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仙台育英学園高校陸上競技部 米澤奈々香選手インタビュー(前編)長距離は「気持ち」が大事。3年間の集大成に挑む、国内屈指の女子高生ランナー

「都大路」の愛称で親しまれる全国高校駅伝において、2年ぶりのアベック優勝を狙う仙台育英学園高校。女子チームで大きな活躍が期待されるのが、エースで主将の米澤奈々香選手だ。今夏のインターハイでは1500m、3000mの2種目で日本人トップの成績を記録。前編では、そんな米澤選手の競技人生を振り返るとともに、自身の強みや大事にしていることを聞いた。

 

―まずは米澤選手が陸上競技を始めた時期、きっかけを教えてください。

自分には兄が2人いて、どちらも剣道をやっていたのですが、その体力づくりとして陸上クラブに入っていました。自分も剣道を始めるタイミングで、同じように体力づくりをしたいと思い、小学1年生のときに地域のクラブチームで陸上を始めました。なので、当時はどちらかというと剣道がベースで、陸上は1年に1回ぐらい大会に出る程度でした。剣道は負けてばかりでしたが(笑)。

―当時から、走るのが得意だという感覚はありましたか?

特にありませんでした。中学生になって入る部活を決めるときに、どうしようかなと迷ったのを覚えています。それぐらい、自分に陸上の才能があるとは思っていませんでした。ただ、そこで陸上を選んだからこそ、今につながっているのかなと思います。

―それから中学3年間で、どのように意識が変わっていきましたか?

1年生のときに800mで初めて全国大会を経験しました。そのときは準決勝敗退で、全国との差を見せつけられましたが、そこから2年生のときにジュニアオリンピックの1500mで初めて3位に入賞することができ、3年生のときは、全中、ジュニアオリンピックで優勝することができました。なので、意識が変わったタイミングを挙げるとすれば中学2年のジュニアオリンピックなのかなと思います。ただ、2年の夏に疲労骨折をしてしまって、目指していた全中に出られなかったときがありました。そのけががあってから、自分なりに「今できることを一生懸命やろう」とより練習に打ち込めるようになったので、そこも意識が変わったきっかけの一つかなと感じています。

仙台育英学園高校陸上競技部 米澤奈々香選手

―それから中学卒業後、仙台育英学園高校に進むことになりました。静岡県出身の米澤選手ですが、どうして仙台育英を選んだのでしょうか?

釜石監督のお話を聞いたり、練習を見学させていただいたりして、自分に合う学校だなと感じました。両親とも話し合ったのですが、「県外に行くなら、強豪校で、指導力のある監督の下で練習をしたほうがいい」と言われて、仙台育英に進むことを決めました。

―中学を卒業してすぐに親元を離れるのは思い切った決断だったと思います。不安はありませんでしたか?

不安もありましたが、新しい生活への期待もあり、半分半分という感じでした。寮生活ですが、私と同じように親元離れて生活する仲間もいたので、そこは心強かったです。

―早速、高校1年時には全国高校駅伝大会で2区を走り、優勝を経験しました。

2区を走らせていただきましたが、案外、自分は1区じゃなければそれほど緊張しないタイプなので、いつもどおりリラックスしながらタスキを受け取り、自分らしく走ることができました。高校では初めての全国の舞台でしたが、先輩方に支えてもらって貴重な経験をさせてもらうことができたので、本当に感謝しています。

―トラック種目でも、2年時には実業団選手を交えた日本選手権の1500mで準優勝しました。

去年はインターハイをはじめ、いろいろな大会が中止になってしまったので、数少ない大会の中でどれだけ調子を上げて、いいレースができるかを課題としてやってきた1年間でした。日本選手権の前の大会では3000mで自己ベストを更新して、それが自信にもつながりました。想像以上にいいレースをすることができ、自己ベストに近い記録も出せたので、本当にうれしかったです。また、同年代との試合では、相手との駆け引きだったり、自分が集団を引っ張ったりする展開が多いですが、実業団選手や大学生との試合では、どこまで付いていけるか、どこまで粘れるかが勝負になります。そういった、いつもとは違うレース展開を学ぶことができたのも大きな収穫でした。

仙台育英学園高校陸上競技部 米澤奈々香選手

―そして今年、インターハイでは1500mで2位、3000mで3位と、2種目で日本人最高位になりました。

インターハイは初めての出場でしたし、しかも2種目に出るので不安はありました。ただ、2種目で結果を出そうとするとどちらも表彰台を逃してしまいそうだったので、まずは1500mに集中して、そこに懸ける気持ちで臨むことにしました。外国人留学生にはかないませんでしたが、まずは目標であった日本人トップをしっかり取ることができたのは良かったですし、1500mで結果を出せたことで肩の荷が下りて、その後の3000mは緊張せずに走ることができました。

―自身の走りの特長、強みはどこに感じていますか?

ラストスパートがいちばんの強みです。後半、体力がきつくなってから、ラストをしっかり絞り出せて全力を出し切れるところが今の自分の強みだと思っています。一方で、中盤でスピードを落としてしまう部分があり、そこは1年生の頃からずっと課題として残っています。少しずつ良くはなってきてはいますが、まだまだ改善の余地はあるので、これからもっと練習して記録更新につなげていきたいです。

―「ここだけは負けられない」というランナーとしてのプライドはありますか?

これといったものは特にありません(笑)。自分は計算して臨むというよりも、そのときの状態、状況に応じてレースを進めていくタイプなので、そういったモットーなどはあまりないですね。ただ、長距離は「気持ち」だと思っているので、自分の気持ちをいかにスタートに持ってくることができるか、あるいはレース中もどれだけポジティブに走ることができるかというのは、自分の中でも大事にしています。

仙台育英学園高校陸上競技部 米澤奈々香選手

(後編に続く)
取材日=2021年11月17日

 

■プロフィール
米澤奈々香(よねざわ・ななか)◎2004年2月24日生まれ、静岡県浜松市出身。小学1年時に地元の美園ランニングクラブで陸上競技を始める。浜松市立北浜中学校卒業後、仙台育英学園高校に進学。自己ベストは、1500mが4分14秒74、3000mが8分59秒57。

 

Photo by 渡邊 優

郷内 和軌
郷内 和軌

1992年10月14日生まれ、岩手県一関市出身。一関第一高校卒業後、仙台大学体育学部スポーツ情報マスメディア学科に進学。アルバイト等で執筆経験を積み、2015年4月より岩手県盛岡市の制作会社「(株)ライト・ア・ライト」に入社。地域限定スポーツ誌「Standard」の制作等に携わり、2019年4月よりフリーランスとして活動中。