
マイナビの西野朱音は未来の大器。二十歳のネクストスターがチームと『ヤングなでしこ』で成長を示す【前編】
Interview
FOOTBALL
昨年9月に開幕した、女子プロサッカーリーグの「WEリーグ」。12月から約3か月のウインターブレイクを経て、3月5日に後期の日程が始まります。初代女王を目指すマイナビ仙台レディースのFW池尻茉由選手も後半戦での活躍を誓います。日々自分を磨き続ける、左利きのストライカーにお話を聞きました。
ーWEリーグ再開が迫る中での仕上げとなる鹿児島キャンプはいかがでしたか?
「普段2部練習をやることはあまりないんですが、体力的にきつい中でも前半戦の課題である、ゴール前でのくずしのシーンやゴールを決めるべきところで決めるということに取り組みました。それは個人の課題でもあるし、チームとしての課題として言われていたことでもあるので、意識してやっていたのかなと思います」
ー午前と午後の2部練習でハードなトレーニング。リーグ再開に向けてしっかり鍛え上げましたね。
「本当にしんどかったです(笑)トレーニング中はGPSをつけているので、運動量も数値が出るのですが、『みんな結構走っているなぁ』という感じでした。数字に表れるので自信になります」
ーキャンプ中、サッカー以外の時間はどんなことをして過ごしていたのですか?
「今回は一人部屋だったので、本当に個人の時間という感じです。チームでのミーティングもありましたけど、それ以外はそれぞれがケアをし、ゆっくり寝たりしていたと思います」
ー池尻選手は、長い一人時間は苦にならないタイプですか?
「全然苦じゃないです。一人部屋ラッキーという感じです。 YouTube を見るか、親とビデオ通話をして実家で飼っている犬を見せてもらったりしています。それが癒しです」
ー実家のワンちゃんの犬種は?
「トイプードルです。1歳になったばかりで、まだまだ子供。やんちゃで可愛いです。私は犬派ですね。仙台でも飼いたいぐらいです。でもキャンプや遠征があるので、そういう時はかわいそうだなぁと思って。いつかは飼いたいと思います」
WEリーグ後期は、勝利を引き寄せる仕事がもっとしたい
ーここからはサッカーに話を戻しますが、WEリーグ前期の戦いを振り返っていただけますか?
「順位自体は2位にいるんですけど、勝てる試合を勝ちきれず、勝ち点を積み重ねることができなかったです。1位(INAC神戸レオネッサ)とは大きな差がある。勝てる試合を勝てなかった、引き分けが多いということがもったいないなという前期でした」
―自分自身にフォーカスするといかがですか?
「個人的にも決めるべきところで得点が取れず、引き分けにしてしまったので、FWとして責任を感じています。マイナビベガルタ仙台レディースの時よりも、サッカー自体のレベルはアップしていると思うのですが、まだまだ足りないところが多いのかな。後期はチームとしても、また違った顔を見せられればいいなと思っています」
毎日、サッカーが楽しい。新鮮な喜びを感じながら『松田サッカー』に取り組む
―松田岳夫監督の求めることも非常にクオリティーが高いですよね。新しいサッカーのスタイルに取り組む中での難しさや面白さをどのように感じていますか?
「最初は本当に難しくて、頭がついていかず、体もついていかなくて……。これは本当に大丈夫かと心配してしまったんですが、松田さんが求めることに対して、自分の頭が整理できて体が動くようになってからは、大変さよりも楽しいという思いが勝っています。楽しいなと毎日思いながらサッカーをしています。それは本当に今までにない楽しみ方かなと思っています。これまで自分がポゼッションをやるようなチームに所属していなかったというのも大きいんですが、すごく新鮮な気持ちでサッカーができています」
―頭が整理でき、体がついて行くようになったのはいつ頃からですか ?
「夏ぐらいからですね。自分では遅いと思うんですが」
―前期の結果を考えてみると、もっとゴールを取りたかったという悔しさのほうが勝っているようですね。
「そうですね。悔しい気持ちの方が大きいです」
―しかし、チャンスを作り出すことや味方を生かすというところはすごく出来ていたのではないでしょうか?
「そうですね。自分も周りに生かしてもらっているので。(宮澤)ひなたも自分のことを使ってくれて、逆にひなたのことも、もっと生かしてあげられればなと思います」
仲間を生かし生かされる関係。互いに磨き合う大切な仲間(提供:マイナビ仙台レディース)
ー後期の試合が本当に楽しみになります。前期の中で、もっとも印象的だった試合は?
「(第8節日テレ・東京ヴェルディ)ベレーザ戦ですかね。今まで自分が仙台に来てから一度も勝ったことがない相手でした。勝てたということが、自分にとってもチームにとってもプラスになった試合でした。この試合は、本当に守備の時間が長かったんです。そんな苦しい中でも、勝ち切れたということが自信にもなりました。勝てた喜びもありますが、しんどかったという意味でも印象に残っています」
―マイナビ仙台レディースとなってWEリーグの戦いが始まってから、あれだけ守備に回るということも他にはなかったですね。
「多分そうだと思います。一番走っていた試合だと思います」
ーそういう試合で勝ち切れたということを考えると、なでしこリーグ時代のマイナビベガルタとは違う顔で対戦ができた試合でもあったのではないでしょうか?
「はい。今までだったらやられていたところでやられなかった。良い方向に進んでいるんだろうなって。自分で言うのもなんですけど、成長を感じることができた試合だったと思います」
積み重ねてきたトレーニングに自信を持って、後期の試合に挑む
ー後期の試合に向かっていくにあたって、松田監督は『よりゴール前の所、攻撃の迫力も増していきたい』という話をしていました。そこに取り組むにあたって、池尻選手がより意識していくことは?
「これまで周りを生かそうとし過ぎていることは感じていたので、自分で行くべきところは仕掛けて、シュートを打とうという気持ちを持っています。練習試合でも、自分が持っているものを出そうということは思ってやってきています」
ーキャンプの実践練習でより良くなっているという感覚はありますか?
「リーグ戦でシュートを打てていない試合も実際にありました。そこに比べるとゴールに入るか入らないかは別として、シュートの意識の部分で変わったかなと思います。試合で結果を出せればさらに自信につながるのかな」
(後編へ)
Photo by 土田有里子
フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。