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FOOTBALL

収穫と課題を得て、WEリーグ開幕へ。マイナビ仙台レディース プレシーズンマッチレポート

(提供:マイナビ仙台レディース)

 

 今秋に開幕するWEリーグ。それに先駆けて4月から約2ヶ月に渡って開催されたのが、「2021 WEリーグ プレシーズンマッチ」だ。「選手のコンディション維持」「運営面、チーム作りの場」、そしてWEリーグ開幕に向けた「機運の醸成」や「WEクラブ、リーグの認知向上」などを目的に開催され、11チームがホーム2試合、アウェー2試合の合計4試合ずつを戦った。

 新体制でスタートしたマイナビ仙台レディース(マイナビ仙台)を率いる松田岳夫監督は「自分たちのやろうとしていることがどれだけ通用するか。選手一人一人の力がリーグの中でどの位置にあるのかというのは、このプレシーズンでわかる」と、チームの現在地を測る貴重な機会と捉え、選手たちをピッチに送り出した。

マイナビ仙台レディース 浦和戦

勝ちきることができなかった浦和戦。課題を話し合う選手たち (提供:マイナビ仙台レディース)

 マイナビ仙台にとっての初陣は、4月24日アウェーでの三菱重工浦和レッズレディース戦、昨年のなでしこリーグ女王との対戦だった。互いに積極的にシュートを放ち、得点を狙う前半。マイナビ仙台はFW浜田遥選手やFW宮澤ひなた選手を中心にゴールに迫るシーンを作ったが相手GKの好セーブに阻まれる。「前半は自分たちのリズムにできませんでした」と宮澤選手。37分には浦和にPKを与えてしまう。これをなでしこジャパンのエースFW菅澤優衣香選手に決められ、ビハインドで試合を折り返す。

 ハーフタイムに「メンタル的な修正を行った」と話す松田監督。後半は自信を持ってポジションを取り、ボールを受けて相手を困らせるプレーが増えた。マイナビ仙台待望の「ファーストゴール」は72分だった。ハイプレスをかけてボールを奪うと、途中出場のDF市瀬菜々選手がゴール前へボールを供給。宮澤選手が右足でダイレクトに合わせてネットを揺らした。勝ち越しゴールを狙うが追加点は奪えず1-1、初戦はドローでの発進となった。

マイナビ仙台レディース EL埼玉戦

EL埼玉戦は初めてのホームゲーム。水色のウェアも初お披露目 (提供:マイナビ仙台レディース)

 2試合目はホームゲーム、かくだスポーツビレッジ内、角田市陸上競技場でのちふれASエルフェン埼玉(EL埼玉)戦だった。ブロックを組んで守るEL埼玉に対して、スタートから主導権を握って攻めに出るマイナビ仙台。しかし、守備は固くなかなかゴールラインを割ることができない。16本ものシュートを放つも、この一戦は0-0のスコアレスドロー。勝利は次戦に持ち越しとなった。

マイナビ仙台レディース EL埼玉戦

隅田凜選手は中盤で攻守に奮闘した(提供:マイナビ仙台レディース)

 圧倒的に攻めながら勝利をつかめなかったことについて「敵陣ペナルティエリア付近でのアイディアや強引さが足りず、外周りのプレーになってしまったことが要因」と松田監督は分析する。キャプテンの浜田選手も「ボールを保持していた中で、ゴールに迫る場面が少なかった。シュートをゴールにつなげることができず、勝てなかったことがとても悔しい」と唇を噛んだ。

マイナビ仙台レディース 千葉L戦

遂に初勝利! 先制点は白木星選手が決めた(提供:マイナビ仙台レディース)

 プレシーズンマッチ初勝利は、3試合目に訪れた。アウェーでのジェフユナイテッド千葉レディース(千葉L)。立ち上がりは相手のペースで進むが、GKを中心に守備陣が粘り強く守って攻撃のペースを生み出す。すると、22分に宮澤選手がスピードを上げて中央突破。相手を引き付けたところで右サイドからゴール前に走りこんだFW白木星選手にパス。「ひなたから良いパスをもらったので決めきるだけだった」と白木選手。右足で流し込み、マイナビ仙台が先制に成功する。10分後にはCKのチャンス。ショートコーナーからDF万屋美穂選手がクロスを送り、この試合で初先発となったFW矢形海優選手がヘディングで合わせ追加点をあげた。後半はジェフLがゴールへの圧力を強める。しのぎ切れるかと思った後半アディッショナルタイム、こぼれ球をMF南野亜里沙選手に決められ失点を喫した。それ以上の反撃は許さず、マイナビ仙台が2-1で競り勝った。

 初勝利にも表情を緩めない松田監督は「失点を受けたどうこうではなくて決めきって突き放つことができなかった、そこに課題を持っていきたい」と試合運びに改善点を見出した。

マイナビ仙台レディース 東京NB戦

矢形海優選手(左から2番目)の先制ゴールに喜びの輪を作る選手たち(提供:マイナビ仙台レディース)

 プレシーズンマッチ最終戦となった日テレ・東京ヴェルディベレーザ(東京NB)戦はホーム・石巻フットボール場での開催。チームの前身となるベガルタ仙台レディース時代から一度も勝ったことのない相手に、新たな顔で挑む一戦となった。前半は相手の流れる様なパスワークに後ろ向きになる時間が多かったマイナビだが、40分に相手DFにプレッシャーをかけてボールを奪うと、万屋選手のグラウンダーのクロスに矢形選手が右足で切り返してシュート。先制に成功し、後半へとつなげた。

マイナビ仙台レディース 池尻茉由選手

決勝点は池尻茉由選手。スピードに乗って鮮やかに左足でゴールを決めた

 64分には宮澤選手のスルーパスに反応したFW池尻茉由選手が得意の左足で豪快にゴールネットを揺らし突き放した。攻勢を強める東京NB。77分にはCKからFW遠藤純選手のゴールで1点を返されるも追加点は与えず、難敵に2-1で「歴史的な勝利」となった。

 

 2勝2分の無敗でプレシーズンマッチを終えたマイナビ仙台。秋のWEリーグ開幕に向けて更にチームを磨き上げていく。「現状の立ち位置、課題というのはある程度見えてきたので、そこを残りの期間で高めてチームとして一段階上に行けるようにしたい」と松田監督。

 開幕を目指す中にあっても、コロナ禍の影響などで思うようにWEリーグのチームと練習試合などを組むことができない。実戦に近い形で行われたプレシーズンマッチは有意義な4試合となったようだ。

 高めるべきポイントも明確になった。「時間帯によってはボールを動かすことはできたし、自分たちが意図的に相手を動かしながらゴールを目指すという時間は、若干ではあるがあったと思う。それも偶然とまでは言わないが、何かのスイッチが入った時にしかできない。自分たちでスイッチを入れたり、切ったり、そういう変化に対応する判断力はまだまだ。ただ全員でこういうサッカーをやろうという意識は共有できた。そこはプラス材料かな」と松田監督は課題と収穫を挙げた。

 開幕戦は9月12日。マイナビ仙台はホーム・ユアテックスタジアム仙台にノジマステラ神奈川相模原を迎えて戦う。この秋、今より更に磨き上げられた選手たちがWEリーグに水色の「マイナビ旋風」を起こすだろう。

村林いづみ
村林いづみ

フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。