仙台スポーツ
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Interview

FOOTBALL

万屋美穂は、柔らかな笑顔の奥に芯の強さを忍ばせる。胸に刻むのは『絶対的な自信と謙虚な姿勢。感謝』という高校時代の教え【前編】

マイナビ仙台レディースの左サイドに、この人あり。サイドバックもウイングバックもこなすDF万屋美穂選手です。サイドを駆け上がって素早く上げるクロスは天下一品。そこからいくつものチャンスが生まれました。長く仙台で過ごし、チームの変遷を見つめ続けた万屋選手に、仙台での日々や活躍の原動力について伺いました。(全2回)

 

ーWEリーグ第15節 AC 長野戦では2ゴールに絡む活躍でした。いずれも左サイドで攻撃の起点となりましたね。

「アシストはつかなかったですが、2点とも、アシストの一つ手前で攻撃に絡めたことは、個人的にはすごく嬉しかったです」

ーウイングバックの万屋選手が左サイドで高い位置を取れると、チームとしても大きくチャンスが広がることを証明できましたね。

「本当ですか? 嬉しいです。自分にマークでついてくる相手選手の位置にもよりますが、スペースが空いているのであれば、その人と駆け引きをして前のポジションをとるようにしたいということは考えています」

ー昨年9月に開幕したWEリーグは中断期を挟んで、後半戦の戦いが進んでいます。リーグ自体も最終戦まであと2ヶ月を切りました。

「最初は、チームの立ち上げから開幕までの準備期間も含めて、17ヶ月という長いスパンで考えていました。2022年になってから、後半戦が始まるまではすごく早かったです。始まってみれば、あと2ヶ月で最初のシーズンが終わる。時間の流れがものすごく速いように感じます」

マイナビ仙台レディース 万屋美穂選手

万屋選手は左サイドで攻撃にも守備にも大きな力を発揮する

 

ーこれまでのなでしこリーグとは異なるスケジュール感ですね。

「そうですね。皇后杯は一回戦で敗退してしまったので、余計に(リーグ前期と後期の)間が空いてしまったということもあります。しかし、その期間に鹿児島でキャンプもさせて頂いて、チームワークやプレーの質を上げるという部分では、いい準備ができたと思います」

ーキャンプなどでじっくりと連携面や完成度を高められるという期間があるのは選手にとってもメリットがありますよね。

「そうですね。松田さんのサッカーになって、それまでとはスタイルがガラリと変わりました。試合と試合の期間が空いたことで、しっかり戦術を落とし込める時間が取れました。チームにとってはプラスだったのかなと思います」

ーマイナビ仙台レディースで松田岳夫監督のサッカーに取り組んで、万屋選手ご自身はどんな楽しさや難しさを感じていますか?

「新しい選手も入ってきて、ポゼッションの質が上がりました。ポジショニングを上手く取る選手も多いので、ボールを繋ぐことができる楽しさがあります。スピードのある選手もいて、カウンターを生かすこともできる。場面によってサッカーを使い分けることが出来るということが今までにない形でした。最初はすごく新鮮でした。時間を作る時もあれば、素早くカウンターで攻めるという、使い分けができるということ。そこに面白さがあります」

マイナビ仙台レディース 万屋美穂選手

マイナビ仙台レディースのサッカーには欠かせない存在に

 

ー監督によってサッカーのスタイルが変化し、周りの選手の顔ぶれが変わっても万屋選手は試合に出続けていますね。

「ありがたいことですね。監督が変わったり、新しいシーズンになる時には、『常に試合に出られるか』という危機感は感じています。たとえ試合に出ていたとしても、自分の調子が悪ければ替えられるだろうし、自分の調子が良くても、私よりももっと調子の良い選手がいれば使われると思う。いい選手が多いので、危機感は常に持っています。それをあまり表に出さないんです。でも負けたくないという気持ちがあるので。練習の中から、いいプレーを出してアピールしていけるようにと思っています」

ー表には出さないけれど、負けず嫌いなんですね。

「はい、多分(笑)外からはどう見られているかはわからないですが……、淡々とやっているイメージだと思います。私もそんなに荒ぶるタイプではないので(笑)。それでも自分の中ではいつも思っています。『負けたくない』と」

ープロ選手として戦うWEリーグ。以前のなでしこリーグと違うなと感じる部分はどういう時にありますか?

