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西村拓真は結果でチームを変えていく。強い決意でサバイバルの後半戦へ

(提供:ベガルタ仙台)

 

 灼熱の太陽の下で、ベガルタ仙台FW西村拓真選手はオリンピックブレイク明けの「Jリーグ再開」に向かい汗を流していた。その日の仙台の最高気温は33度を超えていた。「とても暑くて、キツいですね」。愛知県出身の西村選手、暑さは得意かと思いきや、どうやらそうでもないらしい。「暑いのは好きではない。でも、そうも言っていられない。(試合が再開したら)後半戦はあっという間に終わってしまうと思うので、より気を引き締めていきたい」。

 東京五輪について注目選手や競技を問うと、「オリンピック…。正直、オリンピックのことを考える時間がないです(笑)」との返答。それほどまでに自分自身やチームのことに集中できているのだろう。「この期間はみんなで今までやってきたものをより良くしていく。そして個人がレベルアップしていくというところにフォーカスしていきたい」。中断期間を、チームとしても個人としても、浮上のための重要な時間と捉えている。

ベガルタ仙台 西村拓真選手

猛暑に負けず、ランニングでは仲間を先頭で引っ張る

 

 ベガルタ仙台は降格圏脱出目前で中断期に入った。今年はJ1の17位から20位までの4チームがJ2に降格してしまう厳しいシーズン。序盤は複数失点を重ね苦しい試合を強いられたが、手倉森誠監督の下で攻守の整備を進めてきた。5月の連戦では上位陣から勝ち点奪取に成功し、選手たちは持ち前の粘り強さを発揮し始めている。「チームとしてはシーズンの最初から比べると右肩上がりだと思う。自分たちがやりたいことが表現できている。そういう時間を長くできれば、負けないチーム、勝てるチームになっていく」。

 

 富山第一高等学校を卒業し、2015年に仙台でプロ生活をスタートした西村選手。2017年にはYBCルヴァンカップでは活躍が顕著だった若手選手に与えられる「ニューヒーロー賞」を受賞した。2018年途中からロシア1部CSKAモスクワへ移籍。その後、ポルトガルのポルティモネンセSCで経験を積み、昨年仙台へ期限付き移籍で復帰を果たす。仙台への完全移籍となった今季はチームトップの4ゴールを上げている。「チャンスは増えてきているし、味方とのタイミングも合ってきている。最後のフィニッシュの部分で自分が仕留められるシーンを後半戦は多く作り出したい」と手応えと決意を聞かせてくれた。

ベガルタ仙台 西村拓真選手

エースストライカー西村選手はどん欲にゴールを狙っていく(提供:ベガルタ仙台)

 

 6月23日の清水エスパルス戦でJ1通算100試合出場を達成。海外生活を経て、仙台のみで積み重ねてきた記録に、「指導者やチームメート、スタッフなど周りの人たちのおかげ」と感謝を忘れない。だからこそ「自分が結果を出さなければ」と自覚を強くする。

 90分の戦いを終えてつかむことができるのは勝ち点3か、1か、0か。「より気を引き締めてやらないと、降格してしまう。もっとみんなで気を引き締めてやっていきたい」と、西村選手は危機感をにじませる。このサバイバルのシーズンに彼が何度も繰り返すのは「気を引き締める」という言葉だった。「重要なのはみんなでハードワークすること。個人が紙一重の勝負を耐えられるようにレベルアップできるようにしたい」。0を1へ、1を3へ、より大きな勝ち点をつかむため厳しい勝負は続いていく。

ベガルタ仙台 西村拓真選手

ゴールパフォーマンスをする西村選手に仲間たちが駆け寄る(提供:ベガルタ仙台)

 

 本拠地で518日ぶりの柏レイソル戦を始め、西村選手が得点を決めるとそこには大きな歓喜の輪ができる。仲間が一つになってより勢いづき、スタジアムに一体感が生まれる。「個人の課題としては守備というよりも攻撃に重点をおかないといけない。結果という部分でチームを変えられるように、残留に向けて気を引き締めたい」。リーグ再開、そしてサバイバルの後半戦へ。酷暑に鋭く磨き上げられた西村選手が、そのゴールでチームを明るい方向へと導いていく。

村林いづみ
村林いづみ

フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。