仙台スポーツ
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Interview

FOOTBALL

見ている人の期待を裏切る快感。大きく羽ばたくGK、松本真未子の成長は止まらない【後編】

「GKというポジションの魅力を伝えたい」。その思いを言葉やプレーで余すところなく表現するマイナビ仙台レディースの松本真未子選手。GKならではの喜びやこだわりも聞かせてくれました。GKとして、一人の人間として、自らを磨く松本選手の今の声をお届けします。

 

―浦和ではつかめなかったスタメンというポジションを、移籍してきた仙台で1年目につかむことができました。これも大きな決断だったのではないですか?

「浦和は育ててくれたクラブだったので、そこを出るということはあまり考えられなかったです。でも、自分では『その時』が来たという感じでした。そういうタイミングなんだなということは感じました。ここにいて学べるものも多いけれど、クラブ(浦和)に甘えていた自分もいたのかなと思いました。もう一度戦ってみようということで仙台への移籍を決断しました」

―ルーツとして「赤い血」が宿っている松本選手がマイナビのユニフォームを着て、対戦相手としてWEリーグ第9節浦和戦のピッチに立ちました。どういう気持ちで試合をしたのですか?

「自分としてはここまで成長したという姿を、恩返しとして見せたいゲームでした。でも、ふがいない結果(1-3で今季初黒星)になってしまったので、どういう顔をしていいかわからない部分もありました。自分が試合に出ているところを見せられたことは、成果としてあったので、後期に対戦するときにはもっといいところを見せたいなと思います」

マイナビ仙台レディース GK松本真未子選手

悔しさも喜びも、今味わうすべてが松本選手をスケールの大きな選手へと成長させる

 

―最初は助っ人というところから始まった松本選手のサッカー人生。ここまでGKというポジションを担ってきて感じる「GKの魅力」はどういうところですか?

「FWがシュートを打って、みんなが『決まったな』と思う雰囲気の中で、自分がもう一伸びできた(ゴールを守れた)時。スタジアムを『うわー』と言わせた時が快感です。観客を『裏切った時の気持ちよさ』があるかもしれないです(笑)」

―興味深い感覚ですね。以前ベガルタ仙台、レノファ山口を率いた渡邉晋さんは「GKはその手に勝ち点3を握っている」とまで話していました。それだけ重要なポジションでもありますね。

「勝ち点3を握っているとまで言われると……GKとしてはちょっと重いですね(笑)でも、GKは『ピッチの中の監督』と言われ、一番後ろから全体を見ることができます。後ろから10人の仲間を見ていてワクワクします。安心感を与えるためGKの自分がみんなをコントロールできる楽しさを感じています。チームの雰囲気や状況、試合中もいろいろと変化していきますが、そこをコントロールできる。そこにはGKとしてだけではなく、人としても成長できる魅力があるなと感じています」

―試合中の「味方のコントロール」、声掛けやプレーなど方法は様々あると思いますが、松本選手はどのようにしているのですか?

「選手一人一人の性格は違うし、強く言って伸びる選手もいれば、そこで下を向いてしまう選手もいます。反発してくる選手もいます。でも、後ろから見た自分が伝えないと感じられないこともあるので、言い返されたときに『じゃあ自分はこう言ってみようか』と考えたり……。一人一人をよく観察するようにしています」

マイナビ仙台レディース GK松本真未子選手

仲間とはどんなことでも納得いくまで話し合い、よりよい関係を築いていく

 

―練習中や試合のハーフタイムなども、味方と話し合う姿をよく見かけます。

「そうですね。ピッチ外でもよく話します。GKみんながそうではなく、私だけかもしれないですけどね」

―後ろから見た上で、意見を伝えて、仲間に反発されたときはどうしていますか?

「一度その意見を受け入れて、こちらの意見も言います。『自分的にはこうだったけど、こっちでいいの?』と提案してみたり……」

―高校生の時は委縮してしまったような場面でも、今であれば年上の選手だとしても意見を言えそうですね。

「そうですね。意見を言うということは、それだけ自分のプレーに自信を持っていないといけない。そういうことは改めて感じています」

―自分のプレーに自信を持てるようになったきっかけは?

「場数を踏んだからかもしれません。年齢を重ねるにつれて、やっていいことも悪いことも体に染みついてきましたしね」

マイナビ仙台レディース GK松本真未子選手

GK練習では細部にこだわり地道に同じ動きを追求する。その積み重ねが試合でビッグセーブを生み出す

 

―GKとしてより磨いていきたいところはどういうところですか?

「今は『靴一足分』とか、1cm、何mmという単位でのポジショニングを磨いています。つま先の角度一つで飛べる方向が変わったり、手を置く位置でボールをキャッチできたり、ファンブルできるかに変わったり……。細かいけど、そういう世界です」

―そういう細かさ、精度の中でプレーしているんですね。

「はい。もしかしたら女子ならではかもしれません。男子に比べたらパワーも筋力もないし、守備範囲にも限りがある。でも『勝負の限界』を超えるためにポジショニングというところは日々こだわっています」

―松本選手といえば、優れたジャンプ力も他の選手にはない魅力ですね。

「自分で言うのは恥ずかしいですが、身体能力は高い方でした。もともと飛べる方だとは思いますが、最近はよりスマートに飛べるようになりました。以前はパワーをたくさん溜めて飛ぶという感じだったんですが、今は軽い力で飛べるようになりました」

マイナビ仙台レディース GK松本真未子選手

高くしなやかに跳躍しボールをキャッチする。松本選手は高い身体能力を誇る

 

―シュートストップでは反応の良さも際立っていますね。そこは予測や準備の良さが影響していますか?

「反応がいいと言ってもらえると嬉しいですね。GKとして予測は必要なところもありますけど、一か八かで飛ぶというのは良くないと思います。準備を大事にしています」

―どこに立つとか、どちらに飛ぶなど、全てにおいて説明ができる。理論に基づいてプレーができているのですね。仲間に言葉で伝えるときも理論立てて説明していますね。

「そういう性格なのかもしれませんね。今、何のためにサッカーをしているの? と考えた時に『世界一を取りたいから』という目標がある。そこに行きつくために毎日のことがあるので『今、どうしてそのポジションを取ったの?』と自分に問いかけてみたり……」

―目標に向かって常に逆算しているということですか?

「そうかもしれません」

マイナビ仙台レディース GK松本真未子選手

厳しく自分を磨く日々も笑顔で過ごす

 

―今後のビジョン、日本代表への夢はどのように思い描いていますか?

「17歳で経験した世界一(2014年のFIFA U-17女子ワールドカップ。決勝でスペインに勝利し日本が優勝)を、A代表でも経験したいです。優勝カップを獲りに行きたいと本気で思っているので、世界一を目指したいです」

―17歳での世界一というのはどんな経験でしたか?

「そうですね。あの頃は何も考えていなかったんだなって思います(笑)カテゴリーが上に上がれば上がるほど難しさもあるので、あの優勝は運も良かったのかなって思います」

―12月は皇后杯があり、後半戦は3月に始まります。WEリーグ元年で、このチームで成し遂げたいことは?

「個人としてはゲームに出続けること。それを基礎としておいています。チームとして、初代女王、優勝はずっと目的として掲げています。優勝についてはシーズンの終わりに結果として見えてくればいい。目の前の一試合一試合を、常に無失点を目指して頑張っていきたいと思います」(完)

 

Photo by 土田有里子

村林いづみ
村林いづみ

フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。