
チームの一体感を作り出す若狭大志。ほほ笑みのDFはベガルタ仙台のJ1復帰に全ての力を注ぐ【前編】
Interview
FOOTBALL
(提供:ベガルタ仙台)
今年2月にJ3福島ユナイテッドFCからの移籍加入が発表された鎌田大夢選手。攻撃に類まれなるセンスを発揮する20歳は、J2の舞台で存在感を示し始めています。試合出場を重ねる毎に、成長を見せる鎌田選手の仙台での日々や未来への展望を聞きました。(前後編)
ーJリーグ開幕から約3か月、もう仙台の環境にもすっかり慣れましたね。普段チームの中では誰と話をすることが多いですか?
「やっぱり歳の近い選手たちですね。真瀬(拓海)君、(加藤)千尋君、ナグ君(名倉巧選手)、モト君(中島元彦選手)とか。そしてソネ君(大曽根広汰選手)も。そのくらいの同年代の選手と話すことが多いです」
ー鎌田選手は小畑裕馬選手と同い年で最年少ですね。今年のベガルタには若手選手が多いですよね。
「そうですね。同年代でワイワイしています」
ー面倒をよく見てくれる先輩はいますか?
「千尋君ですかね。でも千尋君だけでなく、みんな本当に優しくて、気遣ってくれます」
ーサッカー以外の素顔も教えてください。オフの日はどんな過ごし方をしていますか?
「全く、しゃべれるようなことはしていないです(笑)最近のオフは、千尋君、ソネ君とちょっと遠いところまで行ってお昼ご飯を食べて、ソネ君の財布を買いに行ったくらいです」
ー趣味はありますか?
「ないですね……。家でゴロゴロしていることが多いです(笑)あ、でも最近はゴロゴロしながら、釣りのYouTubeを見ています。釣りをやっていこうかな、誰か一緒にやってくれないかなとか考えています」
ー釣りと言えば、遠藤康選手じゃないですか?
「そうですね! でも、釣りって、朝早かったりするじゃないですか……。朝はちょっと苦手ですね(笑)」
試合出場時間を伸ばしながら、仙台でのプレーに手応えも感じ始めている(提供:ベガルタ仙台)
ー仙台に移籍してきて、徐々に出番も増えてきました。初出場は途中出場だった町田ゼルビア戦。 今、仙台で試合に出場して、感じることはどういうことですか?
「自分は、去年からもっと上のカテゴリーでもできるという自信を持っていました。仙台に来て、練習をして、いざJ2でもしっかり通用する部分もあるなと思っていて、実際に試合でも自分のプレーができました。そんなに多くはない出場時間でしたけど、また新たな課題も見つかりました。ご自分にとって得ることができたものは(出場した)時間以上に多かったと思っています」
ー2試合途中出場が続いて、ヴァンフォーレ甲府戦では初めて先発のチャンスが巡ってきました。その試合で決勝点につながるプレーをし、一つ結果を出しました。自信を持ってプレーができたというところが大きかったですか?
「そうですね。自信を持ってやることができました。練習中も、そして途中出場でミナ君(皆川佑介選手)とか(富樫)敬真君とか、(氣田)亮真君とはしっかりコミュニケーションをとっていて、『ここでボールを持った時は、ここの位置にいて欲しい』とか、連携面でお互いのポジショニングの話も結構してたので、そういうこともあって、攻撃の起点になれたのかなと思ってます」
ー甲府戦での富樫選手の2ゴール目。アシストのひとつ前のワンタッチパスが光っていました。フォギーニョ選手からのパスを受け、DFライン裏の皆川選手へパスを出すというシーンでしたが、どういうイメージを持っていたのですか?