「なでしこリーグの頃は仕事もしていましたし、練習も夕方からで、全体練習の後に自主練などもすると、帰りがとても遅くなってしまっていました。今はみんながプロなので午前中から練習ができる。午後はフィジカルトレーナーの山守(杏奈)さんと筋トレのメニューに取り組んだり、自分のための時間も増えました。次の日に向けての準備を余裕を持ってできるようになりました」

ー午後の時間帯の過ごし方は人それぞれですが、万屋選手はどんな風に過ごしてますか?

「基本的に週の前半は山守さんのメニューで筋トレをしたり、それ以外の日はトレーナーさんにケアをしてもらったり。本当に疲れている時は帰ってもう寝てしまいます。3時間ぐらい寝てしまうんですよ。そして夕ご飯の時間に起きるというように(笑)」

ー午後に寝てしまうと夜は眠れますか?

「眠れる時もあるし、なかなか寝付けない時もあります(笑)」

ーサッカー以外では、午後はどんなことに時間を使っていますか?

「クラブが竜泉寺の湯と契約をしているので、ゆったりと広いお風呂に入ってリラックスしています。誰かとお昼を食べに行くということもあります」

マイナビ仙台レディース 万屋美穂選手

選手としての時間も、プライベートも充実の日々を送っている

 

ー万屋選手と言えば、クラブの公式 YouTube でのMCぶりが板についていますね。様々な選手が出演していますが、企画などはどのように進めているんですか?

「出演する選手によりますね。どちらかというと『こういう企画をやって』と私が言うのではなく、ゲストとして出演する選手側から『こういうのをやってみたい』と提案をしてもらったり。 内容や企画の決め方も大分ゆるいです」

ーコーヒーや駄菓子を楽しんだり、時には恋愛トークも。どの回も、選手の趣味や個性が輝いていますね。どの回が特に楽しかったですか?

「(市瀬)菜々との、昔の写真を振り返る企画が楽しかったですね。懐かしいねってなりました。携帯に入っている写真を色々出してみて、『この頃こうだったよね』なんて話したりして」

マイナビ仙台レディース 公式YouTube
https://www.youtube.com/c/mynavisendai-ladies
万屋美穂選手の「まんちゃんプレダクション」は人気コーナー。

マイナビ仙台レディース 万屋美穂選手

人と同じことはしたくないという性格。自ら提案してくれたポーズもユニークだ

 

ーサッカーで活躍するのみならず、上手くトークを回したり、スポンサーのCMにも出演したりと、多才ですね。元々持ち合わせている能力なのでしょうか?

「サッカーとは関係ない雑談ですけど、私は小さい時にリトミック(音楽を聴いて体を動かし、リズム感や様々な感性を養う教育)を習っていたんです。母がやらせてくれて、リズム感がつきました。それから他にいろいろ習い事もしたんですが、リトミックをやったことが、いろいろなことにとても良い影響があったなと思いました。サッカーを始めたのは小学校3年生でしたが、リズム感は特にサッカーをする上では大事だと思っています」

ーどういう時にそのリズム感が生かされますか?

「本当に人それぞれだと思うんですが、ステップの踏み方やドリブルの仕方もリズムが関係あるのかなって思います。サッカーをする中で身につけていくこともありますけど、リズム感は大事だなって思います」

ー万屋選手のプレーの原点はリトミックなんですね。

「最初はそうでした。その後は色々やりましたよ。ダンスもやりましたし、水泳、体操、バレエも習いました」

ー踊れるサッカー選手ですね。ファン感謝祭などで披露していきましょう。

「あぁ、余計なこと言っちゃった(笑)」(後編へ)

 

Photo by 土田有里子

 

村林いづみ
村林いづみ

フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。