女王を目指していって欲しいですね。(完)

 

村林いづみ
村林いづみ

フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。