
WEリーグで日本の女子サッカーが変わる瞬間。宮澤ひなたは誰よりもゴール前で強い光を放つ【前編】
Interview
FOOTBALL
WEリーグの舞台で自分を磨き続けたMF隅田凜選手。その活躍が評価され、昨年は3年ぶりにサッカー女子日本代表へと復帰しました。チームでも代表でもサッカーと真摯に向き合い輝き続ける彼女の日々や今後のビジョン。そして何よりも愛するコーヒータイムのこと。隅田選手のオンとオフのお話を伺いました。
―2021年は池田太・新監督がなでしこジャパンの指揮官として就任。隅田選手も昨年から代表に復帰し、オランダ遠征やアジアカップも経験しました。今、再び代表に選ばれ続けていることについてはどのように感じていますか?
「仙台に移籍してからは、しばらく代表からも離れていました。代表のことは意識していなかったわけではないですが、今またこうしてチャンスが巡ってきました。周りからもすごく影響を受けることが多くて、自分自身もまた代表の日の丸を背負ってプレーしたいという気持ちも強くなりました」
―日テレ・ベレーザ時代、代表に選ばれていた時とは少し意識も違いますか?
「はい。以前選ばれていた時よりも、年齢も上になっていて、周りの選手たちも変わりました。チームのために、勝っていくために必要なことは何かを、より考えるようになりました。ベレーザ時代はチームも代表も周りの選手がとにかく上手くて、自分はそこについて行くというイメージでした。仙台に来て、キャプテンも経験したことも大きかったです。自分がもっとプレーでみんなを引っ張っていこうという意識が生まれました。チームでの評価が代表選出にもつながっていると思うので、チームでも代表でも同じく高い意識を持ってプレー出来たらいいですね」
―アジアカップの準々決勝、タイ戦では代表初ゴールもマークしました。
「初ゴールは本当に嬉しかったですけど、日本が7点も取るような試合だったので……(笑)素直には喜べないかな(笑)」
―そうでしたか……。仙台からは隅田選手だけでなく長野風花選手や宮澤ひなた選手も一緒に選ばれているのが嬉しいですね。
「タイ戦は3人とも試合に出ましたしね。代表にはいろんな選手が集まるので、普段一緒にやっていなくてプレーのタイミングなどが合わない場合もあるんですが、同じチームの選手がいるとやりやすさがあります」
チーム内では常に厳しい競争がある。練習でも妥協はできない
―チームの中での立場の変化も感じていますか。
「昨シーズン、年上の選手が多く抜けました。自分自身は今年副キャプテンという立場になったのですが、試合に出るとなったら自分が一番年上だったり……。とにかく下の選手たちが強烈だったので……。そこは本当に、今振り返ると大変なこともありましたね」
―個性豊かな選手たちをまとめ上げていく上で、隅田選手はどうふるまっていたのですか?
「グラウンドに入ったら、サッカーに年齢は関係ありません。松田さんにも最初から『このチームはみんな横一線だ』と言われていました。誰が試合に出てもおかしくない。そういう意味で、誰もが競争心を持ってやれていたのかなと思います」
―年齢は関係ないとはいえ、若手選手との世代間ギャップは感じたりしますか?
