
イリュージョニスト・鎌田大夢が、仙台に見せる独創性と『大いなる夢』【前編】
Interview
FOOTBALL
(提供:ベガルタ仙台)
Jリーグはシーズン折り返しの夏を迎えています。今季ベガルタ仙台に加入した、攻撃的サイドバックのDF内田裕斗選手。利き足である左足から繰り出す長短自在のパスで幾度もチャンスを演出してきました。「目標はJ2優勝」と言い切る内田選手に、ここまでのシーズンや歩んできたサッカー人生について伺いました。(前後編)
―仙台での生活には慣れましたか?
「そうですね。とても住みやすいですし、いい街だと思います。コロナの状況もあるので、あまりあちこち出かけることはできないですが、とても気に入っています」
―気分転換にどこか行ってみたところはありましたか?
「宮城県内だったら、(南蔵王)不亡のキャンプ場に行ってきました。キャンプは大好きですね」
―宮城は自然豊かなでキャンプを楽しめるところがたくさんありますからね。さて、J2リーグは後半の戦いが始まっています。仙台へ移籍してきた今シーズン、ここまでの手応えはいかがですか?
「もうちょっと得点に絡みたいですし、ゴール、アシストという攻撃の数字っていうのはこだわって持っていきたいなと思います。あとは、最近失点が多いです。自分はDFの選手なので、失点0にこだわってやっていきたいなと思いますね」
攻撃が持ち味の内田選手。ゴールとアシストを足して二桁を目標としている(提供:ベガルタ仙台)
―内田選手はDFの選手ですが、どんどん前に出ていく姿勢から、やっぱりすごく攻撃が好きなんだなということが強く感じられますね。
「そうですね。攻撃は自分の持ち味ですし、好きです。でも、もっともっと失点0というところにもこだわっていかないといけないです。やっぱ失点してしまうと、敗れる可能性がぐっと上がっちゃうので。0で抑えて、尚且つ得点に絡みたいな、と」
―このところの戦いで、失点が重くのしかかってしまう点は気になっていますか?
「そうですね。やっぱり先制されたら、試合展開が苦しくなってしまう。そこはもう、自分たちが先制点を取ってしっかり守るっていうことには、チームとしてこだわっていきたいなと思う」
―チームはJ 1復帰を目指すシーズンとしてスタートしていますが、今年のJ2での戦いはどのように取り組んでいますか?
「ここ数年はJ1にいましたけど、僕自身が J2にいた時期の方が長いので、J2の戦い方というか、そういうものは経験しています。J1もそうですが、J2でもそのチームとしての色がはっきりしていると思います。仙台も仙台らしく戦えば、サッカーをやっている方も見てる方も楽しいと思うので、しっかりと勝利に向かってやっていきたいですね」
―J2はより各チームのスタイルがはっきりしていますよね。ちょっと極端なくらいに。
「極端なチーム、ありますね。特に印象が強いのは(ブラウブリッツ)秋田とかですかね」
どんな時でも毎日の練習に真摯に向き合う。戦う準備は常に怠らない
―攻撃に特化した、他にはないスタイルですよね。内田選手ご自身は開幕戦で、左サイドバック(SB)でスタメンの座をつかみましたが、その後、先発から遠ざかった時期もありました。シーズン前半でのご自身のバイオリズムはどう捉えていますか?
「試合に出られない時期があっても、練習への取り組みは変わらずにしっかりやろうとは自分では考えていました。あとは、最初開幕から1、2、3節と先発で出られましたけど、自分のプレーには全然納得がいってなかったです。だから(先発から)変えられてもしょうがないなっていう。自分の責任だなっていうことは思っていました。次に試合に出るチャンスが来たときに、どれだけできるかっていうところが大事だと思ったので練習は必死にやっていました」
―納得がいかないと思った点というのは、どういうところだったんですか?
「全部です」
―全部と言い切ってしまうのは、自分に厳し過ぎませんか?
