仙台スポーツ
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Interview

FOOTBALL

チームの一体感を作り出す若狭大志。ほほ笑みのDFはベガルタ仙台のJ1復帰に全ての力を注ぐ【後編】

(提供:ベガルタ仙台)

 

今年でプロ11年目を迎える若狭大志選手。持ち前のコミュニケーション能力とサッカー選手としての豊かな経験をベガルタ仙台でも発揮しています。これまでのキャリアや愛する奥様と過ごす仙台での日々について伺いました。

 

ー若狭選手のプロキャリアのスタートは2012年、大分トリニータでした。この大分ではJ1昇格を経験していますね。

「大分に入団した年に昇格プレーオフを経験しました。その時はプレーオフ制度が初めて導入されて、1回目だったので注目度も高かったんです。決勝の対戦相手はジェフ千葉で、国立競技場に何万人もお客さんが入ったんです。(公式発表された入場者数は27,333人)大分のFW林丈統さんがループシュートで点を取って1-0、スタジアムが最高潮になった瞬間に、監督に『ワカ、行くぞ』と言われました。プロ1年目で、この状況で試合に出るのやばいと思いました(笑)緊張が半端なかったです。ジェフのベンチからは、オーロイというすごく大きい選手が出てきました。『こんな大きな人と競らなきゃいけないの?』と衝撃的でしたけど、とても良い経験でしたね」

ープロ1年目からそんな大舞台を経験できるなんて、なかなかないことですよね。

「本当に。あれ以上に緊張するような経験はないと言っても過言ではないです」

ー競り合う相手のオーロイ選手はJリーグで一番の長身で話題でした。確か身長が2 メートルを超えていましたよね。現在のチームメイトのGKストイシッチ選手も202 cm。どちらが大きいのでしょうか?

「同じくらいじゃないですか。ネージャ(ストイシッチ選手の愛称)の方が大きいような気もしますけど……。204cm? オーロイの方が大きいんですね」

ベガルタ仙台 若狭大志選手

練習の合間に原崎政人監督と意見を交わす。思ったことは積極的に伝えている

 

ーJ1昇格を経験している若狭選手。今年ベガルタも1年での J1復帰を目指す上で大きく力を発揮してくれるのではないかと期待してしまいます。

「大分で J1昇格を決めた年は、チームのみんなが同じ方向を向いていたんです。同じ方向を向くと口では簡単に言えても、実際にそれはとても難しいことです。チームが一致団結して、誰一人ネガティブなことを言わず、明るかったです。ワイワイするところはワイワイして、しっかりやるところはしっかりやる。雰囲気がとても良かったので、仙台もそういう方向に持って行きたいなと思っています」

ー一体感というところで言うと、第9節レノファ山口戦で、キム・テヒョン選手が退場しまい、数的不利の状況を乗り越えて勝利。チームもスタジアムも一つになる雰囲気がありましたよね。

「そうですね。あの試合はすごく良かった。あの勝利はすごくチームにとっても大きかったと思います」

ーその山口戦で若狭選手は途中出場。前半の内に急遽試合に出ることになり、後半にはチームを救うヘディングでのクリアも見せました。

「そうなんですよ。そのプレー、もう少し大きくピックアップしてくださいよ。(前半に相手シュートを防ぐヘディングを見せた)平さん(平岡康裕選手)だけがすごい! という雰囲気になってますけど、俺もしっかり一点守ってますよ! お願いしますよ(笑)」

ー若狭選手も間違いなくヒーロー級の活躍でした。試合後の取材では、コロナ禍の影響で話を聞く選手も限られた人数だったりするので……。どのメディアも間違いなく若狭選手の話は聞きたかったはずなんですけどね。

「平さんのヘディング(でクリア)、派手にバーンと頭を振っていたので(笑)俺も、もうちょっと派手にやればよかったかなと思いました」

ー1点取られてしまうかもしれないというピンチを救うのも、 DFとしては大きな見せ場。大仕事でしたね。

「そうですね。後ろの選手たちは得点を取るという機会がなかなかないので、逆に1点守れたら、1点取れたというような感じですね。一つそういうところで目立ちたいですね」

ベガルタ仙台 若狭大志選手

チームが一体感を持って勝ちきったレノファ山口戦。若狭選手は急遽の出番にも安定したプレー(提供:ベガルタ仙台)

 

ーCBに優れた選手が多い中で、若狭選手は平岡選手とコンビを組むことも多いですね。

「平さんは今年36歳、本当にすごいですよ。よく動けますしね。でも試合の終盤になってオープンな展開になった時に、実はちょっと疲れている時もあるんです。そういう時は『平さん、そこは俺が行く!』って言って、俺が頑張ります。めちゃめちゃ良いコミュニケーションが取れていると思いますよ。頑張っています。平さんはすごく優しくて、キャンプの時もずっと話をしていましたし、本当に話しやすい先輩です」

ー同じCBでも異なる良さがあると思うのですが、平岡選手から吸収したいことはどんなところですか?