「最初、ミナ君がフォギーニョにパスを出した時に、フリーになって前を走っていくのが見えました。フォギーニョから僕がパスをもらった時には、一つ裏に出せばチャンスになるなと考え、ギリギリまでミナ君の動きを見てパスを出しました」
ーゲームの結果を左右するファインプレーでした。富樫選手のゴールが決まった後には、鎌田選手の方が仲間に揉みくちゃにされていましたね。
「そうですね。みんながサポーターの方々に向かって、僕のことをアピールしてくれたのでとても嬉しかったですね」
ーパスを出すことで味方を輝かせることもできるし、自分自身も輝いていますよね。
「もちろん点も取りたいと思います。自分もゴールを常に狙ってるんですけど、昔からアシストをすることの方が多かったと思います。点を取らせるっていう事も、今でもやっぱ好きだと思うので……。そうですね(笑)」
練習時も軽やかにボールを操る。足元の技術は確かだ
ープレーする位置がサイドハーフであったり、ボランチであったりとその時によって異なるとは思うのですが、自分自身でゴールを狙って行くとしたら、どういう形が理想ですか?
「この形というのは、あまりないんですが、やっぱり相手の逆を取るのがすごく好きです。ドリブルで相手の逆を取って、シュートでもキーパーの逆を取る、みたいな。理想としてはですけど」
ーそういうところは鎌田選手の性格でもあるんでしょうか。相手の逆を取りたい、少し欺きたいというような(笑)
「練習でも、癖なのかわからないですけど、シュートを打てるシーンでも、もう一つボールを持って、相手の逆を完全に取ってから打ったりすることもあるので。本当に、それは良い時もあればそうでない時もある(笑)性格もあるんですかね。自分では分からないです」
ー福島時代から、「鎌田選手はテクニックもあり、天才的なプレーも繰り出すことができる」という話を聞いていました。プレーのアイディアなどは、ひらめきから来るものなのかなと思っていたのですが、緻密な計算がありそうですね。
「いや、完全に感覚ですね。考えたりというよりは、目の前の相手を見て、相手次第でプレーを変えたりしています。その時、その時の感覚を大事にしています」
豊かなパスセンスにドリブルでの仕掛け。ボールを持つと何かが起こりそう(提供:ベガルタ仙台)
ー仙台に来てから新たな課題が見つかったということですが、原崎政人監督から求められていることというのはどういったことでしょうか?
「今、仙台の一つの特徴にもなってきている前線からのアグレッシブな守備でボールを奪い切って、攻撃に持っていくというシーン。名倉君や亮真君、フェリぺ(カルドーゾ選手)がやっているように、仙台で試合に出るには、そこは必要な能力だと思います。絶対にやらなきゃいけない。それともう一つは、僕は攻撃の部分で評価され試合で使ってもらっていると思うので、ゴールに直結するようなパス、シュートやドリブルで攻撃に変化をつけていくことが求められてるのかなと思います」
ーここまで出場試合を振り返ってみると、ボランチでもサイドハーフでもそれぞれで、鎌田選手の良さを表現していますよね。ポジションが変わる中で意識していることはどういうことですか?
「ボランチの時は全体を見ながら攻撃も守備もしないといけないです。去年からの課題でもあるんですが、コーチング(声掛け)でFWやサイドハーフの選手を動かして、自分のやりやすいように守備をするということはすごく意識をしています。サイドハーフだったら後ろには『ついて来い』と言うぐらいの気持ちでアグレッシブに守備をしないといけないです。攻撃でもサイドとボランチで、やることはそこまで大きくは変わらない。少し違うとしたら、ボランチではもっとボールに関わり続けないといけないとか、サイドハーフだとやっぱりボールに寄るだけじゃなく、中に抜けることも求められてきます」
ー両方のポジションができるからこそ、 一方で出た時に、もう一方のポジションの選手の気持ちもよくわかるのではないですか?
「そうですね。やっぱりそれはあると思います。サイドハーフの選手は『ここにいるだろうな』と思って、パスを出したりする時もあります。そして実際にいてくれたりもするので、そういう面でも相手の気持ちが分かるということはあると思います」
サイドハーフとボランチ。異なるポジションでその実力を発揮する
ー鎌田選手は、サポーターにとって「ボールを持つとワクワクする」という存在。ご自身でもそういうタイプの選手が好きということですが、影響を受けた選手、好きな選手は誰ですか?
「実はそんなに『この人に憧れていました』というのはないです。試合前等に動画で見たりするのは、バルサの昔のシャビやイニエスタ。その頃のプレーを見るのは好きですね」(続く)
フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。