「いや、でも良いプレーができなかったですからね」
―しかし、そこからトレーニングに真摯に向き合う中で、復帰した後にちゃんとしっかり結果を出していきましたね。
「久々に先発で出られたのは(第12節)熊本戦でしたけど、そこに全てを懸けていましたね。もう『これがラストチャンスだ』と思いました。自分のパフォーマンスも重要ですけど、まずはチームを勝たせるために何ができるかということを考えて……。ピッチではとにかくチームが勝つためにとやってました」
―久しぶりのチャンスだと、つい自分自身のパフォーマンスや結果を求めがちですが、そこで冷静に「チームのために」と強く思える選手がいる。そういうチームは強いですよね、きっと。
「それはぜひ、シーズンが終わって、優勝した時に言って欲しいですね(笑)」
自分のためではなく、チームの勝利のために。信念はぶれない(提供:ベガルタ仙台)
―もう一度、その頃に言わせていただきます(笑)6月は古巣の徳島ヴォルティスとの試合もありました。ゴールも決めましたし、そこでも存在感は抜群でした。特別な思いがこもっていましたか?
「あのスタジアム(鳴門・大塚ポカリスエットスタジアム)は特別な場所です。徳島のサポーターとも特別な思い出があります。とはいえ、今はベガルタ仙台のエンブレムをつけて戦っているので、ベガルタ仙台が勝つためにプレーする中で、お世話になった方々にも成長した姿を見せられればとは思っていました」
―プロ2年目から5年間を過ごした徳島というクラブには特に思い入れがあるんですね。
「はい、自分の全てです。選手としても人としても成長させてもらった場所なので。一番濃い時間を過ごしたところですし、やっぱり、ずっと感謝をしている場所です」
―徳島のサポーターとはどんな思い出があるのですか?
「最初の1年はガンバ大阪からレンタルで徳島に行ったんですが、全然勝てませんでした。サポーターと喧嘩しちゃって、叩かれました(笑)そしてTwitterで謝りました。その次の試合で、自分のチャント(応援歌)ができて、サポーターの皆さんと仲直りができたんです。それからずっと仲がいいんです」
―それは熱いエピソードですね。
「でも喧嘩をするとか、今から考えたら『何してんねん』という話ですけど(笑)」
―うらやましい位、熱いお話です。第21節の対戦では、その徳島サポーターの前でゴールを決めました。その後の喜びを抑えた表情や仕草はやっぱり、古巣のサポーターへの配慮があった感じですね。
「そうですね。仙台での移籍後初ゴールとしては嬉しいです、もちろん。ただやっぱり、何か(徳島への)感謝の気持ちがどうしても勝ってしまうので、あのスタジアムで単純に喜ぶということはできなかったです」
ベガルタ仙台公式YouTube vegaltachannal
「2022明治安田生命J2 第21節 徳島ヴォルティス戦ハイライト」
―そういう思いや内田選手の人間性は、仙台の仲間もサポーターや理解できるところだと思います。内田選手のルーツを更にさかのぼっていくと、大阪のご出身ですね。
「大阪、大好きです。徳島時代も2日オフだったら、ほぼ実家に帰ってました。大阪で買い物したり、遊んだりしていました」
―下部組織時代からガンバ大阪でプレーしてきましたね。ガンバというチームに対しては今どういう思いを感じていますか?
「中学校からガンバで、そのままトップまで行って、成長させてもらい、めちゃくちゃ感謝しています。育成年代の代表にもずっと選ばれていて、自信があった中でプロの世界に飛び込んで……。でもそのプロ1年目、2014年ですが、壁にぶち当たったなって感じです」
―そのプロ1年目の壁はかなり高いものだったんですか?
「そうですね。今も思えば、『ああしておけば良かった』ということはいろいろありますけど、その当時は、もう何をすればいいのかわからなかったですね」
名だたる先輩たちの中で、もがいたプロ1年目。経験を積んだ今だからわかることもある
―経験を得た今の自分が当時の自分にアドバイスするとしたら、何と言ってあげますか?
「『もっとガツガツいけ』と。ガンバのトップチームに上がって、それまでテレビで見たり、サッカーゲームで使っていた選手たちと実際に一緒にやることになったので。なんかちょっと気を遣ってしまった部分はあったかなと思います」
―2014年、その頃のガンバ大阪には、誰がいましたか?
「遠藤(保仁)選手、今野(泰幸)選手、宇佐美(貴史)選手、岩下(敬輔)選手、東口(順昭)選手にパトリック選手。ドえらかったです。ベンチにも阿部(浩之)選手や倉田(秋)選手とか……。ベンチを見てもすごいしスタメン見てもすごいし。でもその選手たちを『すごい』って思っている時点で、もうあかんかったなと思います。今思えば、そこに割って入らんかい! と。すごいって思っちゃってました」(後編へ)
フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。