「平さんはディフェンス力が高いです。シュートブロックとかが上手いですね。そういうところは僕も身につけていきたいと思っています。僕も、シュートブロックはもともと得意ではあったんですけど、間近で見ていてやっぱり平さんはすごいなと思います。どんどん真似していきたいですね」

ベガルタ仙台 若狭大志選手

持っている技術を更に高める。毎日の練習も充実している。

 

ー仙台という新しい環境で、サッカー以外の時間はどんなことをして過ごしていますか?

「結婚する前は、オフには基本的にはゴルフに出かけていました。結婚したのは2年ほど前なのですが、それからは奥さんと一緒に買い物に行ったりすることが多いですね」

ー結婚したのが2年前ということは、まだまだ新婚さんですね。

「そうなんです。この間、オフシーズンに身内だけでやっと結婚式を挙げることができました。休みの日は奥さんの行きたいところに一緒に行くということが多いですね」

ー仙台ではどこかに出かけましたか?

「最初のオフに塩釜の方に出かけて、塩釜神社や市場に行きました。最近だと愛子(あやし)の方に出かけました」

―愛子ですか?

「はい、愛子です。観葉植物が好きで、駅の方のお店に探しに行ったら、そこで良いものがたくさん見つかったんです。店員さんに『仙台で、他にたくさん植物が置いてあるところはないですか』と聞いたら、 『愛子の方にありますよ』って教えてくれました。そこに2人で行ったら、もう品揃えがすごくて、奥さんもテンションが上がってしまいました。もう2、3回通っています。ガーデンガーデンというお店ですね」

ー宮城県内でも随一の品揃えのお店ですね。

「あそこはすごいですよ。そして安い。東京にいた時は青山の店に通っていたんですが、めちゃめちゃ高くて……。仙台では観葉植物がすごく安くて、値段も半分くらいなんじゃないかなっていうものばかりです。おしゃれだし」

ーそれでは、若狭家にはたくさんの緑があるんですね。

「今、大きいのが二つと小さいのが二つ。それ以外に花も沢山ありますね」

ー休みの日はすべて奥さんに捧げている感じですか?

「奥さんはまだこっちにもあまり知り合いがいないので。俺も知り合いはいないですけど、サッカー以外でチームメイトと話したりすることもできます。気楽に話せる相手がいない中で、少しでもストレスをためないように、奥さんがしたいことは一緒にします。地元に帰りたい時はいつでも帰ってもらえるようにと、奥さん第一です」

ベガルタ仙台 若狭大志選手

苦しい練習の中でも若狭選手は笑顔を見せる。その良い雰囲気は周りにも広がっていく

 

ー若狭選手が仙台で達成したいこと、思い描くこの先のビジョンはどういうものですか?

「1年で仙台を J1に復帰させたいという思いがあります。11年前に東日本大震災が発生し、被災をしたクラブということもあって、3月に行われたいわてグルージャ盛岡戦では、ちょっと特別な思いがありました。プレーをしていても鳥肌が立って、クラブのために頑張らなければと強く思いました。何としても1年で J1復帰、そこに貢献したいなと思っています」

ーそのために、一体感のある雰囲気を若狭選手が作ってくれるのではないかと期待しています。

「明るくやっていきたいなと思いますね。仙台は何と言ってもユアスタの雰囲気がいいですよね。すごくテンションが上がります」

ー若狭選手は対戦相手としてユアスタを訪れたことがありますよね。

「大分時代に1年間 J1だった時があって(2013年)、その年の仙台戦はベンチで試合には出ていませんでした。でもスタジアムの雰囲気を見て、すごいなと思っていました。 その一回しかユアスタに来たことはなかったですが、自分の中ではいい雰囲気だなぁという印象が強かったです」

ーサポーターも応援歌等で大きな声が出せる頃でしたね。

「そうですね。とても良い雰囲気でした。また、ユアスタでそういう応援が見たいですね。僕も、選手としてそんなに先は長くないと思うので……」

ーいやいや、若狭選手はまだ32歳。このチームにはどれだけ先輩がいると思っているんですか?

「確かに。梁さん(勇基選手、40歳)の前では、そんなこと言えないですね。まだまだ頑張ります」(完)

 

村林いづみ
村林いづみ

フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。