仙台スポーツ
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FOOTBALL

恐れず、楽しみながら。『仙台の槍』MF氣田亮真選手が切りひらく勝利への道と自らの未来

 今季ベガルタ仙台の一員となった氣田亮真選手には、毎年設定している自分だけのテーマがある。専修大学を卒業したルーキーイヤーの昨年は「魅了する」。J2のV・ファーレン長崎で32試合に出場し、4得点とまさにサポーターを「魅了」した。2021年は「衝撃を与える」。この鮮烈なキャッチコピーと共に仙台へやってきた24歳のMFは今、J1のステージで輝きを放とうとしている。

 昨年長崎では悔しい思いもした。J1昇格へはあと一歩届かず、チームは3位でシーズンを終えた。当時、師事していた手倉森誠監督の「2021年、仙台への復帰」が知らされた。恩師からの誘いはシンプルな言葉だった。「来年どうするんだ?(仙台へ)来い」と一声。かくして手倉森サッカーに欠かせないサイドアタッカーは、杜の都へたどり着いた。

 簡単な決断ではなかった。チームの攻撃の要となっていた氣田選手は、仙台への完全移籍にあたり長崎のオフィシャルHPを通じて、溢れるほどの思いを長崎のサポーターに伝えている。「困難な道が待っていると思いますが、日本のサッカー界、そして世界のサッカー界に『氣田亮真』という存在を見せつけたい」。後には引かない強い決意がそこには表れていた。

氣田亮真選手

新加入選手記者会見では「亮真と呼んでください」と呼びかけた氣田選手。

 氣田選手の魅力は、切れ味の鋭いドリブル突破だ。新加入選手記者会見でも「ボールを持った時の突破力、仕掛けがストロング。何度ミスをしても挑みに行く姿勢を見て欲しい」とアピールした。高い技術と豊富なアイディア、更には熱いハートの持ち主でもある。独特のリズムを持ったドリブルで敵陣に切り込み、攻撃を活性化する氣田選手を、キャプテンのDF蜂須賀孝治選手は「仙台の槍」と表現する。そして、彼の良さを生かそうと後方支援を惜しまない。

氣田亮真選手

 開幕からチームが様々な攻撃陣の組み合わせを模索する中で、氣田選手は主に左サイドハーフのポジションで先発出場を続けている。「試合に出ているというのは大きい。しかし、出るだけではなく結果を出さなければいけない世界」と冷静に自らの置かれた状況を分析する。「どれだけ違いを生めるか。特に自分のところで。今は厳しい状況ですが、何かを打破するようなプレーをしたい。前にどれだけ推進力を持って進めるか、ボールを運べるか。それプラス結果。(ゴールは)近づいていると思うが焦らず、リラックスして臨みたい」。自分に厳しく、しかし必要以上に力むこともなく、氣田選手はJ1での日々を過ごしている。

氣田亮真選手

はつらつとプレーする氣田選手。練習中にも笑顔がこぼれる。

 チームは開幕から未勝利。厳しい状況は続くが、氣田選手からはたくましい声が聞こえてくる。「課題もありますが、J1での面白さを感じている。僕としては、試合前はワクワクしています。それをプレーで表現して、チームの結果につなげないといけない」。J1の強豪チームとの試合には胸が躍る。これまでに昨年の王者・川崎フロンターレや横浜F・マリノスと対戦した。「昨年、長崎はJ2でも強い方だった。今までは感じてこなかった(J1の対戦相手に)チームとしての強さ、完成度の高さは感じます。ここで何もできなかったら意味がないので。危機感というよりは、毎試合ワクワク感が今は強いです」。

 こうした氣田選手の様子を手倉森誠監督も頼もしく見つめている。「ボールを失うこともあるけれど、持った時には堂々とプレーしているのがよくわかる。だからこそ面白さを感じているんだと思う。もし自分が通用しないと思えば、打ちのめされて『J1は苦しい』という声が出てくると思うけれど、楽しめているということは、彼にはまだまだ伸びしろがあるんだと感じています」

 「衝撃を与える」。その時は間近に迫っている。「もう少しゴール前で(自分のプレーを)出したい。チームの流れもあるけれど、アタッキングサードで勝負できるようにしたい」と氣田選手。彼がボールを持って生き生きと敵陣に切り込む時、ベガルタの勝利は大きく引き寄せられる。「仙台の槍」が鋭く切りひらく明るい未来に注目したい。

村林いづみ
村林いづみ

フリーアナウンサー、スポーツキャスター。2004年からラジオでベガルタ仙台のトーク番組を担当し、2007年よりスカパー!や DAZNで中継リポーターを務める。ベガルタ仙台レディースは2012年のチーム発足時より取材を開始。ヒーローインタビューと勝利の祝杯を何より楽しみにしている。