仙台スポーツ
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Interview

FOOTBALL

マイナビの西野朱音は未来の大器。二十歳のネクストスターがチームと『ヤングなでしこ』で成長を示す【後編】

「朱音はイマドキの子です」とチームメートに紹介される西野選手。自分の言葉で考え示し、年上の選手とも柔軟にコミュニケーションを取っていきます。世代別代表でもその力を示す20歳、サッカーのルーツと憧れの存在を教えてもらいました。

 

―西野選手の出身は富山県ですね。

「はい。富山県富山市です」

―柳沢敦さんや中島裕希選手、西村拓真選手など、富山県出身で活躍するJリーガーも結構いますね。

「はい、増えてきたと思いますね」

―西野選手がサッカーを始めたきっかけはどのようなことでしたか?

「小学校1年生の時に、2歳下の従弟が先にサッカーを始めていました。その練習を見に行った時にボールを蹴らせてもらってすごく楽しかったんです。それで始めました」

マイナビ 西野朱音選手

リフティングにも細かな技を織り込む。西野選手は器用にボールを扱う

 

―中学校では「富山レディースSC」という女子チームでサッカーを続けました。

「他の市にはいくつかチームがあったんですが、ここは富山市唯一の女子チームでした。入ってみたら、選手の年齢層も幅広くて、社会人の選手もいました。大人の試合に出たり、U-18のカテゴリーで高校生と一緒に試合に出たり、すごくたくさんの経験を積ませてもらいました」

―中学卒業後は地元を離れて、仙台の常盤木学園高等学校へ。どのような経緯がありましたか?

「小学校5年生の時にテレビで常盤木の試合を見ました。高校選手権の決勝戦で常盤木が優勝しました。その試合を見た時から『ここに行きたいな』という希望がありました。
その気持ちが中学校でも変わらなくて、練習会に参加させてもらって、常盤木に進学することに決めました」

―親元を離れて仙台での寮生活はどうでしたか?

「めっちゃ寂しかったです。ずーっと泣いていました。入寮した時から1年生のうちはずーっとホームシックです(笑)高校2年生で生活にも慣れて、友達も増えてきた頃にやっとホームシックを卒業しました。そこまでは結構長かったです」

マイナビ 西野朱音選手

2020年にマイナビベガルタ仙台レディースに入団。まだ制服姿が初々しい17歳

 

―高校を卒業して、当時なでしこリーグ1部のマイナビベガルタ仙台レディースに入団。そして翌年にWEリーグが始まりました。サッカーを続けてきた中で、「プロ選手」になるという未来はイメージしていましたか?

「全然イメージできていなかったです。プロになるということが決まった後も、そんなに実感はなかったです。でも実際になってみて、午前中に練習できて、午後は自分の時間という過ごし方をして『あぁ、プロなんだな』と感じます」

―お手本としている選手や憧れの存在はいますか?

「チームで(先発で)試合に出ているボランチの2人、(長野)風花さんと(隅田)凜さんですね。二人はずっと試合に出ていますし、近くでプレーを見ていても上手いなぁと思います。なでしこジャパンの選手なので、間近で見て盗めるところは盗みたいと思っています。本当に上手いんですよ。でも、その二人を追い越さないと試合には出られない。ボランチのポジションは、2人しか出られないので負けたくないなという思いは常にあります」

―長野選手と隅田選手、どんな時に2人の上手さを感じますか?

「私には見えていないところが見えているんですよ。自分だったら出せないなというところにボールを出せたりします。見えているところやポジションの取り方が違うんだなと思います」

マイナビ 西野朱音選手

隅田選手(12番)や長野選手(19番)の動きを間近で学ぶ。いつか追い越す存在になりたい

 

―それは経験や技術など……、何が違うのでしょう?

「うーん……。あんまり周りを見ないタイプの選手もいるんですよね、ボランチって。感覚でプレーする選手もいます。でも二人は周りをよく見ているなと感じます。自分にはまだできないな。頑張らないといけないですね」

マイナビ 西野朱音選手

チームの可愛い妹も、世代別代表では頼れるリーダー的存在

 

―代表というところでいうと、西野選手ご自身も継続してU-20日本女子代表に選ばれています。

「世代別代表では、ポジションもチームと違ってCB(センターバック)をやっているんです。更に代表メンバーの中では最年長(※1)なので、そういう意味ではチームを引っ張っていかなければいけないというところもあります。CBはボランチと違って、後ろにすぐゴールがあります。自分のプレーが失点に直結しかねないので、そういう意味でも責任感も生まれます」

※1 西野選手は2月4日生まれ。早生まれの選手は、代表の年齢カテゴリーでは同じ年に生まれた一学年下の選手たちとプレーしている。

―同世代ばかりのU-20日本女子代表はどんなチームですか?

「WEリーグに所属している選手もいれば、高校生や3~4歳年下の選手もいるんです。すごくフレッシュな感じで、みんな生き生きサッカーをしています」

―マイナビでは最年少、代表では最年長。更にいろんなポジションを担当している西野選手。いろんな顔を持っていますね。

「もう頭の中は、ごちゃごちゃになりますよね(笑)」

―その時々で立場が変わるということは、ものすごく適応力が磨かれますね。

「マイナビにいるときは最年少なので、甘えている訳ではないですが、上の人に任せてしまうところが多くて……。でも代表に行くと『自分が上だからちゃんとしなくちゃ』というところがあって。そういう切り替えが、最初は変な感じだったんです。でも、たとえマイナビで最年少でも甘えているばかりではだめだなって。そういう責任感も増したので、代表にも自然に入っていけるというか。やるべきことをしっかりとやっていくだけかなと思います」

マイナビ 西野朱音選手

どんな時も朗らかな西野選手。20歳の成長はまだまだ止まらない

 

―サッカー選手としてどのように成長していきたいですか?

「活躍し続けることが目標です。試合に出ることが仕事。プロとして試合に出てなんぼだと思います。そういうところでは、もっと練習から高い意識を持ってやっていかなければいけないと思います」

―将来的にはなでしこジャパンも目指していきたいところですか?

「今の世代別もフル代表も、監督やスタッフが一緒なんです。世代別の合宿の時に、池田太監督も話していましたが、今やっていること全てがフル代表につながっている。そういう意識を持ってやっています」

―今、20歳。この先経験を重ねて、日本を代表するような選手になって行って欲しいですね。

「はい、そうなれるように本当に頑張ります!」(完)

 

Photo by 土田有里子

 

村林いづみ
村林いづみ

フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。