
『一番大事なのはチームの勝利』WEリーグ前期得点女王・白木星は自然体でゴールを目指す【前編】
Interview
FOOTBALL
マイナビ仙台レディースで今年唯一の新成人・MF西野朱音選手。スケジュールの都合で成人式には出られませんでしたが、2月4日に20歳の誕生日を迎え、いよいよ大人の仲間入りを果たしました。成長著しいボランチは、WEリーグ後半戦での活躍を誓い、今まさに自分を磨いています。(全2回)
―成人おめでとうございます。新しい年に「二十歳の誓い」は立てましたか?
「10代が終わってしまうのが寂しい気もしますね。チームでも最年少で、10代も一人だけでした。(1月末時点。2月からはユースで高校3年生のMF猪瀬結子選手がトップチームに昇格した)まだ10代のままでいたいような気もします(笑)でも20歳になるということで、去年までの結果では満足できません。それ以上の結果を出していけるように、責任や覚悟を持ってやっていきたいですね」
―西野選手から見た「大人」ってどのようなイメージがありますか?
「かっこいいなと思います。チームのみんなのことを一番年下からの目線で見ているので。みんなしっかりしているし、自分もそうなれるのかなぁと思ったり……、でもまだ無理かな(笑)」
みんなに可愛がられる西野選手はチームの妹的存在
―開幕時からしばらくは、チームの中では最年少。末っ子的な立場はいかがですか?
「自分よりも子供っぽい船木(里奈)さんという人がいるので、そこと比べると『大人っぽいね』『落ち着いているね』と言われます。船木さんと私はみんなから見たら下の子。年は違いますが、似たような扱いをされています(笑)」
―チームメートでは特に高平美憂選手と仲良しですね。
「はい、めっちゃ仲良しです。ご飯も一緒に食べたり、オフの日も一緒に出掛けたりしています。一番一緒に過ごしているかもしれません。マイナビベガルタに入った時に、まだ車を持っていなくて、高平選手と宮本(華乃)選手に送り迎えをしてもらっていて、その時にご飯も連れて行ってくれました。優しかったですね。そこから仲良くしてもらっています」
―今シーズンのチーム全体の雰囲気はどう感じていますか?
「みんな仲がいいですね。優しいです。サッカー以外の時でもずっと笑っていられるようなチームです。面白い人も多いです。船木さん、武田(菜々子)選手、長野(風花)選手が集まると、これは何か面白いことが始まるなと(笑)」
プロ選手として毎日のトレーニングに打ち込む。競争はここから始まっている
―常盤木学園高校を卒業して、2020年にマイナビベガルタ仙台レディースに入団。
そして2021年秋にWEリーグが開幕しました。サッカー選手としての2年間はどのような時間でしたか?
「高校を卒業してなでしこリーグに入ったばかりの時は、消極的で自分のプレーも出すことができませんでした。試合にも出ることができませんでした。でも、その時期の積み上げがあったからそこ、WEリーグに変わった去年から、少しずつ試合に絡むことができるようになりました」
―試合に出られない中で、どのようなことを考えて練習をしていたのですか?
「出られないことへの悔しさが一番強かったです。去年、試合に出たいと考えた時に、今までのままではだめだと思いました。練習中も試合の中でも、少しずつ味方に『こうして欲しい』と要求できるように変わっていったので、それは良かったと思います」
―サッカーに年齢は関係ないですが、自分以外が全員年上の選手という環境で、要求していくというのはハードルがありますよね。
「そのハードルは高かったです(笑)もともと周りの選手に意見を言うタイプでもなかったので。『こうして、ああして』という選手ではなかったので、周りに声を出して要求するということが一番難しかったかもしれません」
―その難しいことに意識して取り組むことで、試合出場にもつながっていったのではないですか?
「はい。自分自身を出すというか、自分のプレーを出すこともそうですし、声を出し要求できるようになったのが去年かなと。そこで試合に出られる回数も増えてきました」
後半からピッチに入った西野選手。どんな状況にも適応し、堂々とプレーしている(提供:マイナビ仙台レディース)
―WEリーグの前期では5試合に出場しました。実際にWEリーグの舞台に立ってみてどのようなことを感じていますか?
「まだまだ自分は足りないなということですね。試合に出られたことは進歩でもありますが、一つ成功すると、その先に課題が出てきます。途中から出場して、私が試合に出てチームの流れを変えることができたか? と言われれば、変えることはできなかった。自分の中で『何かができた』という手ごたえもなかったです。だからこそ、後期が始まる今年は、メンバーに入る、試合に出るということを定着させる。出られるようになって、その上で自分のプレーを出していくことにフォーカスを当てていきたいですね」
―前期の試合の中では、後半始めからピッチに入るというチャンスも得ましたね。長い時間プレーする時に、西野選手が一番やりたいことはどういうことですか?
「私はいろんなポジションを経験しています。最近練習でボランチをやっています。去年の試合ではサイドハーフで出ることが多かったです。そういう時に、味方を追い越していく動きやハードワークすること、得点に絡むということを増やしていかなければいけないと思っています」
松田監督が求める運動量豊富で攻撃的なボランチを目指す(提供:マイナビ仙台レディース)
―一番勝負したいポジションは?
「やっぱりボランチですね」
―仙台は技術もあって個性豊かなボランチの選手がいます。他の選手にはない西野選手ならではの武器はどういうところでしょうか?
「ボールをさばくことはボランチにとって大事なことですが、私はより攻撃的なボランチになりたいです。後ろでボールを回すことも大事ですが、前に抜けだしていきたい。味方を追い越してゴールにつながる動きをし、前に自分がいるということですね」
―松田岳夫監督がボランチに求めることって、まさにそういうことですよね。
「そうだと思います」
―松田監督の指導を受けてからの進化はありましたか?
「高校の時はボランチをやっていても、効果的にパスを出したり、自分が前に抜ける動きは少なかったです。中央にいてボールをさばくというボランチでした。松田さんのサッカーでは、ボランチがハードワークしないとチームが成り立たないというのが一番の発見でした」
勝負したいポジションはボランチ。競争は激しいが一歩も引かない
―頭も体もフルに使うサッカー。若い西野選手はたくさんのことを吸収できますね。
「シーズンが始まったばかりの時は頭がパンクしていて(笑)これが続いたら私やっていけるのかな?と。難しいことが多すぎました。今でも、練習で難しいと思ったり、いったん止まってしまうという時はあるんですが、去年から積み上げてきたことで慣れてきたかもしれません。最初の頃に感じた難しさは今はあまりなくて、そうしたら次の難しさが出てきた……という感じで(笑)」
―次の難しさが追いかけてくるんですね。
「はい(笑)松田さんの練習メニューは工夫されていて本当にすごいなと思います。前にやっていたことにプラスして今度はこれも、みたいな。だから難しいです」
松田監督の練習は難しい。だからこそ強くなれる
―日々の練習の中で、特に西野選手個人に松田監督から要求されていることはどのようなことですか?
「ポジションの取り方ですね。ポゼッションの練習をやっていても、ゲームの練習をしていても、松田さんは選手の真ん中に入って見ていることが多いです。そこで『もっとこっち』とか、『もっと顔出さないと』とか、そういう要求は多いです。よく見られています」
―でも上手く対応できていますよね。
「続けていく上で、『あぁ、こういうことか』とわかる時があるんです。わからなくてもやり続けることでわかってきます。ポゼッションの練習をしていても、その時のポジショニングが実際のゲームの中で生きるのが松田さんの練習です。一つの練習では終わらないし、次に生かせる練習なので毎日が勉強です」(続く)
Photo by 土田有里子
フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。