「それはありますね。もう若くないんだなぁということは、(奥川)千沙とよく話しています(笑)」
―そう考えると、チームに最年長の北原佳奈選手がいてくれるのは心強いですね。
「本当ですね。私より年上の選手は、佳奈さん、(齋藤)彩佳さん、ハカさん(浜田遥選手)。カエちゃん(佐藤楓選手)は……、年上ですがキャラクター的に年下みたいなものかな(笑)」
―マイナビベガルタ時代から比べると、かなりチームが若返りましたね。
「そうなんです。若いんですよ」
サッカー選手として高い集中を求められるからこそ、リラックスできる時間を大切にしている
―少しサッカーの話から離れますが、隅田選手といえばマイナビ仙台でも指折りのコーヒー好きですね。
「はい。毎日楽しんでいます」
―今シーズンはチームと仙台の珈琲飲み処「いりたてや」がコラボしてコーヒーのドリップバッグを販売。隅田選手はプロデュースに関わりました。
「いやー、本当に楽しかったです。パッケージデザインも担当させてもらいました。一度そういうことに挑戦してみたかったので嬉しかったですね。ドリップパックはいろんな人が買ってくれました。自分でも買いに行こうかなと思っています(笑)他のチームの人も『送って!』って言ってくれたり、親はユアスタでも売り切れで買えなかったらしくて……。もっと数を出すべきだったかな?」
隅田選手がプロデュースしたコーヒードリップバッグ。パッケージデザインも手掛けた(提供:マイナビ仙台レディース)
―コーヒーを楽しむ時のこだわりは?
「まずは、豆が新鮮であることですね(笑)新鮮かどうかは、淹れてみるとすぐにわかるんですよ。『あぁ、これは時間が経っちゃった豆だな』とか。(お湯を注いだ時の豆の)ふくらみが違うんですよね。そこが、まずこだわりポイントです。最近は朝しか飲んでいないんです。まず、コーヒーを飲まないと一日が始まらないですね」
―こだわりが強そうですが、コーヒーを淹れる時は豆を炒るところからやりますか? 挽くところから?
「さすがに焙煎はお店でやってもらいます。豆を挽くのはミルで、自分の手でやります。電動は音がうるさいですね。手動の方が自分でやっている感が出ていいですよね」
―自分で手間をかけ、時間をかけて丁寧に飲むのが好きなんですね。
「朝は時間がないので、そこまで丁寧にできなかったりするんですが、時間がある時に、いつもとは違うドリッパーを使ってゆっくり淹れたりはします」
―ドリッパーをいくつも持っているんですか?
「3種類くらいですね。YouTubeで『丁寧な暮らし』みたいなチャンネルがあって、そういうのを見て学んでいます。理想は丁寧な暮らしですけど、せっかちなのできっと無理ですね」
マイナビ仙台レディース公式YouTube
「まんちゃんプレダクション」~選手紹介トーク、隅田凜選手編
隅田選手のこだわりのコーヒートーク。美味しいコーヒーを仲間にふるまうことも
―マイナビの仲間たちと駆け抜けてきたWEリーグ元年。この仲間とサッカーができて良かったと思うことは?
「毎年メンバーは変わりますし、監督、スタッフも変わることもあります。みんなと一緒にサッカーをしているということが、幸せで嬉しいことです。毎年、シーズン終盤になると『このメンバーでサッカーができるのもあと少し。後悔しないように』ということは考えながら練習しています」
―サッカー選手は、その年によって環境が変わったり、仲間の入れ替わりもある。特殊な職業でもあります。
「そうですね。毎年別れがある。それは悲しいですけど、サッカーをやっているからこそ出会えた仲間なので、毎日を大切にしたいです」
プロサッカー選手を目指す子どもたちに憧れられるように。輝く姿を示していきたい
―選手として、どのようにサッカーと向き合っていきたいですか?
「WEリーグが始まって、自分のサッカー人生も大きく変わったポイントです。正直、WEリーグになって、もっと注目されて、もっと多くの観客も見に来てくれるんだろうなと思っていました。結果や観客数も少しずつ減ってしまっている現状は悔しいし、悲しい。でも、この先のことは、自分たちのこれからの結果次第で変わるし、自分たちの手に懸かっていると思います。小さい女の子たちにも、『こうなりたい』と思ってもらえる憧れの存在になりたい。そこは使命でもあると思っています。女の子たちに夢を与えるためにも、この素晴らしい環境でサッカーができることに感謝しながら、この先は今年以上にもっともっとチームも自分も良い方向へ進んでいけたらと思います」(完)
Photo by 土田有里子
フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。